NHK文芸選評への投稿作・2月
2/3 俳句 選者:小澤實さん 兼題:節分
節分の面より覗く新妻よ
節分や消防団の同級生
節分や鬼門に近きわが寝床
初夢や林の中の桜の木 小澤實
人の目にふれないまま山奥で一生を終える桜が好きです。春になれば咲いて散り、秋になれば落葉がけものを温める。腐った葉が次のいのちを育む。そうして同じいとなみを繰り返し朽ちてゆく。美しいものがただそこにある。現実には不可能でも夢の中だったら会いにいける、ただ美しいものに会いたい願望。
2/10 短歌 選者:野口あや子さん 兼題:保つ
「親切にしすぎないこと」付き合いを保つ秘訣を説きし人あり
この店の勲章として棚いちめん光を返すキープボトルは
人ごみに流されて変わってゆく君見守ってるよ遠くから僕は
どのおとこも私をあいしませんように父の背中に塗るステロイド
野口あや子
祖父は農作業の汗にまけて皮膚が荒れるので毎晩ステロイドを塗っていました。私が手の届かない背中に塗っていました。作者は父親の背中にふれて強烈に男を意識したのではないでしょうか。女とは確実に異なる粗い肌感や太い背骨から。そして、男に愛されることが怖くなった。
2/17 俳句 選者:小林貴子さん 兼題:公魚
頭から食うてええかな公魚よ
常連の居らぬ公魚解禁日
公魚の孔のゆらぎや氷の焔
苗代のぴりりぴりりと変電所 小林貴子
変電所や送電塔のすぐそばに田んぼが広がる風景ってありますね。絶対にそんなはずないと思うのですが何となく田んぼの水に電気が漏れている感じがします。ぴりりぴりりは苗が鬼太郎の髪みたいに電気で直立しているのか、あるいは田んぼに入った人間が感電しているのか、おかしみがあります。
2/24 短歌 選者:木下達也さん 題詠:犬
過去動画こんな姿もあったんだマサルにじゃれつかれていた彼
旅客機の隣席がもし犬ならば遠慮しながら肉を食べます
放ちやれば蓮華畑をものすごい速さで走るコタロウでした
木下さんは購入者のお題をもとに短歌を作り、便箋に書いて封筒でお送りするユニークな活動をされています。大河「光る君へ」でまひろがやっていた代筆ですね。
題に沿って詠むことが多い自分にとって、この言葉は深いです。
たこ焼きに「うつくしい」形容詞がついたのを私はじめて見ました。ノアの方舟に乗せられたのはノア自身とその妻、三人の息子、息子のそれぞれの妻、および地球上にいた全ての動物のつがいです。焼きあがったたこ焼きの中から形のよいものを選んで舟皿に盛る。ぐずぐずしていては焼きすぎてしまうので手際のよさが大切で、恋人のそれは乗船を指揮したノアのようになめらかだった。これねー、なんとなく料理の巧さとか手際のよさも好きポイントになるんですよね。
それにしても実演販売でたこ焼きや御座候を焼くあの流れ手つきはすばらしい職人芸でいつまでも見ていられる。無形文化財に認定してもよいのではないでしょうか。