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雨のあとで

白壁に雨雫がしたたり
月の光に照らされる
傘を閉じて
私達は一歩だけ近づいた
森の香りのする
猫背の その男は
気怠く 隣を歩きながら
微笑んだ

「こんな夜に君はなにを考えているの?」

その笑顔は 月より遠く
女は真実を雲に隠した

木々のささやきも
雨の残り香も
真夜中の森のなかへと
吸い込まれてゆく

闇夜のその輝きは 稲妻の如く
しかし その轟は 空音
ただやりすごすことだけを考えた
午前0時

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