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刀篤(かたなあつし)
2023年12月1日 19:09
陽へ伸びる樹木の美しさに羞恥や媚態などの誘惑が介在する余地はあるか黄金の毛に包まれた羊たち飢えた狼たちの牙にかかり痛苦と快楽の責め苦に悶える君の迷妄の耽美よりは植物のような単純な美そのほうが潔いだろうね狼たちとて美を望んだわけでなく其れは金の滑らかなドレープウール畝るドレープの手触りいとしいぃ……くるしいぃぃ……くるしいぃ……いとしいぃぃ……畝る根元に液体が
2023年11月24日 18:17
万物を粘土細工のように自由自在に捏ねて像にする男の出てくる絵本を嘗てあらゆるものを自由自在に透過する麗しい躰を持った少女が寄り添う漫画を嘗て聖書に記された文字の配列を自由自在に組み合わせて下僕の創造を試みたカバリストが嘗て第一の書物は失われた第二の書物は未完であった第三の原本は解読不可能であった全ての創意は之を踏まえ「無限の知恵に息吹を与えられた、書物において
2023年10月27日 20:25
この先に宝物庫があると信じているのかそれとも出口を探しているのか遠く鉄を引き摺る音重い足音今、想像しただろうこの狂った建築物内の怪物についての神話斧の鈍い光頭部は牛のもの人生という迷宮の要所要所で容赦なく眼前に立ち塞がる咆哮今、恐怖しただろう背筋に寒いものが走っただろう
2023年10月21日 11:29
夜空に震えるように瞬く初冬の星々零れ落ちそうなそのひとつひとつはそれぞれ世界の一要素を司る球体は最も安定した状態である球体は押し並べて生命である球体は始点と終点の無い円環である天上の球体はさもあらん私たちの足元もさもあらんそれらを構成する粒子もさもあらん冬支度を済ませた月の輪熊の暗喩それをスコープ銃で狙い定める眼球そして爆ぜた火薬に押し出される鉄砲玉押し並べて陽子で
2023年10月20日 19:08
俺は高架下に住処を置き山羊を待つ終わりを運んでくる三匹の悪魔の使いを俯きがちな辺境出の成り上がり連中は都市の座敷で泥と契約し月齢を数えず速やかにその汚泥に腿まで取られ前後に身動きすることも儘ならず生の儘が最も軽やかだったのだ積み重なる小賢しさに神話が崩壊するかつてヨーツンヘイムに住処を置きトール神と互角に渡り合った巨人たち俺は橋脚に宿命を置きその時を待つ青空に激流し
2023年10月13日 19:56
科学者は事実を述べた宇宙よりも海のほうが分からないことが多いいつの間にか暗雲が月を奪っている大型漁船に備え付けのサーチライトが闇夜の霧雨を切り裂き海面を舐めて時化る海原に不意が奇態を呈した船の遥か前方に漆黒だった島がいつの間にか遥か後方に座しており操舵手は回頭していないと言ったそして波間には跡形もなくなった直径1マイル半程の島が一瞬にだわたしは未知に怒りを感じる未知
2023年10月6日 20:09
その悲鳴の主を見た者は居ない聞いた直後に死が訪れるから死ぬ者にしか聞こえないから宣告だロミオの親友マキューシオロミオの仇敵ティボルトロミオの恋人ジュリエットロミオそういった文学上の英雄は不穏の女の悲鳴を耳にして命を散らして幕間に逝った女だその女のバックボーンは不明だ然し恐らく何らかの不吉な要素と絶望的な切実さを感じる悲鳴だ脚が震える恐ろしいが根源的な
2023年9月29日 19:17
戦死者を選別する乙女たち死者を蘇らせ宴に誘い饗し猪肉と蜂蜜酒と躰を捧げる水煙草やマリファナの匂いガラスが割れる音や喘ぎ声東京駅から次の東京駅まで無言の空間に皆は隣り合って無限の振動に皆は委ね合って男が戦士である必要性も女が女神である必要性も無くなった筈の西暦2023年山手線内側の迷宮的廻廊最先端都市の最新モデルは流血沙汰への懐古みたいにポリティカル・コレクトネスや