デミアン|ヘルマン・ヘッセ
挫折するかと思いきやまさかの一気読み。
お父様を信じてよかった(『この闇と光』)。
とはいえ、複雑な言い回しで理解に苦しむところがまあ出てくる。
そこで新潮文庫の高橋健二訳を読みながら、光文社古典新訳文庫の酒寄進一訳(Kindle Unlimited ¥0)を辞書的な役割にするという、私史上初の方法をとった。
ざっくりした違いとして、高橋健二訳は抽象的で古典的で直訳っぽい。
酒寄進一訳は具体的で現代的で意訳っぽい。
現代的な訳が最適かというとそういうことでもなく。
理解よりも詩のような響きに打たれたりもする。
おもしろくなって、途中から二冊を交互に読む。
翻訳者に失礼なのかもしれないが、これがなかなか味わい深い。
酒寄氏の訳者あとがきに、訳の違いについての比較説明がなされており、まさかのご本人登場のような衝撃。
例題のシーンは読んでるときに私も酒寄訳に引き込まれたところ。
デーミアンのセリフを「ですます調」に変換するとBLになりますよ、という公式見解もありがとうございます。
徹頭徹尾、自己との対峙の物語。
祈りの対象に向いているようでその対象は自分の中にいる。
世界の中の自分ではなく自分が世界。
デミアンはタイトルの割に出演回数はすごく少ない。
でもいつも存在を意識する。
自分の中に存在する。
善と悪だけではない向こう側を知りたかったのに、狂おしいほどの内側だった。