【ピアノ査定】思い出を断捨離してみた
今回は思いがけず、大きな断捨離をすることになったお話です。
世間ではずっと断捨離ブームが続いている気がするけれど、まだまだ物があふれている我が家。
本や服はなるべく捨てるようにしているけれど、家族のものや、いざという時に必要?と思うものもあって、なかなか進んでいなかった。
我が家でずっと場所をとっていた不要な物は、学生の時にバイトをして購入した電子オルガン。
見た目は小型エレクトーンなので、廃棄には3万円程かかるらしい…。
娘に廃棄に困っている話をすると、『ピアノは捨てないの?』の突っ込みが。
オルガンの隣に、5歳の時祖母がYAMAHAに発注して買ってくれた、形見のようなお守りのピアノも並んでいる。
慌てて『それはママが死んでからにしてー!』と言ってしまった。
5歳から20歳まで、ほぼ毎日弾いていたので宝物と思ってきたけど、言葉にして出してみて(それもちょっと無責任…?)という気がしてきた。
明るくきれいな木目で、部屋にあっても圧迫感がないのがお気に入り。
かつてはリビングにあって、私も子供たちもよく弾いていた。
でも今のマンションに引っ越してきてから既に10年、前のマンションより壁が薄いことがわかって、弾くのは遠慮していた。
調律も音漏れに気を使って、ずっとできていない。
娘にはCASIOの電子ピアノがあるし、これ以上置いていても弾かないかも。
調べてみるとYAMAHAやKAWAIのアップライトピアノの場合、上を開けると製造番号が刻印されているので、何年製造のどんなピアノか、だいたいわかるらしい。
まず一番有名なタケモトピアノに電話で問い合わせると、すぐに値段が出た。
想像以上に安かったので、売るのは今じゃないかな、とひと安心。
そんなある日、『捨てたいものはないですか?』と若者が突然玄関にやってきた。
いらない電子オルガンのことを伝えると、『8千円で今日引き取ります!』とのこと。
30分程後に来るというので、すぐ出せるように急いで片付けた。
やっと寝室が広くなる〜!と喜んでいたのに、待てど暮らせどやってこない。
8千円もらってもわりにあわない、と気づいたのか?結局戻って来なかった。(※あとで教えてもらったのですが、突然家に回収に来るのは違法らしいので、ご注意ください!)
せっかく部屋を片付けたのに無駄になるのも悔しいので、訪問してピアノ査定をしてくれるところに頼んでみることにした。
あとから考えると、その片付けで断捨離スイッチが入ったように思う。
まず5社一斉見積りができるサイトで製造番号や住所・氏名を入れ、早速2社が次の日に来てくれることになった。(残りの3社はメールでの金額提示のみ。)
数日前までピアノは手放したくない、と思っていたのに、流れにさからえないような気持ちになっていた。
最後に査定してくれた人は木目のピアノを探していたらしく、電子オルガンの廃棄も手配できて、結果的には一番高い値段を提案してくれた。
ヨーロッパに買い手がいるらしい。
即決して正解かはわからなかったけど、置物状態で古くなっていくより、弾いてもらったほうがピアノも幸せなのかもしれない。
後日業者から連絡があり、搬出日は一週間後に決定。
想像もしていなかったスピード断捨離に、自分でもびっくり。
既に覚悟はできたつもりだけれど、心理学でもよく出てくる、脳の90〜95%を占める『無意識』がどう反応するのか、観察してみることにした。
手放す日が近づくにつれ、いろんなことを思い出した。
16年間毎日、精神的につらい時ほど長時間つきあって音を提供してくれた。
思春期はおそらく家族よりも、そばにいてくれた友人でもあったのかな。
ピアノを見るたび、勝手に涙が出た。
以前引っ越しで大家さんに挨拶に行った時にも、自分でも驚くほど大泣きしてしまい、大家さんをびっくりさせた。
でも後日挨拶に行った時には、同じ自分?とあきれる程のすっきり笑顔でお別れができた。
搬出の時までは泣いても、手放したあとはきっと大丈夫。
この家でひとりで3人の子育てになってからも、もう十分に、私の『お守り』でいてくれた。
長年の感謝の気持ちを、最後に伝えた。
これからは、どこかの国の人に大切にしてもらってね。
とうとう搬出の日、2人のお兄さんに家から運び出され、トラックに積まれて、あっという間にピアノはなくなった。
置いてあった場所だけ、畳は新しい色のまま。
部屋は、見たことのない広さになった。
ちょうど同じ9月から、『1万人の第九』の練習が始まっている。
昨年は抽選に外れて大阪城ホールの客席で観ていたけれど、今回は20歳の時以来の参加!
ずっとしまい込んでいた第九の楽譜は、私だけ古い。
思い出のピアノは手放したけれど、また戻ってくるものもあるのかも。