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京都大学iPS細胞研究所がiPS細胞由来の「小腸」モデルを開発!クローン病の治療法開発へ?

こんにちは、翼祈(たすき)です。

この記事の本題は、「小腸」なのですが、まずは「小腸」が担う働きについて説明します。

「小腸」は、栄養の吸収と食べ物の消化を主に担当します。

身体のあらゆる組織に変化可能なiPS細胞から「小腸」に似た組織が作製できると、病気の新しい治療法や研究に役立ちます。今まで、慶応大学などが水分や栄養の吸収を担当する上皮細胞のみからできた小器官を作製することに成功していました。

ですが、実際の「小腸」には存在する粘液を分泌する絨毛(じゅうもう)構造や層、細胞間を埋める間質層などは再現できていませんでした。「小腸」の働きなどが上手く再現できなかったことで、「小腸」モデルを活用した感染症の研究には限界があったといいます。

その限界だと言われていた「小腸」モデルにおいて、先日開発されたとの記事を読みました。

3種類の層で構成された「小腸」の壁の組織を、iPS細胞を活用してチップの中で再現することに成功したと、京都大学iPS細胞研究所の出口清香特定助教、高山和雄講師などの研究グループが明らかにしました。

「小腸」の粘膜障害を伴うクローン病やノロウイルスなどの治療薬の開発や感染症の研究などに役立つといい、その研究成果が2024年7月12日、アメリカの科学誌[セル・ステム・セル]にて発表されました。

今回は京都大学iPS細胞研究所などの研究グループが開発した、「小腸」モデルについて特集します。

「小腸」モデルは、どんな役割を担う?

画像引用・参照:間質流を用いたヒトiPS/ES細胞由来小腸モデルの開発 京都大学 iPS細胞研究所 CiRA(2024年)

「小腸」の内壁は粘液層上皮層間質層の3層構造になった絨毛で覆われています。

今までも「小腸」の一部を模した「ミニ臓器」は作製されていましたが、上皮層の再現のみに留まっていました。

京都大学iPS細胞研究所の幹細胞生物学が専門の高山講師などの研究グループは、血管から染み出た水分の緩やかな流れ(間質流)に着目しました。「小腸」内でみられる体液のゆっくりとした流れ「間質流」が、細胞の分化をすることに重要な鍵だと想定しました。

「小腸」モデルの大きさは、高さ0.6mm、幅1mm、長さ10mmの管の中を、微小な穴が多数空いた膜で上下2段に仕切ったシリコーン製のチップを作製しました。

流れる液体の中に細胞をさらすことができる素子を活用し、分化が一定程度進んだ多くのiPS細胞を、上段にiPS細胞などから作製された「小腸」のもとになる細胞を置いて、下段には培養液を流し、上段へ染み出す様にし、間質流と同じ程度の速さで、およそ20日間、培養しました。

すると、1ヵ月足らずで細胞は絨毛組織や間質層、粘液の分泌層などに分化し、「小腸」の絨毛と類似した複雑な形の組織を生成し、3層構造ができている様子が観察されました。培養液の流れを止めると、こうした構造は起こりませんでした。

参照:iPS細胞使いチップ内に小腸の壁再現…3層構造になった絨毛、病気の研究など視野に 読売新聞(2024年)

後日談

高山講師は、「『小腸』の多層的な構造を作製できたのは今回が初のことで、より実際の『小腸』に近いモデルができました。『小腸』の粘膜を障害して下痢を引き起こすノロウイルスや、腸管出血性大腸菌O157などの腸管感染症、難病のクローン病などの研究に活用できるのではないでしょうか。また、それらの治療薬の研究を進めていきたいです」と説明しました。

生物工学に詳しい東京大学の教授の男性は、「間質流を使用して細胞が三次元的に組織化する能力を引き出していて、非常に面白い研究成果だと言えます。『小腸』粘膜に炎症を起こす病気の研究に活用するには、免疫細胞を組み入れるなどの工夫が必要と言えるでしょう」と、述べました。

京都大学iPS細胞研究所 CiRAに関しては、iPS細胞の記事を書くと、ほとんどの場合、出て来る研究機関です。

食中毒だけではなく、クローン病という国の指定難病の治療法開発に結び付くと言われている、今回の研究成果。さらなる続報に期待が持てますね。


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