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暁に薮を睨む

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刀篤(かたなあつし)の厳選した詩集です。
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2022年10月の記事一覧

詩:『青春』

詩:『青春』

『青春』

夜のスタバの抹茶ラテ
紙ストローに君の深緑
ヌメりと馴染んでゆく

詩:『ギョームレポート』

詩:『ギョームレポート』

本日未明千代田区丸の内に出現した
正体不明の流動不定形生命体を
便宜上ギョームと命名する

以下はギョームに知的接触を試み
全滅した調査チームの遺した
不完全な報告の一部である

『ギョームレポート』

ギョームは宿命的必然性を有し
ギョームは義務的必然性を有し
ギョームは輪廻的必然性を有す

ギョームより先に寝てはいけないし
ギョームより遅く起きてもいけない
ギョームより先に死んでもいけない

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詩:『不滅の音楽』(再掲)

詩:『不滅の音楽』(再掲)

『不滅の音楽』

君は君自身が
生まれた意味を
知っているか
長い船旅の途中
高い断崖の上から
少女の声が響いてくる

暗礁に乗りあげ
待ち人を残して
冷たい水面に
消えるとしても
それは気高く残虐な
渇きを潤す不滅の音楽

(言葉があり)
(旋律があり)
(歌声がある)

欠けるものは何もない
帆をあげ続けるのだ
それは魅惑のローレライ

詩:『天使の朝』

詩:『天使の朝』

『天使の朝』

すべてを穢してしまう気がした
君の躰に僕の全身の影が落ちた

詩:『ブラックホール』

詩:『ブラックホール』

『ブラックホール』

今期限定の青りんごスイーツは
素材を活かしたあっさり風味
遊園地の新アトラクションは
史上最速のバーチャルカート
地方の乏しい観光資源は
ゲームとコラボで0から作る

わたしたちを包摂している世界の理
自然の法則が幸せという概念を
そもそもキチンと踏まえていないので
不幸なわたしたちは躍起になって
揺籃から棺桶まで玩具を拵えては
ブラックホールに餌を撒き命の意味を
煙に巻くし

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詩:『愛』

詩:『愛』

『愛』

君の笑顔に勝手に依存して
それを君に勘づかれないまま
君の知らない所で朽ちて逝くのだ

詩:『神経過敏性消耗症候群』

詩:『神経過敏性消耗症候群』

『神経過敏性消耗症候群』

「それなら貴方にとっての世界の暗喩は
豊かさを齎すH₂Oの量子的波長なのね
千変万化の被造物を趣で満たしてゆく」

なるほど君は優しく微笑んだけれど。

穏やかな気持ちになれるのは、
窓からソファに、朝日が射すからで、
虚しさを感じれば、雲が影差すような、

こちらへ寄ってきたので、
世界平和の兆しと喜んだのが、
実は飢えただけの白い鳩のような、

君が先ほど微笑んだ世

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詩:『練磨』(再掲)

詩:『練磨』(再掲)

『練磨』

腿肉の緊張と弛緩
楽曲と協調破調し

しなやかに烈しく
美の概念を拡張し

ああ、なんという
終わりのない練磨

バレエダンサーの
肉体の誇り高さよ

静的動的な連続性
瞬間瞬間の格調に

質量としての個の
リミットを超越す

※この詩は原因不明に削除された記事の再掲です※

詩:『イマジンとエウレカ』

詩:『イマジンとエウレカ』

『イマジンとエウレカ』

未来は輝いて待っていた
ピカピカしている学校と
ニコニコしている先生たち
学び 考え 自制し 自立し
夢に手が届く理想の社会
昔ジョンが歌ったのと全く
違わない争いも宗教も無い
マイナス要素の全く無い
あらゆる人が幸せな世界

男たちは鍛錬を怠らなかった
女たちは自らを研ぎ澄ました
その日々は充実していて
夢は現実になると信じられた
エウレカ!エウレカ!エウレカ!
勉学に

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【論詩】抹消

【論詩】抹消

異端を持て囃す風潮は
異端の価値を貶める
あらゆる既知の情報源は
あらゆる革命を絶滅させる

もの珍しさは革命に及ばず
何でも有りはカテゴリ不可だ
既成概念外の詩は今や
この世界には存在しない

価値の矮小化によって
詩人は物理的に飢える
飢える苦しみそれ自体さえも
矮小化しひっそりと死んでゆく

篩にかけても廃棄物しか残らない
篩自体が既に廃棄物だから
権威付けを経て詩は熱的死へ

現状の救いは

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