社会が提供すべきなのは、「マスクのない卒業式」だったのだろうか?
実際のコロナ感染状況と感染死者数を見れば、決して収束しているとは言えないが、その事実と、社会の空気は必ずしも一致はしていない。
これは、2023年の1月。コロナ感染死者数が過去最多を更新していた頃の記事なのだけど、でも、そのときでも、健康で老いていない人たちにとっては、気持ちとしては、もう「コロナ明け」になっている感触があった。というよりも、もうコロナは終わっているのに、といったいら立ちのようなものまで漂っているようだった。
この記事↑の中で挙げられている「医療機関や高齢者施設」と、「それ以外の世界」は、健康で老いていない人たちの意識の上では、すでに、「パラレルワールド」のようになっているように思う。
マスクを着用しないのが基本
この言葉は、2023年の2月に、「5類移行」を決定したあとの、岸田首相の発言だった。
もちろん、どんな表情で語ったのかは知らないので、詳細は断言できないものの、この「マスクをはずした卒業式」は、これまでコロナ禍で様々な我慢を強いてきた子どもたちへの「プレゼント」のような意識があったのではないか、と思った。
コロナ禍の中でも、マスク着用が法的に義務化されたことは、日本の場合は、一度もなかった。だから、本当は、「マスク着用を個人の判断に委ねる」という方針は、何も言っていないのに等しいのだけど、それ以前に「卒業式では、マスクを着用しないことを基本としたい」と表明することによって、マスクをしないことを忖度させる流れになっているように感じた。
その反応も様々で、当然だけど、その「マスクをしないのが基本」という言葉が、両手をあげて歓迎されたわけではないようだ。
私自身は、子どももいないし、自分が卒業式に出るわけでもないから、ほぼ無関係な人間にとっては、どうして、教育の現場に、これだけ政治が関わろうとするのだろうと、違和感があった。
卒業式
そして、2023年3月になってからは、実際に卒業式が各地で行われるようになった。
当事者であれば、マスクをしてる・してないばかりが過剰に注目されるようなことは、おそらく本意ではないのだろうけど、そういう報道が、やはり目立った。
こうした、卒業を祝うというよりは、その動向を監視されるような卒業式になったのは、もしかしたら、卒業生も、保護者も、教育者も不本意だったかもしれないけれど、そうした状況を招いてしまったのは、マスクに関する政府の方針が打ち出されたのが原因になったのは間違いない。
一斉休校
この3年間を改めて振り返ってみると、コロナ禍になってから、最初に大きく教育現場に介入が行われたのは、2020年の2月だった。
一斉休校が、突然、首相から要請されたのだった。
この時の混乱は、自分が直接的に関わらなかったので、本当の意味で、その大変さはわかっていなかったけれど、子どもが学校を休んだり、保育園にも預けられなくなって仕事を休んだり、勤務時間を変えたりした人の話は、間接的に聞いていた。
どうして、こんなことが、突然、おこなわれたのだろう。
感染拡大防止のため、と言われていたが、本当に効果があったかどうかについて、国によって、正式な分析や検討がされた、という話を今も聞いたことがない。
この人は、一斉休校のことを、こう語っている。
学校の教師という立場からは、「一斉休校」については、こんな言葉も残されている。
「一斉休校」の検討
その「一斉休校」の目的は、コロナ感染拡大の予防のため、ともいわれていた。
ただ、その約1年後には、こんな指摘もされている。
これが事実であれば、「一斉休校」の意味について、改めて問い直してもいいのだけど、その政策を行ったはずの政府から、そのことについて、検討も、反省するような言葉も、聞いた記憶はない。(私が知らないだけなのだろうか)。
この記事も、「一斉休校」から、約1年後に書かれたのだけど、この著者は、同じ記事で、こうした提言もしている。
繰り返しになるけれど、そうしたことはおこなわれることはなく、その後を引き継ぐ首相たちからも、説明の言葉が、聞かれることはないままだ。
行事の中止とオリンピック
2020年にコロナ禍が始まってしまい、一斉休校があり、緊急事態宣言も出され、さまざまな学校行事も中止になった。夏の甲子園が戦後初めて中止になったりもした。
授業がオンラインに移行したり、と様々な変化があったが、コロナ禍になってから1年ほどの、2021年の冬の段階では、年長者から「青春を奪われている」と言われることへの違和感を表明する、若い世代の言葉を知ったこともあった。
