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『SOFTLY』が、家に届いた…… 山下達郎の新しいアルバムを買った動機。

 雨が降りそうだから「置き配」を避けたはずだったのだけど、その操作が十分でなかったのか、メールで「配送完了」のことを知り、玄関の引き戸を開けて、外へ出た。

 門のそば。柿の木の根元に、荷物が立てかけられていた。

『SOFTLY』が、家に届いた。

ラジオ番組

 毎週日曜日、時間が合えば、山下達郎のラジオ番組を聞く。

 毎週、“最高の選曲、最高の音質”が、枕詞のように繰り返されているのだけど、確かにそうなんだろう、と思いつつも、音楽に詳しくない私には、その「最高さ」を把握していないのだろうとも感じている。

 コロナ禍になってからも、大変な時代ですが、この時間くらいは少しでも楽しいひと時を、という言葉も何回も聞いた。そして、2022年には、山下達郎自身が約10年ぶりにニューアルバムを出す、という話も混じり始め、6月の発売が近づくと、番組自体が、その話題でいっぱいになることもあった。

 ミュージシャンが、新しいアルバムをリリースするときに、さまざまなメディアに多く出て、その販売促進に尽力する、ということは珍しいことではなかった。

 だけど、山下達郎はテレビには出ない。だから、その影響はどの程度になるのだろう、と勝手な話だけれども、微妙に心配する気持ちになった。

 それでも、さらに自分の都合なのだけど、今度のアルバムを買うつもりは、ほとんどなかった。

テレビ番組

 この番組は、音楽そのものを、専門家の言葉も通じて、かなり掘り下げてくれる時も少なくないので、日曜日の夜に穏やかな充実感を味合わせてくれる。

 その番組に、テレビに出ない山下達郎が、「声だけ」という特殊な方法でありながら、二週にわたって登場した。特に二週目は、50年近いキャリアでありながらも、今も音楽に対して、これだけ真っ直ぐに取り組んでいることがわかる言葉に触れることができ、それこそ、希望のようなものを感じたし、一緒に見ていた妻は涙を流していた。

 これまで様々なメディアで、山下達郎の話は聞いてきたはずなのに、そして、繰り返されてきた内容もあったはずなのに、とても新鮮に聞こえたし、気持ちに素直に入ってきた。

 それは、やっぱりすごいことだと思った。

新しいアルバムを買う動機

 その番組を見て、新しいアルバムを買う気持ちになったのだから、プロモーションとしては成功していると思う。

 ラジオ番組で聞いていたはずなのに、この時代にレコードやカセットテープの形式でも発売されるのも知り、それはかっこいいことだとも思ったが、買うときに、様々なバージョンがあったから、迷って、妻とも相談して、初回限定版CD(メガジャケ付き)を購入しようと思った。

 特典付きにしたのは、何か、新しいものを買った、という「しるし」みたいなものを欲しくなったのだろうし、どこかで、次のアルバムはないのかもしれない、という気持ちもあった。

 さらには、69歳で新しいアルバムを出すミュージシャンで、しかも質の高い音楽を作り続けていることに対して、シンプルに曲が聴きたいだけではなく、応援したい思いもあった。

 あとは、年齢を重ねても、きちんと商業的にも成功する、という前例になってもらえれば、こんなすごいプロフェッショナルと比べるのは失礼だけど、自分がもっと歳をとった時に、それでも、少しでも生きやすくなるかもしれない、というどこか計算のような考えもあり、注文した。

 そして、それから、しばらく経ってから、それは家にやってきた。

『SOFTLY』

 歳をとって、人間が丸くなったから、「SOFTLY」というタイトルにした、と山下達郎は、複数のメディアで語っていたと思うけれど、このアルバムに収録されている楽曲は、もっとも古い作品だと10年ほど前で、今の音になっていないから、リマスタリングした、みたいなことも話していたと思う。

 すでに、50年に近いキャリアなので、どの楽曲も似たような感じ、といった言い方を、謙遜を込めて、と思われるけれど、自ら話しているから、確かに「SOFTLY」になったと思うけれど、おそらく、音楽を制作することに対して、今も徹底しているはずだ。

シティ・ポップ

 日本の1970年代から80年代の楽曲が「シティ・ポップ」と呼ばれ、海外でも人気が出ているという話を聞いたのが、21世紀になってからだった。その代表的な存在が山下達郎だとも言われていたのだけど、自分も、思った以上に「FOR YOU」も聞いていたことを改めて思い出した。

 それは、レンタルレコード屋で借りたレコードを録音して、そして、その頃はサッカーをしていたので、その試合に向かう時に、誰かが運転してくれる車中で、山下達郎の音楽が流れていたのは確かだった。

 それから随分と時間が経って、シティ・ポップとして再評価されていると聞いたときに、「音楽として丁寧に完成度が高く作られているからではないか」と、音楽にそれほど詳しくなくても反射的に思ったのは、山下達郎の音楽の記憶とイメージがあったからだ。

 新しいアルバムも、その記憶やイメージと真っ直ぐにつながるものだった。山下達郎の音楽が聞こえてくると、気持ちのいい時間と空間になる。

 初回特典の2枚目のCDは、ライブを収録したものだった。それは「サンデー・ソングブック」の放送1500回を記念した開かれたもので、そこに行きたくて、申し込んで、はずれたことを思い出した。

 特典のメガジャケも、写真で見るよりも、いい感じのものだった。




(他にも、いろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでもらえたら、うれしいです)。



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おちまこと
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