2/14。鈍重な僕と、軽快なアルマカン。
5:30起床。
天気は曇り。
*
……。
……。
……。
「聴こえる?」
何?
何が、聴こえるの?
何を、聴いてるの?
……。
……。
……。
「聴こえる?」
ああ。
聴こえる。
ちゃんと聴こえるよ。
君の声なら、ちゃんと。
*
昨晩、21時半。
僕「あれ、」
パートナー「?」
「ギターの音がする……。アルマカンだ」
「昨日、××さんが寝た後も、弾いてたよ」
「……ひさしぶりに聴いたなあ」
ともすれば、騒音に分類されるこの音は、僕を心底安心させたのだった。
隣人のアルマカン(仮名)は、よくギターを弾いている。ある日は、真昼に。ある日は、真夜中に。以前は、毎日のように聴こえてきたけど、最近は、聴こえたり聴こえなかったり、だった。(たぶん、僕らが気付かなかっただけかもしれないけど。)
「聴こえたり聴こえなかったり」の頻度が多くなると、僕らは徐々に、アルマカンのことを忘れていった。(「忘れていった」なんて、大げさかな。)だって、生活必需品じゃないからね、アルマカンのギターは……。そうだね……例えるなら、風邪のときにちょっぴり舐めるハチミツみたいなもんかな。……余計、わかりづらいかな。
昨日のアルマカンは、やたら景気のいい曲ばかり弾いていた。それは、どちらかといえば、夜よりも、昼の方がふさわしい曲だった。(寝る前に、じゃかじゃか弾いている曲は、ふさわしくないでしょう?)だから、すでに眠たかった僕は、その音に安心しつつも、苦笑を浮かべていた。これじゃ、上手く眠れないな。
……それは、きっと。僕は、思った。アルマカンが、軽快すぎるせいだな。それに比べて、僕は……。軽快……軽快の反対語って、何だっけ……鈍重……鈍重か……僕は、鈍重だから。軽快と鈍重。水と油。混ざり合って、一つになることはできない。僕は、なかなか寝付けなかった……わけじゃなかった。
気付いたときには、アルマカンのギターは止んでいた。さっきまでじゃかじゃか弾いていたのが嘘みたいに、隣はしんと静まり返っていた。……アルマカンも、眠くなったのかな。
ひさしぶりに会えて(聴けて)うれしかったよ、アルマカン。でも、軽快な曲は、昼間だけにしてくれないかな。ほら、真夜中に、軽快なんてことばは、似合わないからさ。……今度は、できれば、しっとりした曲を弾いてほしいな。僕の、個人的なリクエストだけどさ。よろしく、頼むよ。
*
「僕だけが、鳴いている」
これは、僕とドッペルさんの話。もしくは、何か(を生む/が死ぬ)話。
連載中。