【#3】経営コンサルティングとして起業するまでの11年間
現在のコンサルティング会社設立までに、
大手監査法人を経て、生花の会員制通信販売事業で起業 という異色の経歴を持つ 藤浦宏史さんにお話を伺いました!
前回は、社長の鞄持ち という珍しい経験について伺いました。
本日は、独立から勉強期間を経て、会計コンサルティング企業としての再スタートをきってからのお話です!
第3弾 遂にアガットコンサルティング設立
—コンサルとして最初の仕事は覚えていますか?
はい、前回お話しした物流会社の上場支援が初仕事でした。
—監査法人時代との違いはありましたか?
監査よりも、目を配るべき範囲が広がりましたね。また、立場的に強制力が無い中で、協力体制を保つことの難しさも実感しました。
監査法人は、一般的に法律によって義務と定められている監査業務を、クライアントである会社の依頼を受けて行います。会社側も、会社存続のために必須と理解しているので、優先的に対話の姿勢を示してくれます。
しかし、コンサルは法律による強制力はありません。そして、コンサルの主役は会社です。主役をどうやってゴールまで導けばいいのか、子育てに近い感覚ですね。押し引き駆け引き、褒め叱り...こちらが感情的になってしまい、話し合いが上手く進められない事も多々ありました。
アガットコンサルティング設立から2年後、2003年12月に無事、物流会社はJASDAQ市場(当時)への上場を果たしました。
—アガットコンサルティング設立以降で印象的だった出来事はありますか?
「社員0 フルリモートへの移行」ですね。
—社員0??
はい、この話をすると必ず驚かれます。笑
現在、アガットコンサルティングは元社員に業務委託という形式で仕事をお願いして、会社(アガット)に出勤しているのは私だけです。
—コロナがきっかけですか?
いえ、それより前の2011年 東日本大地震がきっかけでした。
当時アガットは神田錦町にありました。大きな揺れにより、書庫から書類が溢れて散乱しましたが、怪我人もなく影響は軽微でした。直接的な被害はなかったものの、震災は私に精神的に大きな衝撃を与え、「これから私はどう生きていくのか。会社はどうあるべきなのか。」を見つめ直す機会となりました。
主なクライアントが企業の管理部門だったこともあり、震災から1ヶ月は各社の緊急対応優先で、ミーティングがほぼ中止になりました。この休止期間を使って、社内で「アガットのビジョン・ミッション」について今一度話し合いを行いました。
—会社の将来像を見直す機会だったんですね。
震災で東京の安全性について情報が錯綜していたこともあり、まずは何処にいても仕事ができるようにと、リモートワークの推進に着手しました。当時は、メールなどの連絡手段のクラウド化が浸透し始めた頃だったので、新しいサービスを積極的に取り入れました。Skypeを用いたリモート会議の活用や、データ・書類の保存方法もクラウド型に移行させました。
移行作業自体は社員の協力もあり、予想以上に円滑に進みました。社員たちにとってフルリモートワークは非常に好都合ですからね。笑
—今でこそリモートワークは世間的にも浸透していますが、当時は珍しかったのでしょうか?
そうですね。働き方改革関連法施行以前ですから、リモートワークへの制約が多く、また取引先などからも「オフィス縮小や、社員から業務委託への移行」に関して理解を得られず、苦労したことを記憶しています。リモートワークを前提とした出勤退勤の管理が実態にそぐわない点や、労災等の問題も考えて、社員0の業務委託への移行を決めました。
社員数や、オフィスの場所・大きさなどが会社の信用度に直結する時代だったので、「社員0 フルリモート」は怪訝な顔をされることも多かったですね。悪いイメージを払拭するために、ホームページの写真やメンバー紹介を充実させたりしました。
対してメンバー(元社員)はリモートワークが始まってからも、特に問題なく過ごせている様子でした。
—それは意外でした!
監査法人出身者が多いことも理由だと思います。監査法人では、クライアント先で仕事を済ませて直帰、月に数回だけ事務所に戻るというスタイルが多いので、出社しない生活にあまり抵抗はなかったようです。
—藤浦さん自身も抵抗はありませんでしたか?
