医療×LGBTQ。海外より知識の乏しい日本。『医療者のためのLGBTQ講座』が刊行。
こんにちは、翼祈(たすき)です。
LGBTQに関して医学生が学習するきっかけが行き届いていない日本。
専門家は「LGBTQの人は、そうではない人々に比較して、色んな健康リスクに見舞われています」とし、「医師が正しくLGBTQの人に応じるためには、日本でもジェンダー教育を行うことが必要です」と懸念します。
海外では「医学生や医師などにLGBTQに関して学ぶと知識が高まり、態度が改善させます」との報告もあります。
例を挙げれば、LGBTQの人への社会的な偏見などが、精神的な健康状態も悪影響を与えるとする研究結果は、国内外で何度も報告されています。
専門家は「医師はこの様な背景もある中で、正しくLGBTQの人に支援する必要がありますが、医学部ではLGBTQの人の精神的なケアは『教える必要性がない』と判断されているケースもあります」と疑問を投げかけます。
今回はLGBTQの方が抱える問題の医療の面について、考えていきたいと思います。
LGBTQ当事者による、『医療者のためのLGBTQ講座』が刊行
神奈川県川崎市内の病院で内科医として働く彼女が、「医師もLGBTQの知識がなくて戸惑っている」と実感し、書籍化を進め、総編集を担った南山堂から発売の『医療者のためのLGBTQ講座』が2022年4月に刊行されました。
彼女は「全国どこにいても、LGBTQ当事者が安心して病院に行ける様に、医療者全員にLGBTQのことや、医療に関して理解して貰いたい」と訴えています。
同『医療者のためのLGBTQ講座』は、LGBTQなどの支援団体の代表や医師、弁護士など33人が紹介され、各々の専門分野が掲載されています。問診、診察での考慮していることなど医学的な知識に留まらず、LGBTQの支援活動を行う人の実践知識としてLGBTQ当事者の家族への考慮や、貧困、LGBTQ当事者の持つ健康問題と精神的なケアなども解説があります。
彼女もLGBTQ当事者の1人です。性自認が男女どちらにも当てはまらないXジェンダーで、性的指向は男性・女性の両方も好きになるバイセクシュアルです。医師として医療現場に携わる中でも、同性パートナーが愛する人の最期の看取りで面会の許可が出ないなど、セクシュアリティーが考慮されず尊重されない事例を目にして来ました。
まず日本では、医学生がLGBTQに関して学習するきっかけが十分整っていません。彼女も加わった東京慈恵会医科大の研究グループが2022年5月に明らかにした調査結果によれば、日本の医学部と医科大を併せて、医学生が臨床前の段階でLGBTQなどについて全く授業をしなかったのは30.5%、臨床教育で学習する時は未実施が47.2%にも達しました。
彼女が学生へのLGBTQに関連する講演をする中で、参考に出来る日本語の教材が足りないことも、同『医療者のためのLGBTQ講座』を刊行した背景にありました。「全くLGBTQのことを教えて来ない学校がある自体が問題で、医学生全員がLGBTQについて学習出来るきっかけを作る必要があります」と懸念します。
彼女らの調査結果で、LGBTQに関しての授業時間数を拡充するために効果のある手法を大学側に質問すると、「LGBTQの知識がある教員を拡充すること」(6割)、「LGBTQに関する問題が国家試験で出題されること」(4割)との回答が多いと言いました。
彼女は「医学部でのLGBTQの教育を推奨する為に、LGBTQに関して教える知識のある教員を拡充させ、国家試験などでLGBTQの人が直面する健康問題などを出題することが有効な対策になるでしょう」と述べます。
LGBTQの人の中でも「医療機関を通院した時に嫌な経験がありました」「体調不良のときに医療機関の受診を躊躇したことがありました」という回答したトランスジェンダーの人は、4割超もいたとの日本国内の研究結果も存在します。彼女は「セクシュアリティーは深く暮らしに根差していくものだということを認知して頂きたい」と語りました。
画像引用・参考:医療者のためのLGBTQ講座 南山堂
B5判、193ページ、定価3300円。全国の書店やオンラインショップで買えます。
海外と比較して、医学部でもジェンダー教育が乏しい日本
「LGBTQに関して何も教えて来なかった」
そんな日本国内の医科大学や医学部の割合が、海外と比べても圧倒的に多い傾向だということが、2022年5月、東京慈恵会医科大学の研究生で内科医の専門家チームの研究結果で表面化しました。
日本各地の国公私立の医科大学や医学部82校を対象に聞き取りを実行し、7割超となる60校から回答を貰いました。調査結果によれば、臨床実習前にLGBTQに関して「何も教えて来なかった」と回答した大学は31%にも達し、アメリカ・カナダの7%と比較しても4倍超にもなりました。日本で臨床実習前にLGBTQ教育に費やす時間の割合は1時間となり、アメリカ・カナダの4分の1にしかなりませんでした。
臨床実習で「何も教えて来なかった」と回答した大学は47%で、アメリカ・カナダの33%よりも高水準でした。通学しているLGBTQに関連した教育が「乏しい」「とても乏しい」と回答を寄せた大学は8割超もありました。
性自認に関連する情報を患者本人が病院で打ち明けられないと、情報が足りず誤診される恐れも出て来ます。同性間での性交渉や、トランスジェンダーの人のホルモン治療や性別適合手術を行なったことなどに関連する情報については、的確な診断を行う上で重要になるケースがあります。
病院以外にも課題は山積みです。戸籍上に記載された名前や性別と、当事者本人の性自認や見た目にギャップがあった時、「待合室で何度も本人確認された」「問診票の性別欄のある男女のどちらに丸印を付けたらいいのか分からない」といった声も寄せられました。
専門家は「医療従事者にLGBTQの知識が持ってないと、無自覚でLGBTの人への差別的な扱いをしてしまうことが起こります」と指摘します。
参考:「LGBTについて全く教えない」医学部が3割超。北米の4倍、「受診ためらう当事者も」と専門家が警鐘 ハフポスト(2022年)
確かに知識は乏しそうな気はしてました
1つ1つは昔からあっても、こういうLGBTQという1つの括りにされて来たのはここ最近だと思います。私は以前ジェンダー教育という記事を書いたのですが、私が学生の頃はその様な授業はありませんでした。
少しずつ学校でジェンダー授業がある中で、今の医大や医学部で、ジェンダー教育が進んでいなくて、知識が乏しいという事実には驚かされました。トランスジェンダーの方はもしかしたらそういう知識の余り持っていない先生に、性転換の手術とかして頂いてるかもだとしたら、手術した後のことが色々心配になるだろうなとも思いました。
性を換えるというのは身体的にも精神的にも大手術だと思いますし、もっともっと医大でLGBTQの知識を持った先生が増えてくれることを願うのみですねー。