【詩】バンシー(幻獣詩篇:2)
その悲鳴の主を見た者は居ない
聞いた直後に死が訪れるから
死ぬ者にしか聞こえないから
宣告だ
ロミオの親友マキューシオ
ロミオの仇敵ティボルト
ロミオの恋人ジュリエット
ロミオ
そういった文学上の英雄は
不穏の女の悲鳴を耳にして
命を散らして幕間に逝った
女だ
その女のバックボーンは不明だ
然し恐らく何らかの不吉な要素と
絶望的な切実さを感じる悲鳴だ
脚が震える
恐ろしいが根源的な要素を
私はなおざりにはしたくない
悲鳴の主が暗示するもの
狂気だが
幸い私は狂気に馴染みがある
窓の下から聞こえくるという
その悲鳴の女主人と程なく……
…………