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暁に薮を睨む

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刀篤(かたなあつし)の厳選した詩集です。
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2024年5月の記事一覧

【詩】輪

【詩】輪

輪をぼくに帰してくれないか

盲信するコミュニティの猛進する歯車
勝利の雄叫びや性の悶えへの回帰
涼やかな風に遊ぶ子どもたちの輪

きみと過ごした半ヶ月との邂逅

ぼくも輪の一部だったんだよ
ぼくの存在のすべてを差し出すよ
札束だって何億何千万とあるよ

輪の外でぼくたちは出会った

きみの履歴に涙すること
きみの息災に涙すること
きみの面影に涙すること

決定的に失ったぼくは失った

【詩】君トノ切ッ先

【詩】君トノ切ッ先

1つずつ数えた白い106錠
何かを完遂したつもりの
『Brotizolam』は確かに
素晴らしいさよならの一種の
作法だったことは間違い無い

あの人に詩を贈らないこと
あの人にのめり込まないこと
二度とあの人に会わないこと

中庭できみがぼくの
『Creativity』を理解して
ぼくはきみに恋をした

わたしに詩を贈らないこと
わたしに特別固執しないこと
二度と自分で死なないこと

1つのベン

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【小休詩】リバイアサン

【小休詩】リバイアサン

早朝/
/リバイアさんは悩んでいた
今日はバハ武藤くんと
初めてのデートなのだが
何を着て行ったら良いか
わかんなかったのだ

朝/
/リバイアさんは焦っていた
やはり着て行く服は決まんないし
髪型も思い通りに決まんないし
挙句トイレにスマホを落とし
対処法もわかんなかったのだ

昼/
/リバイアさんは困っていた
バハ武藤くんはやさしく
ゆっくり選んでねと言ったが
ドリアって何?ペペロンチーノ?

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【詩】練磨(New Ver.)

【詩】練磨(New Ver.)

腿肉の緊張と弛緩
楽曲と協調破調し

しなやかに烈しく
美の概念を拡張し

ああ、なんという
終わりのない練磨

バレエダンサーの
肉体の誇り高さよ

静的動的な連続性
瞬間瞬間の格調に

質量としての個の
リミットを超越す

【詩】Re:天国(New Ver.)

【詩】Re:天国(New Ver.)

正道を行き脇道を選び
けもの道を開拓する

死線を乗り越えられたとしても
次の死線が待っているだけだ

だが今度こそ私は死神の
匂いを確実に覚えたぞ

注意深く
思慮深く

ときに群れて
ときに一匹で

白夜にまた奴を見れば
回り込んで喉笛に噛み付く

そうやって肉を喰らってゆけば
天使の声を聴くこともあるだろう

正道を越え脇道で休み
けもの道で罠をかけて

折り重なる死線に挑む
君の愛憎の腕へ

【詩】絵本

【詩】絵本

わたしを差し出した
わたしは絵本だった
わたしを覚えていてね

【詩】内緒

【詩】内緒

誰かが聞き耳を立てていないか
アチコチ確かめる様に二人きり
警戒する波打ち際そんな休息が
今の僕たちを支え救っている
いつか誰かの刃先で誓った
約束を君との約束に更新し
内緒話の様に心臓に刻み付け
スクリューに倍の加速をかける