蘇 彰宏

愛知県岡崎市の山奥に所在する柴田酒造場の製造部所属。2021年より清酒用の米作りを弊社にて開始し、只今3期目。自社での米作りから、そのお米を使ったお酒の製造についてつらつら書いていきます。

蘇 彰宏

愛知県岡崎市の山奥に所在する柴田酒造場の製造部所属。2021年より清酒用の米作りを弊社にて開始し、只今3期目。自社での米作りから、そのお米を使ったお酒の製造についてつらつら書いていきます。

最近の記事

稲刈りしました【4期目】

いきなり話が飛んでしまいますが、今年の弊社の酒造りは10月1日から始まりまして、今月中には6本ほど醪をたてることができそうです。 美味しいお酒をつくるためには適切な環境や技術などが必要ですが、お米の品質というのも酒質によく反映されます。お酒造りのスタンスとしては、お米の特徴に技術を当てはめていく、という感覚で日々良いお酒になるよう努めています。 では米の品質はどこで決まるのか?これは農家の方のさまざまな努力によるところ以上に、どうしても抗えない天候、特にお米の登熟期の気温に

    • 今年も満開です【4期目】

      今年の7月下旬〜8月中旬は猛暑+無降雨で、巷では『日本の夏はなんてクレイジーなんだ』という言葉が飛び交っていたとかいないとか。 稲にもこの暑さはなかなか大変で、昨年全国的に問題となった高温障害によるお米の品質低下を、果たしてどこまで軽減できるか、そしてお米の価格が下がってくれるのか、要注目です。 穂が出たぞー そんな猛暑の中、8月初旬に夢山水の花が咲きました。穂が茎から出てくる様子というのは、強い生命力を現している気がして、とても応援(管理)したくなります。順調にいけば9

      • 生き物調査【4期目】

        上の写真は田植えから6月下旬のものです。地主さんが植えたものですが、色とりどりに紫陽花が咲いております。この花の色は土壌pHによって決まると言われていますが、こうして俯瞰してみると、pHも均一ではないのだなぁと思ったりします。 稲もスクスクと育っており、昨年よりも生育が揃って一安心です。6月下旬にはアキアカネも無事羽化してくれてホッとしています。 さて、今年も7月初旬に生き物調査をおこないました。今年の着目点は、米糠除草によって生き物へ悪影響があったかどうかです。 散布

        • 除草作業【4期目】

          田植えをしてから一月経ちました。今年は梅雨入りがかなり遅かったので、日に照らされながら除草作業をする日々を過ごしていました。田植え時期にもよりますが、だいたい一月で雑草種子の発芽が終わるそうなので、ようやく除草作業も終了となり、しばらくはゆっくり過ごせそうです。 今年はいつもとは違った除草方法も取り入れてみましたが、一長一短あるなと思ったことを記録していこうと思います。 米糠除草 米糠とはいわずもがな、玄米を白米に精米したときに残った部分のことです。これを田んぼ表層に撒

          今期の方針と田植えまで【4期目】

          2024年の酒造期が終わり、のんびりする間もなく稲作が始まります。カエルの鳴き声がすると『早く水入れろ』とせがまれてるような気がして焦ります。 今年もいろいろ手法を見直して、美味しいお酒になるまで根気よく頑張っていきます。 昨年の稲作の反省 まず、昨年から増やした棚田の圃場のうち、半分以上の圃場で倒伏が発生してしまいました。取り組んでわかったのですが、かなり泥が深く、地下からの水の流入もありそうで、稲刈りの時期でも写真のように圃場が柔らかいままでした。なので排水対策+草丈

          今期の方針と田植えまで【4期目】

          R5BY自社米酒二本目 純吟【3期目】

          満開の桜の下での入学式や入社式など、いったいいつ以来の事なのでしょうか。雨もあって咲いてる時期は短そうですが、今年は十二分に春らしさを満喫できた気がします。 ちょうど桜が咲き出した頃、弊社では今シーズンのお酒の仕込みが終わる、業界では『甑倒し』なんて言われる時期を迎えることができました。 (お米を蒸すデカい蒸篭みたいなものを甑(こしき)といい、倒す=片付けるということ。お酒造りの大きな節目なので、昔はよくお祝いをしていたようです) さて今回は、前回つくったお酒とは別に、自分

          R5BY自社米酒二本目 純吟【3期目】

          R5BY自社米酒一本目 生酛【3期目】

          立春も過ぎて昼間は暖かくなって、酒造りの作業では汗ばむことも増えてきました。この暖かさのを感じると、ようやく寒い冬が終わりに近づいてきて嬉しい反面、また今年も花粉の猛攻を受ける時期が来てしまうのか、と悲しい気持ちにもなったりします。 今年はどうか快適に過ごせますように。 さてさて、 昨年の4月下旬に籾を撒いて、 田んぼに植えて、 雑草と戦いつつ、 無事収穫することできたお米を、 ようやく一本お酒にすることができました。籾を撒いてから288日経ったらしい。よくぞここ

          R5BY自社米酒一本目 生酛【3期目】

          稲刈りしたら酒造り始まった【3期目】

          とても暖かい初秋もようやく終わったと思ったら急に朝夕の冷え込みが強くなり、布団に包まるのがなんとも心地よい、という季節のジェットコースターを味わう今日この頃。まあまあ書くのが遅くなりましたが、落下し始めた9月の中旬に稲刈りしました。 稲刈りの様子 前回の記事でやや倒伏気味の圃場があると書きましたが、結局新規圃場6枚のうち3枚は結構倒伏してしまいまして、その圃場の稲刈りの様子がこちら。 かなり難航しました。倒伏している以上に、排水管理不足が大きい要因だと思われます。心身共

