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[AWT]01アートウィーク東京(11/7-10)初日 ルートAのバスでギャラリーを巡る

 アートウィーク東京開催。今年で4回目。

アートウィーク東京(AWT)は、東京における現代アートの創造性と多様性を国内外に発信する年に一度のイベントです。東京を代表する53の美術館・ギャラリーがそれぞれ多様な展覧会と共に参加者を迎え、各施設を無料のシャトルバス「AWT BUS」がつなぎます。また会期中は「買える展覧会」として始まった「AWT FOCUS」や映像作品プログラム「AWT VIDEO」をはじめとするAWT独自の企画も開催。様々な体験を通じて東京のアートの「いま」を感じられます。

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 無料のバスで、6エリアを巡ることができる。

 初日は、自分では回りづらい、(竹橋発)飯田橋~鶯谷をぐるりと大きく巡る路線を選んで、小規模なギャラリーを鑑賞して回ってみた。

 イベントのようすと、回ったギャラリーの情報を記しておきたい。



飯田橋駅~ミヅマアートギャラリー(A2)

 A路線のスタートは、東京国立近代美術館だ。だが今回は、普段はなかなか足を運べない小規模ギャラリーを中心に回ることと決め、飯田橋駅から、友人との待ち合わせ場所、ミヅマアートギャラリーへ。

 お堀を左手に見ながら進んでいくと、

 道の反対側に、AWTの係員らしい方々の姿が。

 じっと見入ってしまう、興味深い作品たち。

青山悟展「永遠なんてあるのでしょうか」

⻘山悟の刺繍表現は、画用紙に縫い取られたドローイングのように軽やかなものから、絵画や模型のように精巧なものまで自由かつ多彩で、そこに刺繍ならではの表情や文脈が縫い込まれている。また多くの作品が、人間社会への鋭い(ときに暖かい)眼差しを宿しているのも特徴であろう。青山は古い工業用ミシンを用い、近代化以降、変容し続ける人間性や労働の価値を問い続けながら、刺繍というメディアの枠を拡張させる作品の数々を発表している。ロンドン・ゴールドスミスカレッジのテキスタイル学科を1998年に卒業、2001年にシカゴ美術館附属美術大学で美術学修士号を取得し、現在は東京を拠点に活動している。本展では、今春に目黑区美術館で開催された個展「⻘山悟 刺繍少年フォーエバー」の関連展示を予定している。

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 印象深かった個展の様子は、後日、別の記事としてアップしていく。


AWTバスで都内を巡る

 AWTバスは、だいたい15分おき。発着所にはスタッフが常駐している。

東京のアートシーンを代表する50以上のアートスペースとアートウィーク東京(AWT)の独自プログラムを、無料のシャトルバスがつなぎます。今年のシャトルバスは複数のルートを午前10時から午後6時まで約15分おきに巡回。どの停留所からでも乗り降りは自由です。バス乗車時に配布されるAWT参加証を提示すると、参加美術館で開催される展覧会の一部で割引が適用されます。

さらに今年は東京都とベルリン市の友好都市提携30周年を祝して、「Berlin–Tokyo Express」と題し、同市とのコラボレーションのもと、両都市を拠点とする多彩なアーティストの作品がAWT BUSに展示されます。

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 ちなみに、バス乗車口の「赤いボタン」は必ず押してみよう。

 上の説明にもつながるが、これはアート作品だ。

 乗車の記念に。


ウェイティングルーム(A3)

 ポストが目印の、この赤レンガの建物は、

 元郵便局。

 たしかに雰囲気も、それっぽい。

オノデラユキ

ウェイティングルームでは今回、ゲストアーティストとしてオノデラユキの新作展を開催する。オノデラは東京に生まれ、1993年からはパリにアトリエを構えて世界各地で活動を続けている。写真を中心的な手段としながら、カメラの中にビー玉を入れて撮影するなどの独創的・思索的な発想や、事件や伝説から構築された物語的な世界観などによって、ユニークで実験的な作品を数多く制作。その背景にあるのは、写真が私たちと世界との関係を変えた、という認識である。また、自ら焼き付けた2mを超える銀塩写真や、油絵具で着彩を施した細密な写真作品、荒々しい超大型のコラージュなど、機械的と思われる写真の概念を覆すほどに、彼女の作品には手の痕跡が刻まれている。作品はパリのポンピドゥー・センターやサンフランシスコ近代美術館、東京国立近代美術館など、世界各地の美術機関にコレクションされている。

