
#27 「地域振興」と「産業振興」・続き
前回、「地域振興」と「産業振興」についてお話しました。
ここでの「地域振興」と「産業振興」の定義は以下の通りです。
#26参照。
★「地域おこし協力隊」の取り組みが、
→経済的な利益を生む、
経済的な利益を生む仕組みづくりにつながる
=産業振興色が強い
★「地域おこし協力隊」の取り組みが、
→経済的な利益を生まない、
経済的な利益には、あまり/すぐにはつながらない
=地域振興色が強い
これは、どちらが良い、悪いではありません。
これを達成するための、方法・手段、アプローチが違う、ということでした。
そして、こう思われる方もいると思います。
どっちも目指したらいいじゃん。
どっちも目標にして取り組めばいいじゃん。
そのように思われた方、どちらでもいいです。
「地域振興」でも、「産業振興」でも、まず、取りかかってみてください。
自分の手足頭を使って取りかかってみたら分かります。アプローチが違うこと。それに、それをやり続けられる自分がいるかどうか、がいかに大変で、重要か、ということが。
な、なんだか強気な発言ですが(笑)。
私は取りかかってみたので身に沁みました。
私の場合、ミッションの一部に、「地域のコミュニティスペースの運営支援」というものがありました。その地域のコミュニティスペースには、カフェが併設されていました。
地域のコミュニティスペースとカフェは、地元の地域振興を目的とした有志団体の人達が立ち上げたもので、その地域のコミュニティスペースとカフェの土地、建物はその団体の人達の所有のものです。
私は、一時期、その運営支援に協力隊の活動時間の多くを割いていました。そして、そのカフェが併設された地域のコミュニティスペースの課題は、維持費を捻出すること、せめて赤字にはならないこと、でした。
この、維持費だけでも捻出する、というのは、私にとって、難易度MAXでした。
「地域おこし協力隊」がその運営支援にあたるだけで、まずその人件費が浮きます。それに、その運営支援にかかる費用も、協力隊の活動交付金が適用される場合があります。また、手伝っている地域の有志団体の人達も、無償ボランティアです。
そのようにしても、固定資産税、光熱費、火災保険、経費、さらに、カフェの機能があったので、飲食業としての保険、材料費、など、維持費にかかる費用はバカになりません。(ここまでは協力隊の活動交付金は適応されません)
では、それらをどうやって捻出するかというと、カフェのお客さんを増やそう、カフェの売り上げを上げよう、となりました。
では、どうやってカフェのお客さんを増やすか、カフェの売り上げを上げようか、となると、SNSを活用しよう、チラシを配ろう、メニューを開発しよう、となりました。
では、どうやってSNSで周知集客できるか、何枚どこにどんなチラシを配布するか、どんなメニューを開発するか、となりました。
う、う、うん、分かるんだけど。
集客・売り上げを上げる、しごくまっとうなごもっともな正論なんですが、これって、フツーの飲食業の手伝いでは????????????????
ま、それでも、取りかかってみました。素人なりに。
まず地域内にチラシを配布しました。SNSで日々カフェの様子を投稿しました。コロナで休業状態の時でも、何かネタを探しカフェの雰囲気が伝わるよう投稿しました。営業日は必ず投稿しました。何かコミュニティスペースで企画があればもちろん投稿しました。企画そのものも提案したりして、いくつか実施しました(企画にかかる備品代などは活動交付金から)。それに、メニュー開発にも取り組んでみました。メニュー試作をし、関係者に試食をしてもらいました(試作材料費は活動交付金から)。ちょっと目玉になるような、ちょっとした機材が必要なメニュー開発もしました(この機材は有志団体の人達が出資)。そのメニューのチラシを何百枚かポスティングしました。私一人で。そもそも、座席数、客単価、回転率、原価率と考えていき・・・。
ぉおいっ!わたしゃ、飲食店のアルバイトかい!
そう、そうして、ようやく、気づいたことが。
取り組んでみた、このカフェへの試行錯誤の過程に、
「地域」が関わっていませんでした。
「地域のコミュニティスペース」のためなのに。
ぉぉおおいっ!
誰に届けたいSNSなのか。誰に来てほしいカフェなのか。誰に利用してほしいコミュニティスペースなのか。
私は、この「地域のコミュニティスペースの運営支援」という文字を見て、てっきり、地域の方へ向けた活動をするものだと思い込んでいました。
届けたい相手は地域の人。来てほしいのも地域の人。利用してほしいのも地域の人。地域の人が喜ぶようなメニュー・企画。もちろん、地域の人でなければダメということではありませんが、ひとまずの対象者は地域の人かと。これを考えるのが、「地域おこし協力隊」としての自分の役割だと。
しかし、いつの間にか、どうやったら売り上げが上がるかが第一優先となったように思います。このミッションに惹かれた「地域のコミュニティスペース」という概念から、遠く遠く遠ざかっていってしまったように思います。私的には。
もうお分かりだと思いますが、私は「地域振興」色の強い協力隊でした。
地域の人へ向けた取り組みをする、経済的利益が第一優先ではなく。それが私に期待されていることだと思って、このミッションの「地域おこし協力隊」に惹かれたのです。
もし、これが「産業振興」色の強い協力隊だったら、カフェをどう成り立たせるか、どう売り上げを上げるか、その過程でそんなに地域との接点がなくても、やりがいが見い出せていたかもしれません。その結果、維持費も捻出でき、地域のコミュニティスペースも存続できる。
そうであれば、きっと、日々のSNSの発信や、メニュー開発や、何百枚といったチラシのポスティングも、そこまで苦にならず、続けられたかもしれません。
私は、取り組んでみた結果、私はこれを続けられないと思いました。
「地域振興」が正解で、「産業振興」がよくない、とお伝えしたいのではありません。どんな活動も最低限の経費がかかります。身銭を切ったり、赤字と分かっていて、取り組み続けられる人はどのくらいいるでしょうか。
ここで、お伝えしたいのは、
「地域振興」「産業振興」どちらも一朝一夕ではできません。それを達成するために、それに合ったアプローチで、ステップを踏んで、やり続けなければならない、ということです。
卵が先か鶏が先か。どちらでもいいんです。
しかし、卵を育てて鶏になるまで努力し続けられるか。鶏を育てて卵を産むまで努力し続けられるか。
どんな努力が自分に合っているか。どんな努力ならやり続けられるか。
「地域おこし協力隊」としての、3年間という限られた期間の間で。
人間だもの。協力隊だって。なんちゃって。