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しんどいのと楽しいのと、半々でしたね。 -窪田さんの、「KOSEN-2」開発の日々。

 衛星に基板が載ってて、その基板で衛星の回転数を調べたり、コンピューターと通信機の間に入って受信機の手伝いをするとか、コンピューターに乗りきらなかった回路を積むとか。衛星にGPSのアンテナが2個乗ってるんですけど、それぞれの信号を合成するとか。そういう、いろいろミッションを支援するのを、なんでもやってましたね。

 自身がプログラミングした「KOSEN-2」の補助的な基板について、こう熱を込めて語るのは、今回のエピソードの主人公、新居浜高専・専攻科1年生の窪田さん。専攻科に進学する前の高専3年次から「KOSEN-2」に関わっていました。

 今井先生に誘われたのが大きかったですね。若林先生がされていた宇宙関連の教育プログラムとか、宇宙工学研究会とか、自分もそういうのによく顔を出していて。その関連で誘っていただいたんだと思っています。ざっくりと、「KOSEN-2」一緒にやってみん?という感じで。
 最初は何したらいいんだろうという感じだったのが、徐々にミッションが与えられて、最後はもう自分で、プログラムつくる、みたいな。気づいたらそうなってましたね。

 もともと宇宙分野に興味があり、それも天体などへの興味ではなくロケットや人工衛星など宇宙工学に興味があったという窪田さん。プログラミングには、元々心得がありました。

 元々けっこう好きで、プログラムはちょこちょこ書いてた感じですね。基本的な考えは活きましたね。プログラミング言語が違っても、考え方が一緒だったり、アイデアの部分は応用できたり。手順的な、理論的な考え方は使えるので。それでも、勉強しながらでしたね。

 実際に「KOSEN-2」で担当したのは、衛星の運航を制御するメインコンピューターを「補助するための基板」のプログラミング。難易度の高いチャレンジでした。

 「補助」というのは、データをとって、それをメインコンピューターにデータを渡すという感じなんです。だからいろんな機器を動かして終わりじゃなくて、コンピューター同士で通信をしないといけない。自分の担当じゃない、大元の方のコンピューターを触れるようになってないと完成しないようになっていて。そこは難しかったですね。
 メインコンピューターのプログラムは「KOSEN-1」から使ってたもので、別の高専の人が書いたものなので。人が書いたものを解読して、時には、その誰が書いたか分からないのを書き直さないといけなかったり。メインのコンピューターで何が起こってるかを分かってないといけないので。
 衛星と地上との通信は、アマチュア無線みたいな感じで。電波にうまく情報をのせれるかどうか。地上から、「この情報がほしい」というのを受信して、それに応じて返す感じなので。だから、地上からどういう信号が来るかも、分かってないといけないので。

 このような「KOSEN-2」と窪田さんとの関わりが始まったのが、2022年1月。窪田さんは当時3年生。同年8月末には、打上げを実施するJAXAへの衛星引き渡しが迫っていました。

 すごく短いですね。打ち上げまでは10カ月なんですけど、8月末には、JAXAに引き渡しがあるので。ほんと短かったですね。実際、やりきれなかったというか、時間があったらもっとやりたかった、というのはありますね。だから、完全には時間が足りなかったと思いますね。でも、とりあえず結果的にはバグなく、必要十分な動くものにはなりましたね。

 2022年7月。8月末の機体引き渡しをおよそ1カ月先に控えた中、「KOSEN-2」プロジェクトを主導する米子高専で実際の衛星を使ったテストが実施されます。
 窪田さんたち新居浜のメンバーも、現地でテストを見守りました。

 7月くらいに、本当の「KOSEN-2」を使ってテストをした、というのがありましたね。すごく緊張感はありましたけど、怒られるようなピリピリ感はなく。
 結果はまあ、できたこととできなかったことと、ありましたね。他の高専でやってる人と初めて顔を合わせたので、その緊張感もありました。それまでは、オンライン会議はやったことあったんですけど、面と向かっては初めてだったので。全員すごく見えて。全員たぶん、5年生とか専攻科とか、年上だったので。自分の担当してない部分のスペシャリストなんで、余計にすごく見えました。

 緊張の現物テストを経て、開発も佳境。窪田さんたちも、開発漬けの日々を過ごします。

 7月にテストで、8月に引き渡しで、そこで生まれた課題を、あと1カ月で直さないといけない。ほんとうに、7月8月が一番大変でしたね。
 自分は電車だったんで、夜は9時30分くらいまでですけど、でも終電までは毎日居て、朝も8時とかには学校に着いて。しんどいのと楽しいのと、半々でしたね。ははは。
(しんどかったのは?)
 やっぱり、時間がないということ。やってもやっても終わらない。バグが永遠に直らない。ほかにも開発メンバーが2、3人いたんですけど、みんなそんな状況で、自分のことでいっぱいいっぱい。助け合う余裕もあんまりなくて、基本は自分で解決しないといけなくて。でも、夏休みに友だちとかと毎日集まって、一緒のことをやるっていうのは、楽しかったですね、単純に。

 そうして迎えた機体の引き渡し。無事にJAXAが受け取ってくれた、との一報を聞いた窪田さんの思いは。

 ホッとしましたね。あとはできることがないので。あとは祈ることしかできないので。

 祈る先は、当初2022年10月7日に予定されていたイプシロンロケット6号機の打上げ。ともにその時を待つ8機の衛星と共に果たされる、軌道への投入でした。


「KOSEN-2」の時系列としては、この記事に続きます。


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