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暁に薮を睨む

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刀篤(かたなあつし)の厳選した詩集です。
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2023年3月の記事一覧

【詩】不死の海

【詩】不死の海

私たちの記憶は全て
深海の嚆矢に秘められて

自然は凍てつく魂を
灼熱の槌で錬磨する

生命とは何か
私たちは何故存在するのか

行き着く先が破滅でも
全ては原初生物の夢に過ぎない

【詩】豊かな胸

【詩】豊かな胸

春の午後に降り始める
雨の前に現れた静謐な
早朝の虹の光彩の豊かさ
その現象に焦がれる想いを
わたしは縛り付けるように
通勤バスに乗り込んだ

虹彩に
縛り付ける
豊かな
静謐な
焦がれる
光彩を

ある種の表現力を虹は孕み
今年も夏を迎える準備と
いつもわたしが見上げていた
あの子のささやかな胸に
人生の豊かな波紋の
静謐な完成型を成す

【詩】君の死

【詩】君の死

ニュースキャスターは
原稿を読んだ
読んだだけだ
泣いたのは君の
母親と妹と兄
3人の感情を
犠牲にして
君が今
幸福だと良いな

【詩】Re:天国

【詩】Re:天国

正道を行き脇道を選び
けもの道を創造する

死線を乗り越えられたとしても
次の死線が待っているだけだ

だが今度こそ私は死神の
匂いを確実に覚えたぞ

注意深く
思慮深く

ときに群れて
ときに一匹で

白夜にまた奴を見れば
回り込んで喉笛に噛み付く

そうやって肉を喰らってゆけば
天使の声を聴くこともあるだろう

正道を越え脇道で休み
けもの道で罠をかけて

折り重なる死線に挑む
君の愛憎の腕へ

詩:『真理』(再掲)

詩:『真理』(再掲)

女性に生まれて
美しく育つ

男、男、男、男、
単細胞の種馬ども

わたしはわたしの女性性の
深海に一人堕ちて行く

先輩はノーマルノンケ
わたしは危ノーマル

「おまえの病気を治してやる」
「男の良さを教えてやる」

わたしの先輩を見るな
わたしの先輩を誘惑するな
抱いた先輩の話をわたしにするな
抱いた先輩に飽きてゴミのように捨てるな

少年漫画は戦闘系か
それでなければエロ系か
少女漫画は恋愛

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【論詩】一瞬しか無い

【論詩】一瞬しか無い

超光速航法は物理的に不可能だと
証明された瞬間に未来が1つ消えた
科学的見地の更新に全人類の失望が
伴い得ることもその論文は証明した
夢が現実に駆逐された瞬間だった
前に進むことは失うことである
今や誰でも理解している真理に
わたしはこれ以上関わりたく無い
"わたしが生きることは死ぬことだ"
"わたしが生きることは死ぬことだ"
そんな風にわたしの思考は量子もつれし
人類の可能性を1つ取り戻したのだ

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【論詩】怒怒怒

【論詩】怒怒怒

例えば果汁1%のレモンライム飲料の
ラベル表示の欺瞞を許したくない僕の
ちっぽけな怒りだって 積み重なり皆の
行動を伴えばタスクが1つ焼かれるだろう?
此処にタスク側は逆ギレの立場を取る算段で
天界から見下ろせば炎の車輪はフル回転
あちらで火が付けばこちらも火の海になる

怒りの連鎖は指数関数的にエスカレートし
戦車になり爆撃機になりミサイルになり
要するにタスクを生成する金づるになり
怒りとタス

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