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”黒い水”に溶け出す,不安と好奇心 -菅原ありあ[Black Water](-9.8)

 某日、宮下PARK@渋谷。



伝統的な水墨画と思いきや

 墨一色と、その濃淡で表現された作品たち。遠目から見れば、伝統的な水墨画の技法で、作家独自のモチーフを描いているように見える。


タイトルの妙

 近づいて気が付いたのは、タイトルのおもしろさだ。


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「Black Water」の意味

 人ひとりが通れるくらいのスペースにも、小作品が展示されている。

 通常の絵画ではあまり描かれないような、モチーフの選び方も、なんだか気になる。

自身の生活から生まれる感覚を、和紙と墨を用いて表現する菅原ありあ。 彼女の独自の制作姿勢は、メディウムに潜在する魅力を最大限に引き出し、作品はこれまで多くのファンを惹きつけてきました。 孤立した制作時間の中で、墨の香りや色の広がりの永続性に魅了され、まるで瞑想するかのように自身の中にあるイメージのアウトプットする彼女の作品群。 その無二の表現方法は本展にも引き継がれています。

展覧会のタイトル「Black Water」は、彼女が制作活動の中、筆を洗う工程で得たインスピレーションに由来しています。 水に溶ける墨の色が柔らかい黒に変化し、辺りを包みこむ。 この「暗い水」から生まれる不安や好奇心をテーマに展示される新作群には、その世界で生きる命や物体が繊細に描かれます。

また本展では、これまでとは異なり彼女自身のこれまでのスタイルに加えて、様々なサイズの掛軸や風炉先屏風、巻物など伝統的な様式に作品を落とし込む、新たなプロセスを添加。 その新鮮な進化には従来のトラディショナルな様式美の雰囲気とはまた異なる深みが生まれます。

シンプルでありながら、日常から少し離れ落ち着いた空間で構成される「Black Water」は、作品とゆっくり向かい合いながらディテールを楽しめる場所になります。 観る者に深い洞察と感動を与えるこの空間に、ぜひ足をお運びください。

同上

 ギャラリーの方が話しかけてきてくださり、「Black Water」の意味するところを知った。「暗い水」から生まれる不安や好奇心、その世界で生きる命や物体。モチーフも、タイトルも、そこに起因するのだ。


記憶に残る、不思議さ

 作品は、とても美しい。でもやっぱり、どこかが奇妙で、気になる。なにが描かれているのか、作品とタイトルの関連性は? と考えていくと、なにかにぶつかる。この不思議さは、記憶に残り続けると思う。

 ギャラリーを出て、渋谷の喧騒の中にに戻っても、ずっと。



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