ソフィ・カルの魅力,偶然の出会い@三菱一号館美術館とギャラリー小柳
三菱一号館美術館「再開館記念「不在」 ―トゥールーズ=ロートレックとソフィ・カル」(-1/26)
「準備期間」に読んだ2冊の本
上京する友人が「観たい」、とのことで、属性もバラバラの、自称「本好き」9人ほどで出かけることになった(もちろん別々に鑑賞して、観終わったら適当に集合する)。
ただ、その日までに1カ月ほど時間があった。メンバーの一人が「この本面白かった」と情報をくれた。
小説……と思って読み始めたのだけど、これは、彼女の作品そのものだった。追っているはずの者と追われているはずの者の立場が交錯して……。
乱暴にいえば、安部公房的テイストに満ちている(数人が同意してくれたので、たぶん大丈夫)。
あとがきに、ポール・オースターの「リヴァイアサン」の紹介があった。もちろん、読んでみた。
この小説の、主要登場人物として、ソフィ・カルをモデルとした女性が出てくる。その、果てしなく自由で謎めいた感じ。実際、この小説に取り上げられたことで、ソフィ・カルは一躍有名になったという。わかる。
そんな長い事前準備を経て、11月の末に、美術館へ。
存在と不在
開催概要。
長い引用になる。読んだところで、決してネタバレになるような展覧会ではないので、先に。
ロートレック作品
大部分が写真撮影禁止のため、撮影許可作品の写真から何点か。まず、ロートレックから。
ロートレックといえば、SOMPO美術館でも。
ソフィ・カル作品
次いで、ソフィ・カル。写真に、物語とも現実ともつかない、ときにはシュールにさえ感じられる長いキャプションが付いている、その物語そのものが作品。
ふと、
「動かない影」が気になって、じっと目を凝らせば、
あー、やっぱり。
それは「壁に、描いてある」のだった。
見知らぬ人を勝手に尾行して写真を撮影したり、探偵を雇って自分の後を付けさせたり、という、摩訶不思議な作風の作家だけあって、きっと、観る者が気づかない仕掛けが、ほかにもあったに違いない。
観ているうちに、作品はどんどん、わたし好みとなっていき、
コロナ禍の、人のほとんどいないピカソ美術館で、作品保護のため「紙に包まれた」ピカソの絵画を、その「包まれた状態」で撮影した写真作品(写っているのは包み紙)……。
三菱一号館美術館での展覧会の約束をしたが、それまで自分が生きていられるか不安に駆られ、その不安を克服すべく?、あたかも葬儀の死体のように横たわっている写真、がエピローグ。
個人的には非常にツボに刺さる作品に、すっかり興奮してしまった。
もちろん、そういうのが苦手、扱いに困惑する、という感想を持った人も多くいて、集合したあとの感想シェアも、なかなか有意義だった。
ギャラリー小柳「Unsold Unsold」
この話には、おまけがある。
この集まりの際に、ある友人に、都内ギャラリーのマップを謹呈した。フリーペーパー的なもので、2カ月ごとのギャラリーの展覧会が紹介されている。
彼女が、たまたま銀座に用事があってそのうちの一軒をのぞいてみたら、それはソフィ・カルが参加した作品だったという。
もちろん、三菱一号館美術館との連動で開催されている企画だと思うけれど。全く知らなかったので、偶然が呼び寄せてくれた嬉しい報せ、と捉えることとする。
開催概要は、なかなか衝撃的だった。
杉本博司の写真原図、8000円なり。アートファンなら、いろいろな意味で叫び出したりするかもしれない。
ちなみに、青柳龍太の「Unsold」はこちら。
杉本博司の「Unsold」。
ソフィ・カルの「Unsold」は
Unsoldは、手前の展示物たち。
こちらは、Sold。
展覧会同士が、第二会場といわんばかりに繋がっている。
ソフィ・カルというアーティストの、チャーミングな感じが伝わると嬉しい。