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*米から与えられるもの
お米が自給できるようになってから、1年分で余るものだから、
田んぼ作業がお休みの期間に米糀を仕込み始めた。
米糀を仕込んでおけば、味醂を仕込んだり、
味噌を仕込んだり、濁酒を仕込んだり、
甘酒、柚子味噌、米飴、塩こうじと気が向いたものを仕込んでいける。
お米さえあれば、ご飯としてだけでなく、様々な調味料から甘味まで、
日常の食卓に必要な物に変化してくれる。
米粒だけでなく、糠で漬物を漬けたり、藁で藁かごや草鞋を編んだ。
とぎ汁も、植木の肥料に留まらず、洗濯や台所の油汚れに使って重宝している。
流しに流してしまうなんて、もったいなくて出来なくなってしまった。
お米についている菌も余すことなく使い果たしたいところだ。
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まだまだ使い道は果てしなくあるお米。本当に面白い植物だ。
お米を使って色々な物が作れるようになってくると、
日常生活に必要な物がお米で結構補えていることに驚く。
これは、お米と日本人の絆から産まれた産物、人と米の生かし合いだ。
ある時、陶芸家の友人が、陶芸に使う釉薬を無農薬の藁で藁灰釉を作りたい、というのでウチの藁を灰にした。
藁には珪酸(けいさん)という成分が含まれていて、それがガラスになるという。
藁のどこにガラスが入ってんの?と疑ってしまうが、本当の話である。
なんと、お米の藁で、お茶碗まで作れてしまうのだ。
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米を育ててみると、米粒、という一粒の種を、人が育て、
その米の種を頂き、私が生かされている、ということが分かってくる。
米と人の共生で、生かし、生かされ、命が循環しているんだ、と知った。
日本人と米は長い長い付き合いの中で、そういう関係を築いてきた。
米粒から藁から米に付いている菌まで余すことなく使い切る智恵を、
日本人は築き上げた。
米ってやっぱり日本人には特別な存在。日本人と米は別々ではなく一体だったのだ。
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そんな日本人の智慧に魅力を感じて、米を醸し始めたのが2014年。
様々な失敗も経験しながら、納得のいく発酵食品を
やっと作れるようになったかな。
そんな失敗談も交えながら、発酵食品の智慧をお伝えしていければと思う。
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