          稲刈りしたら酒造り始まった【3期目】

          花が咲きました【3期目】

          夏真っ只中ですが、少し涼しい風が吹いて過ごしやすくなってきた弊社周辺。今年も8月初旬に酒米『夢山水』が出穂しました。 この時点では昨年よりも葉色も落ち着いて良好な経過です。ただ新規圃場の棚田に関しては、初期に雑草抑制のために深水にしていたこともあってか草丈が1mほどになっています。稲作初年度よりはマシですが、倒伏しないか心配になってきました。 不安の中台風襲来 そんな不安を抱えていたら、お盆真っ只中にものすごく強い台風がやってきましたね。各地で爪痕を残していったわけです

          花が咲きました【3期目】

          生き物調査【3期目】

          田植えをしてから一月以上が経ちました。この間はただただ田んぼを練り歩いて除草作業をしていまして、時が過ぎるのがとてもゆっくりに感じました。そのおかげか太ももの筋肉が結構しっかりとしてきて、お酒造りにも役立つトレーニングになったかと思います。 稲の生育もほとんど順調なのですが、一圃場だけ初期にイネミズゾウムシにやられまして、生育がけっこう遅れてしまいました。今後の生育管理は遅れてでも中干しするべきなのか、それとも諦めてずっと水をいれっぱなしのほうが良いのか、今からとても悩んで

          生き物調査【3期目】

          田植え完了【3期目】

          雨が続く今日この頃。除草作業にもいけないので久々に文をしたためなければと思い、会社裏の圃場にひとネタ探しに行きますと、トンボがたくさんひらひらしておりました。それがサムネの種類のトンボで『アキアカネ』でした。この写真よく見てみると稲株にトンボ以外に何かくっついています。ヤゴの抜け殻です。どうやらこの圃場で今たくさんのアキアカネのヤゴが羽化しているようです。この圃場は赤とんぼを増やすために、稲刈り後も水を張っていた圃場で、産卵行動も確認できていました。 (その時の記事はこちら↓

          田植え完了【3期目】

          今年の稲作について【3期目】

          今年も無事にお酒を造り終えました。やれやれと一息つきたいところですが、今年もお米づくりをしていきますので、まだまだバタバタな日々は続きそうです。 3期目はじまりはじまり〜 圃場が増えます 昨年までは会社側の2枚の田んぼ(計20a)だけで米作りをしていました。ただこれだけだとお酒を1本仕込むのに足りないので、1、2期目は足りない分自社米意外の夢山水を使っていました。 (余談: 小さい仕込みも可能なのですが、精米する際にある程度の量がないと米粒が破砕してしまう等の理由で、原

          今年の稲作について【3期目】

          自社米、お酒になりまして

          10年に一度の寒波がやってきている今日この頃。愛知はありがたいことにそれほど雪が降らず、ほんのり雪化粧程度で済んでくれました。 こんな寒い季節は良いお酒を仕込みやすい時でもあります。我々も例に違わず、いそいそと大吟醸の仕込みに全力を注いでいました。今年の山田錦は溶けにくいようで、もう少し思い切り良く仕込んでも良かったなぁと今になっては思っております。 つまり言いたいこととしては、『自社米のお酒はとうの昔にできていましたが、忙しくて更新してませんでした』でした。前置きが長く

          自社米、お酒になりまして

          自社米、醪になりまして2

          前回はこちらから。 麹づくり 麹は地元産で慣行栽培の夢山水50%を使用しております。なぜ自社米ではないのかというと、自社での米の生産量が足りていないので、麹にまわす分がないから、というのが理由です(実際は足りないこともなかったのですが、あまり少ない量で精米しようとすると米粒が砕けたりするので)。ただ自社米よりも米粒が均一なので、質としても現時点では麹づくりには向いているのかなと思います。 今年は酛麹以外は3日かけて麹を育てています(酛麹は2日)。昨年よりも三日麹の使用割合

          自社米、醪になりまして2

          自社米、醪になりまして 1

          なんだか風が冷たくなった気がして、冬の気配をちらりと感じる11月末日。ようやく自社栽培した米を使ったお酒を仕込むまでに至りました。通常のお酒は2〜3週間で仕込みまで持っていけるのですが、今回は手間暇かけて(意図せずかかってしまった部分も多少あったりなんだり)50日弱。やれやれ。 昨年は試作ということで皆さんに味わっていただくことができませんでしたが、今回はいつかは分かりませんが、販売予定です。やったね。 さて、今年はどんなふうに造っているのか、昨年の反省やらを踏まえて書い

          自社米、醪になりまして 1

          今年も酒造りが始まりました

          残暑も落ち着き、ようやく過ごしやすくなってきました。個人的にはこの10月という季節が1番好きでして、というのも外を歩くと風に乗って何処からともなく金木犀の甘い香りがふわっとするんですよね。食いしん坊だからかもしれませんが、視覚よりも嗅覚で感じる刺激の方が多幸感を感じるようです。ビバ金木犀。 田んぼの様子 涼しくなってきたからか、今年から稲刈り後に水を張っている弊社の田んぼにも数は少ないですが色々な赤トンボがやってきています。 少しですが繁殖行動をしている様子も観察できた

          今年も酒造りが始まりました