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マイ本棚、秋の大運動会。

天高く馬肥ゆる秋。

朝晩の冷え込みが日増しに強くなるとともに、日中の秋晴れが心地よい季節となった。

巷の小学校では運動会が盛んになり、医療機関である私の勤め先でもめいいっぱいに頑張ってきた反動からか鼻風邪を引いた子供たちが大挙して待合室でお母さんと仲良く待っている。

「かけっこは1番だったんだよー!」
洟を早く拭きなさいとしきりに促す母を余所に、先生に自慢げに話す男の子を周りのスタッフも微笑ましく迎えている。

頑張ってもぎ取った思い出は、大人になってもかけがえのない勲章のひとつであろう。

さて、勲章といえば先日私の某読書メーターからお知らせが届き、登録図書数がついに1200冊を超えてしまった。120冊ではなく、桁が1個多かった。

2015年あたりから徐々に読書メーターをつけているが、なんとまあ、購入積読本ならびに読みたい本の登録が読了本に比べて圧倒的なスピードで増えていってしまい全く収拾がつかない。

季節的にも読書が盛んな時期、いわば読書の大運動会。
たくさん読んで何かの一等賞を取りたいとかそういうものはないが、書置きとして残していければと思う。

今後は年2回程のペースでマイ本棚の推移を見守っていければ御の字だ。
現在読んでいるジャンルが自分の心持ちを可視化しているものだと思っている。

春以来となる定点観測、秋の大運動会。
よーいドン。

自室の一角に鎮座する本棚。
時間を見つけては定期的に整理しているが、画集あたりはあまり動いていない。
実家から引き揚げてきた単行本も収めるようになったので、それぞれの時代で読んでいた本がわかるようになった。
文芸誌の棚。
センセーショナルな作家、文筆家、ライターなどが毎月熱い文章を披露し続けている。最近は九段理江、小山田浩子、奈倉有里、井戸川射子、絲山秋子あたりを読む。
また、川上弘美や多和田葉子の創作が出ている群像や文学界の号はチェックしている。
時代を遡るタイムリープゾーン。
森見登美彦作品を実家から移動してきた。
京都・祇園祭を舞台に繰り広げられる「宵山万華鏡」から「聖なる怠け者の冒険」にかけては、特に完成度の高い作品だと位置づけている。
(夜の鴨川の三角デルタで体育座りをして缶チューハイを飲んだり、作中に出てくる猫ラーメンを探したりしたかった人生だった…)
文庫・新書コーナー。
光文社古典新訳文庫はトーマス・マン「ヴェネツィアに死す」以来、読みやすい新訳を見つけては読むようになった。
O・ヘンリー「1ドルの価値」他短編集は特に女性の描写が優れている作品集で大変面白い。そこからチャールズ・ブコウスキー「パルプ」やポール・オースター「鍵のかかった部屋」へ、心理的描写を書くのが印象的な海外作品を少しずつ読んでいくのが最近の楽しみである。
週末単行本コーナーの棚。
午後さんの「眠れぬ夜はケーキを焼いて」は、偶然ニュースアプリで知ってから眠る前の静かな夜に少しずつ読んでいる。パウンドケーキが作りたくて仕方ない。優しい世界である。
牟田都子「文にあたる」は、校正という憧れの職業になったものの、出版物は一文字の誤植も許されない緊張感で神経をすり減らしている様子を見るからに、大変なお仕事であることを認識した。
その他司馬遼太郎・遠藤周作・古井由吉・橋本治・久世光彦など、すでに鬼籍に入った作家たちの足取りを辿るのも趣深い。
川上弘美・吉田健一の棚。
川上弘美「溺レる」は川上作品の面白さに気付いたきっかけとなる1冊。
わかるようなわからないような、時系列もどこか曖昧でも不気味に話が通ってしまう不思議な作品。時折性描写もあるが、特段卑しいと感じないのも読み続けられる一因だ。
吉田健一は問答無用に格好いい。
美食家であり英国紳士。語られる文章にはどこかしら品がある。
「金沢」を読んで、北陸新幹線をつたって茶屋街を満喫しに行ったのもいい思い出だ。

◆最近の読書から

酒井順子「うまれることば、しぬことば」
この作品と出会わなかったら最近の造語・死語を調べることなどしなかったであろう。
国・マスメディア・若者が作り出した造語と、時代の流れと共に死んでいった言葉。
「あーそんな言葉あったな」と感慨深くなると同時に、あまりにも簡単に略語化して軽率に流行らせてしまった世間への憤りに近い違和感。同時に感じることができる良書である。
吉村昭「回り灯籠」
戦後文学を代表する戦争作家であり歴史・随筆家である著者の最後の随筆集。
さすがにスッと入ってくる言葉選びが実に素晴らしい。
戦艦武蔵に関する取材秘話など、現在では到底体験できない話をうまく伝えている。
氏の作品はほかに「蛍」「月下美人」なども面白い。
フェルディナンド・フォン・シーラッハ「犯罪」
現在読み進んでいるのがこちら。
2012年の本屋大賞で1位を取った作品集とのことで、古書店で手に取った。
殺人などの犯罪ストーリーもあり、ややグロテスクな描写も見受けられるが飽きさせないストーリーと強盗などのキャラクターが身近で特徴的な性格をしているため面白い。
読み切り11作品ということで、意外とサクサク読みやすい1冊となっている。

◆閉会式
これにて秋の運動会は閉会とする。

どれもみな優秀で甲乙つけ難い結果となった。
文芸誌などは読み終わったら売りに出すなどして、少しでもスペースを確保するようにはしているが、またすぐ埋まってしまう。

競うものではないのは重々認識しているもの、読者の皆様は今節はどの1等賞を探しているだろうか。
競わずともあなただけの1等賞が見つかれば、それに越したことはない。

風邪には気を付けて、これにて失礼をば。

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