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記事一覧
「空豆くん」 辻下直美創作童話
薄紅色の花たちが今日という日をお祝いしています。
そう、今日は松が谷小学校の入学式です。色とりどりの新しいランドセルに、そわそわした小さな子供たち、お母さんたちはおしゃべりに夢中です。
はじめての教室、はじめての机、はじめての連絡帳。
はじめてづくしの今日、小学校に入ってはじめて背の順での列を決めることになりました。
空くんは内心ドキドキしています。
一番前になったらどうしよう、ぼくより小さな背
「クリスマスイブの夜に」 辻下直美創作童話
真っ白な雪がしんしんと、世界を白く塗っています。
子供たちはもうすっかり夢の中。
暖炉のあるリビングには着飾ったもみの木や、おもちゃの汽車のレール、積み木が散らかっています。
おや、なにやらカタカタという音が聞こえませんか。
リビングの隅のほうから聞こえるようです。
音は突然がた!としてキーという音に変わりました。
こんな静かな夜に一体誰の仕業でしょうか。
まさかサンタクロースでしょうか。
「オレンジ色のこいのぼり」 辻下直美創作童話
うんと晴れた四月の日曜日。
南ちゃんと弟の陽平はお父さんの手伝いをして、庭に街一番の大きなこいのぼりをかかげました。
南ちゃんはこのこいのぼりが大好きでした。おじいさんが陽平の5月の節句のために買ってくれたこいのぼりには、黒いお父さんの鯉、赤いお母さんの鯉、子供の水色の鯉のほかにオレンジ色の鯉がいたからです。おじいさんはなにも言いませんでしたが、きっと南ちゃんが子供の日に一人だけ入れてもらえなくて
「カエルの天気予報」 辻下直美創作童話
おそろいの春風色のワンピースを着込んだうさぎの親子は大変に急いでいました。今日は大切な小学校への入学式だというのに、目覚ましを頼んでいたにわとりが寝坊をしてしまったのです。今日のために新しく仕立てたワンピースも、遅刻してしまったら台無しです。
野原をこえると、大きな蓮の葉で埋め尽くされている池があります。その真ん中に架かった橋を渡れば、学校がある森まであと一息です。
ところが、池の橋を渡
「黒猫ラベルのワイン」 辻下直美創作童話
太陽と月が入れ替わる時間。西の空はバラ色に染まり、東の空はスミレ色に染まっていました。けれどだれも空の色など気にせず、急ぎ足でうつむきながら歩いています。その様子をワインショップの店内から眺めていた岡野良樹は試飲ワインの樽を店内に取り込みはじめました。
「今日も一本も売れなかったな」
ワイン樽の中身は良樹が作ったオリジナルのワインです。ボトルは深い海の様な真っ青な色で、ラベルは黒猫がちょこんと
「虹を作った小人たち」 辻下直美創作童話
このお話の主人公はハワイのカウアイ島に住んでいたと伝わるメネフネという小人族です。ハワイを訪れるとペットボトルにこの小人族が描かれているので知っている人もいるかもしれません。身長は普通の人間の半分ほどで、森に住み、昼間眠り夜に働く習慣を持っていたようです。ハワイにはこのメネフネが一晩で作った道や建物があちこちに残っています。メネフネは土木工事に関して高い技術を持っていたのです。そのメネフネ達がハワ
もっとみる「ハロウィン魔女の大晦日」辻下直美創作童話
冬へ向かうこの時期に闇の世界を切り裂くお祭りがあります。それは遠い昔にケルト民族の大事な行事だったのですが、いつの間にかとても賑やかなお祭り騒ぎへと形を変えて今日に受け継がれています。いえ、そうでもしないと消えてなくなったかも知れません。なんでも長く続けるコツは時代に合わせて変えていける柔軟性だからです。
さて、今では誰もが知るハロウィンですが、元はサーオインの祭りという魔女の大晦日でした。魔女