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 開催中の、オノデラユキ『Parcours—空気郵便と伝書鳩の間』は、この建物の歴史と空間を考慮しながら、パリで制作する日本人としての作家自身の姿にもつながるような、上質なインスタレーションだった。


タリオンギャラリー(A4)

 「えっ」という意外な場所にあり(路地裏、駐車場の奥、みたいな場所の、さらに半地下)、展示も「うーむ、なるほど……」と頭を使わせてもらった展示。

青空テンカウント

飯川雄大と大岩雄典による二人展。全体像のつかめない巨大な猫の彫刻など、コミュニケーションや伝達の不完全さや曖昧さ、感覚の共有不可能性をテーマに制作を行う飯川。演劇、文学、ゲームなどを参照しつつ、時空間とその経験をめぐる考察を、作品や文筆活動によって提示する大岩。 両者は作風こそ異なるが、それぞれ作品が置かれる「場所」の物理的・政治的・経済的性質に関心を向けることで、独自の形式のインスタレーションを制作・発表してきた。本展では、時空間における公共性と私性、特に政治的行為が実効力をもつための基礎でもある「場所の占有」をめぐって、その特異点としての決闘場・スポーツ興行・劇場に目を向け、両作家が新作を展開する。

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 説明が非常に複雑になるので写真と文章は割愛するけれど、謎解きが好きな人は、嵌ると思う。そしてもしかして自分も、気になってもう一度足を運ぶかもしれない。

フィギュア、ミサコ&ローゼン(A5)

 同じ建物の上下階。

 静けさが漂う、やさしげな立体作品と、

Pigs and Fishes Surround You

陶を素材とする立体作品を手掛ける岡田理(おかだ・しずか)の個展。岡田によるセラミック作品は、焼成など特定のプロセスを経て制作される陶の性質上、それぞれが具体性を伴いながらも、そぞろ歩くようにナラティブがつくり上げられ、抽象・具象の単純な二項対立では捉えきれないイメージの数々を提示する。フイギユアでは2018年の「細くて長い私の笛/Slender and long my whistle」以来2度目の個展となる本展は、セラミックの新作群で構成され、作家の新たな一面を提示するものとなる。岡田は1987年群馬県生まれ。2010年に武蔵野美術大学造形学部工芸工業デザイン学科の陶磁器専攻を卒業後、ドイツ、フランクフルトの国立造形美術大学シュテーデルシューレに在籍。日本とドイツを中心に作品を発表してきた。

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 小さな画面の中にやわらかな風景が広がる、油彩画が鑑賞できる。

モーリーン・ギャレス

ミサコ&ローゼンでは、モーリーン・ギャレスの個展を開催する。静かな風景に佇む控えめな建物などを柔らかな色調で描くギャレスの絵画は、かつてそこを通り過ぎたことがあるような感覚を呼び起こし、あるいは絵画史の変遷と交錯の営みをも思い起こさせる。1990年代以降、継続して高い評価を得てきた彼女の作品は、2016年、ミサコ&ローゼンの10周年記念展として、開廊前に影響を受けたアートシーンをテーマにした「December (playback 2)」でも紹介された。今回の個展では、小さめサイズのハイクオリティな新作絵画5点ほどで会場を構成する予定。

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XYZコレクティブ(A6)

