刀篤(かたなあつし)

詩・論詩・小休詩

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【詩】初期的な何か

例えば雨が降ってることについて 根本的な感覚を真っ直ぐ苦悩した 詩があったら素晴らしいと思うの そういうのが本当に狂おしいの 触って、見て、嗅いで、聴いて、 味わうってのだけは絶対除外する 美味しいって感覚は本当に醜い 犠牲に無自覚な感覚は鈍さの証明だ 前にずっと部屋の中だけで 育ってきた猿が人生でやっと 解放されて初めて見上げた青空 あの驚きを見て胸を掻きむしった 初期衝動って言葉にしちゃうの ほんとにナンセンスだと思うの たぶん音楽雑誌が悪いんだよ あいつらが全てを

    • 【詩】冬の恋

      わたしの白く 温かい朝の吐息が 鋭かったあなたの輪郭と 冷えきった空気を暈す 遠くなる後ろ姿を 夢中で追いかけて 気がつけば全てを 悟ったような気になって 憧れが振り向いたのだと 錯覚した

      • 【小休詩】アレルギー

        今日は鼻炎が酷いので 世界の認知も半分だ 鼻 ちり紙 鼻 ちり紙 鼻 ちり紙 鼻 ちり紙 鼻 ちり紙 能率も半分 残業は倍

        • 【詩】あなたの遺す詩

          エーテルの気流を掴まえて あなたは水星に到達しました 環境が過酷でしたのでテラフォーミングで 大気と海を作り其処で暮らし死にました 51年後ガスエンジンロケットが発明され 人類初の探査チームが水星に着陸します 人類は大気と海がどうやって水星に 存在していたのか理解出来ません 彼らの権威が過去にエーテルを否定したので 既に誰かが到達し暮らしていた痕跡が 水星にあるなど想像も出来ないのです あなたの詩は大気と海です 詩の真髄はエーテルであります ※鶴田謙二さんの「少

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        【詩】初期的な何か

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        • 夜霧を創る
          101本
        • 論詩
          34本
        • 明日こそ仕事行け
          2本
        • 暁に薮を睨む
          213本
        • 虹彩は無限
          5本
        • 幻獣詩篇
          12本

        記事

          【詩】 母

          秋空に寂しげな雲が現れたら 眠っているあの人に 会いに行く ぎごちなく抱かれた記憶だけが 彼女と私の存在を繋ぎとめる全て 「やあ、久しぶり」 「お元気そうね」 「綺麗になったね、姉さん」 「みんな揃ったか?」 世界の終わりにあらゆる生命は 彼女の胎内で待ち合わせている

          【詩】 真理

          拝啓 きみ を失ってからのぼくは 物理法則さえ憎んでいた 特に人間の 醜さ 愚かさ 嫌になったとかじゃなく 疲れていたのと ここじゃ無い何処か 自分を試した (死んだってことさ) 勝ち逃げのつもりでさえあった 幸か不幸か だけれど (死にきれなかった) 運ばれた病院でぼくは ナイチンゲールって 呼ばれる人たちに 教わったんだよ きみ は無限ってこと ぼくの愛用のメガネだったし 太陽だったし海だったし アスファルトだったし 父親や母親、弟たちだったし きみ のまつ毛や飼

          【詩】 LINE

          俺が幸せだった頃の同伴者に LINEメッセージを送ってくれ 俺はもう繋がっていないし 一言  謝りたいんだ 時間の経過に貪り喰われ 胸にぽっかり空いた空洞 俺にはもう人生を切り拓く 心の力が残っていない 誤解されないように言うなら 大抵のことには満足してた 幸せか不幸かと言えば前者だ ただなぁ  今の世界全体はなぁ あぁ  ほんとうに今直ぐに LINEメッセージを送ってくれよ 俺が心底  後悔していると 爆速フリック入力をしてくれよ 液体  流れていった血とか いった

          【詩】少女性

          彼女は一度だけ同級生に デートに誘われたことがあり 山手線を黙って四周したと言った どんな拷問やねん。 私のその関西弁を彼女は とても気に入ったらしく 次の日には遊園地にてSNSに アトラクションの動画をupし どんな拷問やねん。 使いこなしていた 一緒にプリクラ撮ろう。 そう言って彼女はまず 化粧室に消えていった 長い時間をかけて 出てきた彼女の黒髪が 水道水で湿っているのを見る ……お待たせ。 鞭打たれ続けるだろう 彼女が大人になるまで 或いはその先もず

