瀬戸内寂聴「奇縁まんだら」を読む
まず、最初に御詫びいたします。私はこの方について、
夫と子供を捨て、不倫相手と駆け落ち
数人の男性と不倫
51歳で出家
よく知られた以上の内容から、作品よりも話題にことかかない経歴で有名な、キワモノ作家なのかと思っておりました。
ああ・・・なんということを! 申し訳ございません。
しかし昨年お亡くなりになった際、TVで流れた彼女の法話が、すとんと胸に落ちたのです。
たしか、こういう内容でした。
(このお言葉が載ってる媒体を色々探しましたが、見つかりませんでした)
それで、この方の本を読んでみたいなと思い、図書館に走ったのです。で、借りてきたのが奇縁まんだら全4巻。エッセイからなら楽に入れるだろうと思いまして。寂聴さんと作家、画家、歌舞伎役者など当代一流の故人との交流をつづったもので、日経新聞に連載されておりました。
川端康成や島崎藤村の回もあります。連載のトリが井上光晴、大トリが小田仁二郎。いずれも彼女と深い関係にありました。
で、このエッセイ、連載中は大変な評判だったとか。
それもそのはず、
めっちゃおもしろい!! 一気読み!!
三島由紀夫にペンネームをつけてもらったら見返りを要求されたり、美男子で冷静沈着なイメージの小林秀雄が、けっこうなイラチだったり。ええっ本当!? と驚くようなエピソードの連続です。(私が知らなかっただけで、わりと有名なエピソードかもしれませんが)
しかも寂聴さん、かなり正直で、手厳しい。嫌いなひとには思いっきりそれとわかるよう書かれています。岡田嘉子の回。・・・故人だから遠慮なく書けるのかもしれませんが、文体に品があるので、いやな感じはしない。一方で、饅頭代を踏み倒されたのに森茉莉さんは好きだと仰る。この基準がおもしろい。
すっきりした、わかりやすい文体。そこかしこにユーモア、ミーハーな空気もある。文章をじっくり堪能するというよりも、次々とページを繰りたくなるこの感じ、どこかで読んだことあるなあ、・・・と思ってたら、
そうだこれは、林真理子さんに似ている!
いや違うか、年齢からいって林真理子さんが寂聴さんに似ている・・・といったら失礼ですね。リスペクトされていると言ったらいいのかな? お二人は対談もされていて仲が良いみたいですし。
自身は不美人だけど(自分で言っておられます😅)、男は美形好き、というところも似ている。どうりで。私は林真理子さんも好きだから、とっつきやすいのも無理はない。
こんなに面白いのだったら、もっと早く読んでいればよかった。これが良すぎたので、現在は美は乱調にあり読書中です。この作品・・・手紙のやり取りだけで恋情が燃え上がる描写が非常に真に迫っていて、作者のリアルな体験なんだろうなと、推察せずにいられない。
寂聴さんがお亡くなりになったとき、悪しざまに言うコメントもけっこう目にしました。夫と子供を捨てるような人が文化勲章はおかしいとか、成仏できるはずがないとかなんとか・・・。
こういうことを言う人は、おそらく、一冊の著書も読んでいないのではないでしょうか。読めば、印象が変わると思うのですが。
寂聴さんという人は、
そこに面白いことがあるのに、なぜじっとしていられるの!
こういう人であり、だからこそ色々誤解を生むのだろうけど、作家としては最高の資質だよなあ。
寂聴さんの実際の人生と、夫と子供を捨てなかった人生と、どちらが三者にとって幸せなのかは誰にもわからない。第三者があーだこーだ言うのはなんかちがうと思ってしまう。芸能人の不倫に関してもしかり。
寂聴さんが本当にいやな人だったら、こんなにも多くの著名人が彼女と交流したいと思わないはず。たとえもし、もしも、作家がいやな人であったとしても、是非にも次も読みたいと思わせてくれる作品を書いていただければ、それでよいのです。
私の亡くなった祖母は、TVで三島由紀夫の話題が出ると、「作家はみんな〇ちがい」と申しておりました(あくまでいち女性の意見です💦)。
私など物書きの末端中の末端の者でも、文章を書いている時点で、なんらかの悪行に片足触れている感覚があります😅
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