憶
死を身近に感じないから勝手なことが言えるのだと思う
幼少に小さなたまっころ一つの毛むくじゃらを亡くしたことがある
前夜までくるくると踊っていたのをよく覚えている
翌朝回し車のゴムを呑んで死んでいたのをよく覚えている
1000円の命が幸せそうに上擦って死んでいたのをよく覚えている
2匹目はよく生きた、3年生きて、安らかに逝った
気の張った白い毛並みが綺麗な女だった
人の死は拡大か偉いのか平等と吠える口は聞こえない
田舎の大事な男がいたはずだった
先生とか叔父とか呼んでいた気がする
白い箱に折り紙の鶴を埋めた
あの塊は先生なのか果たして誰か
いつかにもらった人形の在処を私は忘れてしまった
器の感受性は生者の冒涜に過ぎない
煙と共に鶴が通った
私の鶴が飛んだと笑った