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暁に薮を睨む

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刀篤(かたなあつし)の厳選した詩集です。
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【詩】暁に薮を睨む

【詩】暁に薮を睨む

もう夜になる/埋め込まれている
そうやって薮の中に踏み込んでゆく

君が帳に差し出した手を
色めく街を俯瞰して伸ばした手を
僕の本心は【掴む】だったけれど
愚かにも僕は躊躇した

君が全霊で救おうとした君の手は
誰の【掴む】でも良いものなのだと
賢明にも僕は正確に分析した

今睨みつけたい道理があって
今睨みつけるべき論理があって
今睨みつけるはずの倫理があって

最も憎むべきものは良識であり

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【詩】黒雲

【詩】黒雲

ビル街に風上を何気なく見ると
低空にドス黒い雲が分厚く在り
湿度の高い茹だるような世界に
其の雲が早送りのように迫り来て

皆が福音を待ち望んで居るのだ
言うなれば 善悪の区別、法、検閲、
秩序、理念、常識、歴史、等に超越し
雷雨は何時もビル街に平等に降り注ぐ

焦燥感を胸騒ぎが埋め合わせてゆく
草蔭のライオンがインパラの子供に
狙いを定めて忍び寄るときのように
飢餓が心の高まりに連結されてゆく

【詩】ステップ

【詩】ステップ

憎しみが続くこと
きみは其れが恐い

苦しまず死ぬこと
ぼくは其れを恐れない

世界が消えることは?

神様たちに理解して貰おうなんて
わたしたちは思ってなかったけれど

あなたたち神様は2階から戦場を見下ろし
円卓に睡眠薬を106錠ほど並べているんだろう

そういうのをステップって云うこと
ぼくたちはずっとまえから知ってた

ずっとまえぼくが軍医志望だった頃から

ぼくたちわたしたちは明日死ぬか

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【詩】グラディエーター

【詩】グラディエーター

骨を含んだこの畑に種が育ち
帳簿に余る記憶を嫌でも囁いてくる
敗者の手招きをはね返さんと
此処の土はツンと澄ましている
地面が地面自体を律している
わたしはわたしの実存の確かさを
検める様に麦穂の先を撫でる
太陽が今 畑の直上に差し掛かり
わたしは新しく小さな刺傷を見つけた

【詩】オールニードイズ

【詩】オールニードイズ

あなたがあのlive-houseで
その言葉を口にしたとき
あなたがそれを疑ってないこと
知っているからわたしは
とても嬉しくて誇らしくて
ジャンプして叫んだんだうおーっ!て
だからわたしはそれが何か知っているし
嬉しくて誇らしくてそのとき生まれた
喜びや責任や幸せや運命や涙や世界を
永遠に肯定できる

【詩】イメージする世界

【詩】イメージする世界

わたしには未来を聴く力がある
わたしはこの場所が好きだ

イメージは良い
曇り空、涼やかな初夏
トラックのコンディションも良い

微風のスタートライン
腕と脚をプラプラさせる
トントンと少し跳ねる

履きなれたスパイクは
少し湿っているみたい

グー、パー、グー、パー
はぁーーー、、すぅーーー、、
静止

わたしには未来が聴こえる
詩人だから

耳を澄ます
世界を研ぎ澄ます
心が渇いている

未来

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【詩】晒 (※R-15推奨)

【詩】晒 (※R-15推奨)

周囲の全ての人間が非
と言っている真理に対し
是という誤謬を見出す

他人の高潔さを測っている
何時もの癖に気づいた女は
未だ羞恥と縁の無い筈だった

スマホを見せろと恋人に
問われた時に女は素直に
乳房と内腿を晒け出した

必然性を見出すことが
可能なら女は全裸で
街中に闊歩も出来た

開拓者が最も美しく
二番煎じが醜いことを
女の躰が直感していたのだ

【詩】流れ星

【詩】流れ星

わたしたちは過去に
喪失を経験した流星群
楽しい体験をシェアします
わたしたちは全てを失った流星群
新しい未来を創出する流星群です

世界はわたしのものだ!
わたしはそう叫んだことがある
実際にその通りだったからだ
全てが可能で全てを愛していて
未来なんて如何様にもなったものだ

我が子への愛をキャッシュでしか
表現出来なかった父親の葬式で
子らは父親の為に泣き空を仰ぎ
その涙が流星群になって天を

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【詩】肢体

【詩】肢体

存在の関係性の本質が
システムだからこそ
何処までもわたしたちは
絶対的に孤独では無い
役割を演じる必要も無い

それは(0.1+0.1)
わたしの美しい肢体の嵐
それは(×0.2)
アーキテクトニクに在る唇
それは(×0.04)
狂った歯車を修正する乳房
それは(×0.0016)
手術台の上に拘束する下腹
それは(×0.00000256)
わたしの愛しい夏の夜の太股
それは(×6.5536e-1

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【論詩】美≒芸術

【論詩】美≒芸術

芸術がほぼ美だった頃
わたしはシンプルだった
自然観は次第に複雑化し
古生物は多様性を獲得し
芸術は必ずしも美である
必然性が次第に失われ
承認欲求は饒舌になり
論理で裏付ける技術が
芸術ということに成り
奇行の言い訳が最高の
芸術と成り得ることに
孤独な詩人も気づいた
頭の切れるペテン師が
わたしに媚びた筆で
芸術家として大成し
信者がペテンを補強し
社会的精神の形成に関わる
芸術の本来の宿命に

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【詩】フェチ

【詩】フェチ

血の魔人が君のこめかみに
口付けをして祝福したのだ
行為の最中の雌のこめかみに

【詩】大聖堂

【詩】大聖堂

その男は女を陵辱することでしか
女を愛せなくなってしまったらしい
わたしは建築家になり大工になり
その男と女の為に大聖堂を建てる
神を信じなくてもわたしは自身の
理に反した仕事に引け目を感じない

娯楽やエンターテインメントを
下に見ていたことを後悔している
わたしは建築家になり大工になり
庶民の娯楽の為に大聖堂を建てる
わたしは偶像崇拝の過程に起こり得る
凡ゆる精神現象を哲学的に論証しない

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【詩】わたしはガザに行く

【詩】わたしはガザに行く

子供たちが
死んでるんですよ
みんなは
よく平気で居られますよね

その感覚は
圧倒的に
正しかった
その子は泣いていた

自分が
当事者になった時
そう為ってから
考えればいいんじゃない

ぼくの言い訳は
何かのアニメの
受け売りだった
ぼくは狼狽えていた

その子は
パスポートを手配して

ぼくは
バタフライエフェクトを説いて

その子を地獄から救えるか
リアルに今も子供たちが
死んでゆくガザ

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