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試行錯誤の青春展 新居浜でがんばる未来のエンジニアたち

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2024年11月16日(土)から2025年2月2日(日)を会期として、あかがねミュージアム1F「新居浜ギャラリー」で実施する企画展の内容を紹介します。 工業都市・新居浜で「モノづ…
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#高専

『試行錯誤の青春展』を振り返って

 新居浜市内の高校生・高専生たちの、モノづくりに懸ける青春の日々を取り上げた企画展『試行錯誤の青春展』が、2025年2月2日(日)に最終日を迎えました。  このnote「あかがねミュージアム はみだし’第3’展示室」の運用を開始した最初の企画展『マッチのあった青春時代(2022.1月-3月)』を振り返った文章で触れた通り、当館1Fの「にいはまギャラリー」という小さな展示会場で企画される展示の多くは、「地域密着」を旨としています。  そしてその「地域密着」については、【新居

「KOSEN-1」と歩んだ最後の高専生活②「ああ、自分の作ったものがちゃんと形になってるんだ」

 その①から続きます。  新居浜高専に在学した最終年度である2020年度に、今井雅文さんの研究室の一員として超小型衛星「KOSEN-1」の開発に関わった、秋葉祐二さん。1年間の開発は、楽しいながら苦労の連続でした。  プロジェクトの主要なミッションである「木星電波」受信について、地上だけでなく宇宙にも観測地点があることで、より精密に「木星電波」が観測できる点が有意義だとされた「KOSEN-1」。その核となる木星電波の受信プログラムを任された秋葉さんでしたが、自身の開発した

紹介する各種「プロジェクト」の概要

 「試行錯誤の青春展」では、当館の立地する愛媛県新居浜市内で、モノづくりに青春を燃やす学生にスポットを当てています。とりわけ今回は、市内に立地する唯一の高等教育機関である新居浜工業高等専門学校(新居浜高専)で「高専ロボコン」「鳥人間コンテスト」「Hondaエコマイレッジチャレンジ(エコラン)」「超小型衛星【KOSEN】プロジェクト」に取り組む学生さんたちの「青春」を取り上げました。  ここでは、それぞれのプロジェクトの概要を簡単に紹介します。 高専ロボコン  高専ロボコ

謝辞

企画展「試行錯誤の青春展」は、モノづくりに青春を燃やす学生やOBの皆さま、ならびにその指導教員の皆さんに、お忙しい中時間を割いていただいて採録したインタビューを中心に、展示を構成しました。順不同ですが、ご協力いただいた方々を紹介します。  新居浜高専の宇宙関連の実践紹介に際して広くご助言をいただきました、新居浜高専電気情報工学科・若林誠准教授。  「KOSEN-1」「KOSEN-2」などについて深くお話を聞かせていただいた、今井雅文さん。2024年4月からは新居浜高専を離れ

「頭の中では、滑空機は完成してますね。」 -いつか再び、「鳥人間」になる日を目指して。

 鳥人間コンテストへの出場が叶わない現状をこう語るのは、鳥人間航空研究部の4年生・松田朋弥さん。  「モノづくりの楽しさを共有してもらう教育イベント」を自負する「高専ロボコン」や、出場チームを広く募っている「Hondaエコマイレッジチャレンジ」は、大会への出場が事実上確約されている一方、「鳥人間コンテスト」は、読売テレビが主催する‘番組製作’のための大会。別のところで紹介した顧問教員・松田雄二教授の言葉にもあるように、「視聴率が取れそうな、エンタメ性のあるチーム」や「テレビ映

「他が水中翼船をやってて、来年はやりたいな、と。」 -造船の街・今治での熱き「海上自転車競走」

 造船の街・今治で、毎年夏の終わりに開催されている「海上自転車競走」。自転車を改造して、「ペダルを漕ぐとスクリューが回る」という船を作り、海の上でスピードを競うレース大会です。  新居浜高専からも、鳥人間航空研究部が「将来の人力プロペラ機開発の参考にしたい」という点と、「鳥人間コンテストは毎年の出場が確約されていないから、モノづくりについての大会出場機会を確保したい」という点から、鳥人間航空研究部を中心にレース出場が始まり、今では広く船が好きな学生が集まって、大会に出場してい