 こ、これは……と怯むような入口。

ビー・イングリッド・オルソン

シカゴ在住のアーティスト、ビー・イングリッド・オルソンの個展。彼女は写真、彫刻、パフォーマンスの要素を取り入れながら、身体と空間の境界をめぐる探求を続けている。例えば写真作品では、作家自身のパフォーマティブな身体が、奇妙な小道具と化した建材などと共に断片的に示される。大胆なフレーミングや、ときには鏡合わせで、または一人称的視点で示される複層的なイメージは、見る者の知覚を混乱させるかもしれない。しかし同時に、そこに作家の遊び心あふれる探究心や、意図と解釈のズレを生産的にとらえる態度を垣間見ることもできる。オルソンは1987年生まれ。今年2024年は、ホイットニー・ビエンナーレ2024(ホイットニー美術館、ニューヨーク)などで作品を発表している。今回の個展は、全新作で構成される予定。

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 この入口と、展示作品はとてもマッチしていたと思う。滞在時間は短かったけれど。


カヨコユウキ(A7)

 バス発着所は、JR駒込駅のすぐ前。

 陽はそろそろ、陰りはじめている。

 住宅街のその建物は、一目でギャラリーとわかった。

 この窓。なんてセンスのいいリノベーションなんだろう。

野沢 裕

野沢裕は、見慣れた風景に複数の時間・空間・偶然を故意に仕掛けたような写真、映像、インスタレーション等を制作している。揺れるカーテンがつくるラインと山脈の稜線など、 複数の時間・空間・次元をユーモラスに重ね、あるいは入れ子状にするような仕掛けで、観る者の想像力を誘う。また展覧会では、作品同士が織りなす関係性で空間全体をつくり出す構成も特徴といえる。今回の個展はいずれも新作となる、写真と絵画、および映像作品から構成される予定。野沢は1983年静岡県生まれ。2008年に東京造形大学造形学部美術学科絵画専攻を卒業、2011年に東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻を修了。2014年にはIEDデザイン大学マドリード校にてMFA(写真)を取得した。
*野沢は「AWT VIDEO」にも映像作品を出展予定。

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 展示作品にも、その「仕掛け」的なものを紐解けば、認識をぐらぐらとさせるような面白さがあった。


スカイザバスハウス(A8)

 以前、前を通りがかったことがあり、残念ながら入ることができずに気になっていたギャラリー。

 名前と外観のとおり、そこは、元・銭湯。

ヴァジコ・チャッキアーニ

映像、彫刻、インスタレーションなどを通じ、社会的現実と私的生活の中で揺れ動く人間の内面を寓意あふれる手つきで扱うアーティストの、日本では6年ぶりの個展。展示は今回のために制作される新作の映像作品と彫刻作品で構成される。映像作品《Big and Little hands》は、作家の故郷でもあるジョージア、トビリシの市場を舞台にある親子を描いたもので、そこに資本主義による人々の生活への広範な干渉と搾取、生と死の弁証法が織り込まれる。チャッキアーニはグルジア工科大学で数学と情報学を学んだあと美術の道へ進み、アムステルダムのヘリット・リートフェルト・アカデミーを経て、2009年から13年までベルリン芸術大学にてグレゴール・シュナイダーに師事。第57回ヴェネツィア・ビエンナーレ(2017年)のジョージア館展示を担当するなど、その詩情や寓意に富んだ表現が評価されている。

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 広々とした空間に、幻想的な映像作品とインスタレーションが展開されていた。


AWT BUSでA1に戻る

 外に出れば、すっかり日は暮れていた。

 バスの運行は、ギャラリーや美術館の閉館時間にあわせて、18時から18時半まで。バス停が見つからないのではと危惧したけれど、それはなかった。スタッフの方々は、ギャラリーへの道案内もしてくださって、親切。

 ちなみに、乗車時にこのリストバンドを渡され、提示で入館料割引などの特典を受けることもできる。


アートイベントは、やっぱり愉しい

 今まで、いろいろなアートイベントを愉しんできた。

 瀬戸内国際芸術祭(早くも、来年2025年は開催年だ)。

 AMBIENT KYOTO。

  Art Collaboration Kyoto(ACK)。

東京アートアンティーク。

 どれも、人が創り上げる熱気が、イベント感を盛り上げる。

 AWTの情報は、残念ながら今まで知らなくて、参加は今年からだ。

 初日で、アートギャラリー巡りの愉しさを満喫した。

 土日は混みあってしまいそうだけれど、残る開催期間を愉しみ続けたい。


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