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*ヒエという嫌われ者・強者から学ぶ


 
田植えが終わった6月後半になると、
田んぼの中や畔にはヒエという稲科の草がたくさん生えてくる。

田植えをしている時には生えていなかったのに、
1週間ほどして草取りに入るとたくさん生えているのだ。

成長スピードの速いヒエは、少し目を離したすきにぐんぐん大きくなり、
あっという間に米の背丈を超えてくる。

草取りの時に、このヒエを抜いておこうとこちらは必死になるのだが、
お米の苗とそっくりさんで、米の苗にそっと寄り添うように
生えているこのヒエを見落とすことしばしば、
気づいたときには深く根を張り、
引っこ抜くのも一苦労である。

ヒエはそんなことはお構いなしに遅れて芽を出すものもいて、
結局イタチごっこなのである。

ヒエは米の姿を知っていて、人を騙しているようだ!


そんな強いヒエを見ていると、米がヒエの様に強ければ良かったのに、
もしくはヒエが食べやすく、とっても美味しい植物だったら良かったのに、と思ってしまう。

こぼれ種で毎年芽を出して、水があろうがなかろうが成長し、
他の草に負けない強さを持ち、
肥料なんてあげなくても大きく育ち、実を沢山つける。

そんな米だったら、わざわざ栽培せずとも、人間は遊んで暮らせるのになぁ…。

ヒエだけでなく、セイタカアワダチソウや、
ギシギシやスイバなど、自然に生えている草は、
人に栽培されずとも立派に育っている。

それらを人が美味しく食べられたなら、
誰も食べるものに困らず暮らせるのに…。

なんて、怠け者のような事をついつい考えながら眺めている。

しかし彼らは、なんでそんなに強くなったのか?

私たちが食べるために栽培する野菜や米とは明らかに違うのだ。




私達はいつも、自分にとって都合の良いものと悪いものを分別し、
都合の悪いものを排除しようとするクセがある。

草でも虫でも菌でも、時には人間同士でも。

そしてその排除という扱いを受けた者は、
どうも強くなっちゃってるように見える・・。


例えば、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)という菌がいる。
介護や看護職の人ならばよく知っている菌だ。

元々は、ただの黄色ブドウ球菌だったこの菌は、
免疫力の低下した病人や年寄りが感染すると死に至る事もあり、
病院や施設での院内感染が問題となっていた。

だから人は、この菌をバンコマイシンという抗生物質を使って殺した。

ところがその中のほんの一部だけ、バンコマイシンでは死なない黄色ブドウ球菌がいた。

で、バンコマイシンに耐性を持った黄色ブドウ球菌だけが繁殖した。

だから今度は、メチシリンという抗生物質でもって黄色ブドウ球菌を殺した。

ところがやっぱり、メチシリンでは死なない黄色ブドウ球菌がほんの一部だけ生き残った。

で、メチシリンでは死なない、メチシリンに耐性を持った黄色ブドウ球菌が出来上がったのだ。



人は様々な場面で、こんな事を何度も繰り返してきた。

だって、相手は強く、勝ち目がないから怖いのだ。

けれど、殺虫剤では死なない虫が出てきたり、
除草剤では枯れない草になったり、
排除しようとすればする程、相手は強くなっているようだ。

薬品を使って除菌や除草するのも考え物である。
ほどほどにしておかないと、相手はますます強くなる一方で、
薬もどんどん強いものが必要になってくるんじゃないかしら・・。

逆に、大事に過保護に育てていると、植物でも虫でも動物でも人でも
弱くなってしまうのではないだろうか、と懸念する。

現代人は免疫力や回復力は低下し、アトピーやアレルギーが増え、
昔の人と比べると弱々しくなっていないだろうか?

昔の人は食べるものが少なかったから、
カビたり、少々傷んだものも食べていた。

それでもお腹を壊したりしなかったと年寄り達が話していた。

どれだけの免疫力を持っていたのだろう。
現代人が同じものを食べたら、お腹を壊すんじゃないだろうか。

昨今のようなきれいな水もなく、汚れた手でご飯を食べ、
子供のころから汚れたものを口に突っ込んでいた。

もちろん、弱い人は病気になったり、亡くなることもあっただろうが・・。



巷では、「除菌しましょう!」とテレビに煽られ、
手や体や部屋中いたるところを殺菌しようと躍起になっているし、
例のC-19の時も、マスクをしていないと後ずさりする。

おにぎりをお母さんが素手で握ったり、糠床を素手でかき回すのは
「汚い」という意見まで出る始末である。

日本人、どこまで潔癖になるの!?

子供や弱者を守りたいという愛からの行動なのだろうけれど、
少々のばい菌や、お母さんについている常在勤を子供が摂取することで、
免疫力も上がるんじゃないかしら?

大事なものを、大事に扱えば扱うほど弱くなり、
敵だと思うものを排除したり雑に扱えば扱うほど強くなっていく。

さて、どちらがいいのか、悪いのか・・。


ヒエは怖い。
汗水たらして育てた米が、ヒエより弱く、
負けるのを分かっているから怖くて排除しようとするのだ。

けれど、その生きる強さと知恵には脱帽してしまう。

だから今日も、畏敬の念を込めながら、
田んぼのヒエを一本一本手で引っこ抜くのだ。

「これ以上、強くなるなよ」と唱えながら・・。
 


わたしもきれいずきやけど♪

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