          【論詩】創造することば

          虚体 第七官界 ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん 文学はこんなにも豊かで 「〜だわ」「〜なのよ」とか言う女を 現実の範囲内で見かけたことも無いとか ドッドド ドドウド ドドウド ドドウ

          【論詩】創造することば

          【論詩】価値のある差別

          酩酊する彼女の白い肌を白く汚したベッド 彼女から矜恃以上の何もかもが失われたとして その全てを取り返す事ができるそんな夢物語を 信じられるようにするにはどうすれば良い? 人並みに抵抗する機会すら掴めなかった 絶望と彼女への偏見に対する憎悪と諦念と 立ち尽くす彼女をどうやって否定できる? -部屋に上がらせた時点で同意したと同じ事だ- -彼女が性的に唆る格好をしてたのが悪いのだ- -泣き寝入りする事無く戦う準備をしましょう- -貴女はサバイバーの代表です私達の希望です-

          【論詩】価値のある差別

          【詩】ロシアンルーレット

          弾丸飛び交う戦場を 悠然と闊歩する軍曹は 一見無防備のようだが God bless him 神の加護を得ている 弾倉6つのリボルバー ロシアンルーレットの 最後の一発が回って来ても よりによってジャムるのだ 自分は絶対死なないと 確信した人間の中に あらゆる世界の理さえ 支配する者が稀に居る 真の芸術家はどんな時も 生き残るものだ

          【詩】ロシアンルーレット

          【小休詩】ダダイズムは破壊

          『80%!?冗談じゃありません!現状で、ダダイズムポエマーの性能は100%出せます!』  「文脈は付いていない」 『あんなの飾りです!常識人にはそれがわからんのですよ』  「使い方はさっきの説明で分かるが、"無作為的メタファー"な…私に使えるか?」 『大佐の"詩的破壊的傾向"は未知数です。保証できるわけありません』  「はっきり言う。気に入らんな」 『どうも。気休めかもしれませんが、大佐ならうまく壊れますよ!』  「ありがとう。信じよう」

          【小休詩】ダダイズムは破壊

          【詩】ナイチンゲール

          部屋の空気は清浄に ベッドは柔らかく シーツは新しく 食事はバランス良く おやつも3時にはある 起床消灯は規則正しくが 基本だけどメンタルが優先 たまにハメも外さなきゃね 致命傷を負った 躰にも心にも 救急車の人と 顔馴染みになる程 くるしいくるしい もうむりだ 気を失って病院で目覚める 其処には天使たちが居る 人が人を救う当たり前のこと この世界は戦場だと云うこと 幸せを思い知ってからは

          【詩】ナイチンゲール

          【詩】推し

          一口噛んだミンチカツの肉汁が 受け皿に熱く滴る土曜日の朝 推しのレポーターは愛嬌を振り撒いて わたしは一人カロリーメイトを食べる この時代ではたったそれだけを 行うことが許されているみたいで カチコチカチコチと番組は終了 このままでは惰性の車輪に轢死する 巷には美男美女が溢れ過ぎて 量産型には心を許したくないな 寧ろ異界からくる未確認生物の 縛りで宅コスをわたしはしたい 今から狭い空間に突貫して わたしだけの特別を愛でようか 今から市街の特異点に訪店して 枯渇の

          【詩】 憤り

          あなたがバカで非力なのは個性です あなたの個性を活かせる仕事に就きましょう あなたは何しろバカで非力ですので 単純作業に能力を発揮するでしょう ベルトコンベアに流れてくる パーツにパーツを嵌めましょう 兎に角あなたの個性を理解することです あなたはバカで非力なので 清掃員に個性を発揮するでしょう ゴミを集めて袋に詰めて運んだり トイレを綺麗にする大切な仕事です 小箱にひたすら商品を詰めてゆく仕事や 整理券をひたすら裁断してゆく仕事や シールをひたすら貼ってゆく仕事 そういう個

          【論詩】「ファウスト」が戯曲である理由

          永遠の登高を描いた戯曲 わたしたちは禁断の領域に 現実を踏み入れている 瓶の中の小人が消滅した光の どうしようもない美しさは 文学史上もっとも叙情的に 自然界の神秘を表現したが 機械論的には随分前から可能だ 心の本質が記憶であることが 暴かれた辺りからがヤバい ヤバいというより素晴らしい 瓶の光が実像を結ばんとしている そしてこれは一要素に過ぎない 【詩】= "程よい抽象性と程よい論理性" 過去 現在 未来と読み継がれた 全てを記述したゲーテ60年間の 仕事は時空を超

          【論詩】「ファウスト」が戯曲である理由