いえ、私は真逆でしたね。笑 自宅でもきちんと仕事をしてくれているのか、進捗はどうか…など心配は尽きませんでした。しかし、同じオフィスで目の前に居るからといって全てを把握できる訳でもありません。初めの2年は、念の為に広いオフィスを残していましたが、メンバーが完全に慣れてきたと判断した段階で、私の仕事場と簡単な会議ができるだけの小さなオフィスに引っ越しました。
新型コロナウイルス感染症がビジネスに与えた影響を見て、未曾有の事態に対応できるように動き続けてきたことは間違いではなかったと確信しています。
また、リモートワークによってメンバー全員に時間的余裕ができたタイミングで「兼業の奨励」についても話し合いました。『自分たちが楽しいことを仕事に』を起点としたアガットの新体制の確立です。
—新体制??
社長として「メンバーには、会計コンサル以外の視点を養ってほしい」という思いがありました。自己の成長のため、また将来的な生活の安定のため、各メンバーが事業主体として常に3つくらいの(事業の)柱を持つべきと考えていたからです。
しかしアガットだけでは、できる経験は限られます。そこで兼業という形で、リモートワークで生まれた時間を有効活用してもらうことにしました。このような私の思いと、メンバーのキャリアアップを両立させた新体制が出来上がりました。
こちらが新体制確立にあたって、社内で作成したビジョン・ミッションの一部です。
・今までの”お客様ファースト”ではなく、仕事をする”自分達ファースト”で働く。
・楽しそうな自分たちに共感してくれるお客様と仕事をする。
をモットーに掲げています。
—パートナー会計士とはなんでしょう?
元社員を“パートナー会計士”と位置付けることで、
パートナー会計士が兼業先で得た学びをアガットに持ち帰る→個人のキャリアアップ=アガットの成長 という成長循環を目指しています。
現在では全てのメンバーが、アガットの仕事は3割程度とし、それ以外に2つの柱を持つような働き方をしています。例えば、アガットの他に、自分の税理士事務所経営と監査法人でのアルバイトを掛け持ちしたり、自分で不動産賃貸の会社を経営しているメンバーもいます。
—新体制になってから変化はありましたか?
緊急対応が求められる短期的な仕事は減り、顧問として長期的にお付き合いさせていただく仕事が増えましたね。
以前は新規顧客の獲得を何よりも優先していました。将来の売り上げに繋がるならと、「決算開示資料作成を1か月でやる」という単発業務でも引き受けるようにしていました。社長としては、会社存続のためには仕事を取ってこなくては…給与分は働いてもらわなくては…という責任故の行動です。
しかし、社員としては既存の仕事をこなすためのスケジュールを折角組んでいるのに、単発の仕事が舞い込む度に、全ての予定が崩れてしまいます。結果的に、全ての仕事の質が下がってしまいます。熱心な社員は、無理な残業を続けてしまうかもしれません。
これは本当に『自分たちが楽しいことを仕事に』という方針に沿った環境と言えるのでしょうか。
新体制移行により、「アガットからの報酬」=「その社員の全報酬」という関係がなくなったので、「社員の生活を守る、会社を存続させる、そのために売上が必要」という無用なプレッシャーから解放されました。
案件の依頼が来る→その案件を担当したいメンバーを探す→担当したいメンバーが見つかれば案件を(お客様から)受託→そのメンバーにも仕事分の報酬を払う
会社とメンバーがお互いに無理のない関係を作ることができています。
—社長から見たメンバーの変化はありますか?
指示待ちの時間が無くなりました。リモートワークという環境に加えて、アガット以外の仕事で培われる責任感が、メンバーたちにも成長の機会を与えたのだと思います。
本日もお読みいただきありがとうございました!(noteのアカウントをお持ちでない方も、♡マークのスキを押して応援お願いします!)
—次回は、アガットイノベーションが新たに取り組んでいる、スタートアップ経営者向けのサービスについて伺います!お楽しみに!
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