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かなこの本棚 〜『流浪の月』〜

ひさびさに夢中になった本、『流浪の月』。
映画でやるみたいだから読んでみて、と母親がおすすめしてくれた。

本のレビュー、感想文を書くのは苦手で。
でも短いながらも本作について、自分のためにも記録したい。

<ざっくりあらすじ>
誘拐事件の被害者(更紗)とその犯人(文(ふみ))が、
「傷物にされた可哀想な女の子」と「ロリコンで凶悪な誘拐犯」として生きていく中での関係性を描いている。
Wikipedia


映画化されていなくても、こんなひとがいいな、と勝手に俳優や女優をキャスティングして本を読むことが多い。
たとえ映画化されていても、まったく別のひとを当てはめるし。

本作は広瀬すずと松坂桃李が演じると知りながら読んでしまったが、これ以上の適役はいないな、とうなずける。
他の配役も納得の顔ぶれだった。


更紗目線で話すシーンが300ページほどで、
ほとんど後半まで文の感情に触れずに進む。

後半にいくまでも2人の関係性に感情移入せざるを得なかったが、
文目線で語られるたった15ページで、
人が人に固執してしまう本能と、
決して自由になれない現実を突きつけられてしまった。

心の安定、存在価値、欲望、絶望。
整えられた生活と真逆の本心を抱える文に、
同情とはまた違う、でもそれに近しい感情が15ページに込められていた。

ラストがハッピーエンドかそうじゃないか、は正直どうでもよくて。
字面を追いながら自分の感情をなぞるのに必死だった。

「みんななにかに怯えていて、赦されたいと願っていると感じてしまう。」


本当は吐き出して楽になりたいけれど、
ただの言葉が宙に浮くだけで、後悔することもわかっている。
言うべきことを言うべきひとになんて、
そんなタイミングのいい瞬間も、あえて見つけようとしていない。

それでも、ひとりで生きていけないように、
孤独のレールを辿らないように、
小さい希望が積み重なるのをみんな切望しているんだよなぁ。

治らない傷はない、なんて台詞にはうなずけない。
でも傷を持った同士で救われることは、たぶんある。

愛とか好きとかよりカラッとしている関係でも、
均衡を保つのが難しくて、何よりも大事にしたい存在を考える。


公開が待ち遠しいな、
映画館へ行く前日は、夕飯にアイスクリームを食べようと思う。

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