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断片(久慈くじら)

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なにもかも人生の断片。
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記事一覧

『アンリアルライフ』クリアしたのでメモ

『アンリアルライフ』をクリアした。

1.
 ドット絵(ピクセルアート)は、ハードウェアの発色数や、解像度、容量などの制約があったおかげで生まれた。
 この制約は短歌や俳句などの定型詩に似ている。
 ドット絵の風景画では、同じような景色(たとえばビル群)が絶えず生みだされているけど、そのどれもが不思議と魅力をもっている。
 ノスタルジーという言葉はまだドット絵を捉えきれていないような気がする。たぶ

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SENTIMENTALISM

 萩原朔太郎の「SENTIMENTALISM」を読んでくれ。
 朔太郎はここで神秘主義的なことを書いている。

 神とは詩である。多くの場合、感傷には理性がともなう。哲学者はその思想において、ときに詩のようなものを書くが、形骸ばかりで死んでいる。ここには生命も感動もない。理性が理性として在る場合、それは哲学であって、詩ではない。詩は感傷の涅槃においてのみ生まれる。そこには観念も、思想も、概念も、象

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黙っておく

窓硝子の曇りに言いたいことを書きつけて、隣にいるあなたの肩を寄せながら「これを読んでくれ」と言うとして、声を使って言うこととの違い、あるだろうか。勇気の問題だ。たとえばこうやって読まれもしない言葉を書き連ねるのはほとんど勇気のいらないことだ。遠いところから遠いところへ書くことは負荷がすくない。宛先のない詩も負荷がないはずだ。けど詩人は苦しむ。それはいちばん近い自分へ宛てたからだろうし、また、世界そ

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KMNZがつくるREALITY――KMNZ 1st Album『KMNVERSE』

 笑い声はノイズだ。
 電車に乗り込んだ僕はイヤホンを耳にはめて、誰かと誰かの話し声をシャットアウトした。Spotifyのアイコンをタップして『KMNVERSE』を流した。一曲目「OPENING」。LITAの声が左chから流れてくる。こそばゆい。続いてLIZの声が右chから。そしてこの曲は、スタッフらしき男と、LITAの笑い声で終わる。
 どうして、この笑い声は不快ではないのだろう?
 見知らぬ誰

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AKG『ホームタウン』と忌野清志郎

 音楽について語るのは困難だ。それでも語りたくなるのは、おれたちに声があるからなのかもしれない。だからこうやってキーボードをタイプするのは間違っていて、どっかの居酒屋であの曲が「わーっ」って感じでいいんだよ、って声のトーンとかで表現するほうが的確な語りだと思う。しかしおれは悲しい人間なので、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの新アルバム『ホームタウン』のあれこれについて、こうやって書

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『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』は世界を灰にする

口上これから書く文章は、考察でも、感想でも、批評でも、エッセイでもない。

世界を灰にするまで 1話。情熱のレヴュー。Revue Songは「世界を灰にするまで」。
〈ふつうの喜び、女の子の楽しみ。すべてを焼き尽くし、遥かな煌めきを目指す。それが舞台少女〉だ。
 だからスタァになったときには、世界は灰になっている。舞台少女の情熱を眺める我々は、その激情によって灰にさせられる。我々は最終的に灰になる

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2018-06-28-12:51

 この暑さ、この湿度、この寝苦しさ、麦茶の香り、扇風機の音……。夏が来たな。冬の間ははやく夏よ来いと思っていた(でも夏が来たら来たではよ冬来いと思うんだろうなと思っていた)けど、やっぱり夏はいつも想像以上に暑い。でも夏か冬かで比べると、僕は夏のほうがいい。指がかじかんで動かなることがないからだ。
 とはいえ、あまりの暑さに気力が奪われてしまったら意味がないのだけど……。
 夏は僕たちの気力を奪って

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 夏は影が青い。じゃあ冬の影は何色なんだろうか? 鈍色? もう冬のことは忘れてしまった。鈍色だと思うとそうだったような気がする。人間というものは、そうやってなにもかも忘れ、そして都合よく思いだす。この夏の鮮烈な青色も冬になったら忘れてしまうだろう。こんなにもうつくしいのにな。
 このうつくしいという感情しか憶えていないから、だから夏は、夏にいない僕たちにとって特別な季節であり続ける。夏まっただなか

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2018-05-29-13:25

 僕は悲しい音のする指先でキーボードを叩いている。その悲しい音はこうやって文字に変換されてしまうとどこかに行ってしまうようだった。ふしぎなことだ。悲しみが通りすぎるのを押し留めるために書いているというのに、これはなんにもならないみたいだ。

2018-05-28-20:34

 外はとても明るい青だった。僕の部屋はまっくらで、近くになにが転がっているのかすらわからなかった。だから僕がいる場所はこの世界に存在しないのと一緒だった。
 僕はこの世界のどこにも存在しないところから外の世界を眺めている。ふしぎな感覚だ。冷静になって考えてみれば、自分というものの存在の不安を感じて発狂してしまうような状態におかれているのだと思う。でも今の僕はなぜかとても穏やかな気持ちだった。外の世

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