「1リットルで1000㎞とか2000㎞とか走ってて、ロマンを感じて。」エコラン ―平均時速25㎞の‘スーパーカー’に乗って

 日本のモータースポーツの聖地とも言える「モビリティリゾートもてぎ」。毎年、Hondaエコマイレッジチャレンジ(エコラン)の全国大会会場にもなっているここは、栃木県宇都宮市から車で60分、茨城県水戸市から車で60分など、周辺の大都市からは少し離れた場所に位置します。  「エコラン」全国大会はなんと、新居浜高専は現地集合!正確には、大会期間中に宿泊するホテルに現地集合。修学旅行がない新居浜高専にとって、その道中はさながら「プチ修学旅行」です。  こう振り返るのは、1年生ながら

なげやりくん奮闘記② -「これで僕のロボコン人生終わるんだ、と思って見てますから。」

その①の続きです。  大会直前でのロボット作り直しや、当日の計測でのサイズオーバーなど、数々の困難を乗り越えて試合当日を迎えたAチームの面々。部長の末永さん、箱回収ロボットの菊池さん、発射ロボット操作の高市さん。そして、ピットに控える5年生の守屋さん。  予選ブロックは3校総当たり。1試合は2分半。それは、メンバーによって「長い」とも「短い」とも感じられる、緊張の2分半でした。  と振り返るのは、部長の末永さん。ピッチングマシンのようにボールを発射するロボットと、そこにボ

学生に託す、鳥人間の夢  -指導教官・松田雄二教授の「かっこよく落ちる」青春

 新居浜高専で「鳥人間コンテスト」に毎年挑戦している「鳥人間航空研究部」の顧問を務める機械工学科・松田雄二教授。子どもの頃にテレビで見て、学生の頃には授業で聞いた「鳥人間コンテスト」出場は、1992年の新居浜高専着任以来の夢でした。  自身が顧問を務める部活動として動き出した、新居浜高専の「鳥人間」への挑戦。「ずっと出たかった」という自身と同じ夢を持つ学生は、少ないながら集まり始めました。  メンバーは集まった。東予の産業を活かす、という機体製作のコンセプトも決まった。し

「高専スペース連携」の夢をのせて -超小型衛星「KOSEN-1」前史

 「KOSEN-1」は、高知高専の今井一雅教授(当時)をプロジェクトマネージャーとして、高知・群馬・徳山・岐阜・香川・米子・新居浜・明石・鹿児島・苫小牧という全国10校の高専が参画して開発・打ち上げを行った、超小型の人工衛星です。  超小型ってどれくらい?と思うかもしれません。たとえば、気象観測衛星として地球を周回している「ひまわり8号」や「ひまわり9号」の、太陽電池パネルを含まない本体のサイズは、だいたい【2.2m×2.1m×2.9m】。軽四自動車1台分よりちょっと幅が広い

「つぎは宇宙でね。」 -「KOSEN-2」が、届かなかった日。

 もうすぐ始まるライブ配信の画面には、「革新的衛星技術実証3号機 イプシロンロケット6号機 打上げLIVE中継 打上げ時刻 9時50分43秒」と表示されている。  ほどなくして、ライブ配信が始まる。イプシロンロケットの歴史が、様々な関係者の証言と共に紹介されていく。  やがて、打ち上げまでのカウントダウンが0になり、轟音と白煙とともに、ロケットが宇宙を目指して飛んでいく。  そして打上げから約10分後。ライブ配信を進行していた司会者が、打上げの「中止」とライブ配信の終了を告げ

しんどいのと楽しいのと、半々でしたね。 -窪田さんの、「KOSEN-2」開発の日々。

 自身がプログラミングした「KOSEN-2」の補助的な基板について、こう熱を込めて語るのは、今回のエピソードの主人公、新居浜高専・専攻科1年生の窪田さん。専攻科に進学する前の高専3年次から「KOSEN-2」に関わっていました。  もともと宇宙分野に興味があり、それも天体などへの興味ではなくロケットや人工衛星など宇宙工学に興味があったという窪田さん。プログラミングには、元々心得がありました。  実際に「KOSEN-2」で担当したのは、衛星の運航を制御するメインコンピューター

「あ、これ授業で聞いたやつだ。」 ―「KOSEN-2」で変わった景色。

窪田さんのエピソード前半はコチラです。  超小型衛星「KOSEN-2」に関わる学生としては、他の高専も含め「最古参では」と自負する、新居浜高専・専攻科1年生の窪田さん。  軌道投入が叶わなかった「KOSEN-2」の再挑戦プロジェクトである「KOSEN-2R」、さらにそれらの後続機としてプロジェクトが立ち上がった「KOSEN-3」という2つのプロジェクトにも引き続き参加しながら、自身の確かな成長を感じています。  「KOSEN-2」を一緒に開発していた研究室の同級生メンバー