ただ、その後、1年以上もコロナ禍が続き、緊急事態宣言下でもオリンピックが開催される頃から、さらに様相が変わってきたような印象があった。
この記事は、2021年8月なのだけど、そのことに関しての高校生の声も紹介されている。
緊急事態宣言下でのオリンピックは、異例中の異例のはずだったし、もちろん批判もあったものの、結局は、オリンピックは開催された。
東京オリンピック以降、感染者は急増し、自宅療養で入院できず、亡くなる方々も増えた。
だが、そうした感染拡大に対しても、オリンピック関係者から、こんな強気の発言↑があっただけで、ここまでしても、オリンピックは開催され、比べることもできないほど規模が小さい学校行事が中止になったことへの納得のいく理由は、今も伝えられていないし、説明される気配もない。
このままで、いいのだろうか。
長引くコロナ禍
おそらく、非常事態も、1年なら我慢もできたかもしれないが、いつ終わるかわからないまま、2年が過ぎると、その苦痛は耐えられなくなってくるのでは、ないだろうか。
しかも、現状について、今後のことについて、合理的に検討され、修正され、もし、誤りがあった場合は必要ならば謝罪もし、協力に対しては感謝も伝えるような、日本に住む人間全てに語りかけるようなリーダーの姿は、一度も見た記憶がないまま、時間が過ぎた。
そうした言葉がないと、ただ、やみくもに、我慢を強いられているような気持ちにならないだろうか。
この記事は、2022年2月の記事だが、その時も、こんな証言がある。
そうした声に対しての反応も、2022年2月の、この記事の中で紹介されている。
学校の行事が中止になったのだが、それに代わるような体験などを、大人の一人である自分自身にも責任はあるのだけど、社会は本気で用意しようともしないまま、時間が経った。
今回、過去の記事を、少し検索しただけなのに、それだけでも、若い世代が、行事などが中止になったことで、思った以上の、無念さや悲しさや怒りなどがあったことが、ほんの少しだけど、わかった気もした。(関係者でも当事者でもないので、想像することしかできないけれど)
そして、2020年に中学や高校に入学した学生にとっては、一斉休校から始まって、学校行事もほとんど行われたことがないまま、2023年の3月に卒業を迎えることになる。
そんな時に、急に、まるで「いいこと」をしているかのように、「卒業式では、マスクをはずすのが基本」などと言われても、それに、素直に従う気持ちになれないのも当然かもしれない。
若い世代に伝えたいこと
新型コロナウイルスが世界的に広がり、当初は、何もわからない状態から、どうやら感染しても、若くて健康であれば、無症状、もしくは軽症で済むことが比較的、早い時期に明らかになった。
だから、その後、特に若い世代の人たちが、マスクをしている姿を見て、自分自身の感染を防ぐというよりは、自分ではない誰か、特に高齢者や持病を持つ人たちに感染する確率を少しでも下げるための行為だと思っていた。
それは利他的な姿に見えた。
さらには、ワクチン接種も、若いほど、副反応が強いと言われていたにも関わらず、大部分の若い世代もワクチン接種を実施した。それは、マスクと同様に、自分たちが感染した時のためだけではなく、やはり、感染拡大予防に協力する意志があるためだと思っていた。
それも、やはり利他的な行為だと思っていた。
だから、マスクをしたり、ワクチン接種をしていた若い世代のおかげで、感染拡大が抑えられていた可能性も高いので、それに関しては、今も感謝する気持ちがあります。
私のような無力で、何もできず、何も持っていない人間に、こうした場所で言われても、かえってむかつくかもしれないけれど、それでも、とてもありがたいと思っています。
特に、この3年間、感染拡大予防に協力していただきまして、本当に、ありがとうございました。
リーダーが若い世代に伝えるべきこと
基本的には感染拡大の予防のために、学校行事は、次々と中止になってきたはずだった。
それは、2020年の一斉休校から、変わらない方針だと思う。
だからこそ、その対策が、感染予防に対して、どれだけの効果を上げたのか。もしくは、思ったよりも効果的でなかったのか。
そうしたことに対して、科学的な分析に基づいて「丁寧に説明」をした上で、協力したことへの感謝と、さまざまな我慢や無念を味わわせてしまい、学校行事を中止にして、その代わりになることを用意もできなかったことへの、心からの謝罪を伝える。
それが、2023年のコロナ「5類移行」を前にして、国のリーダーが、日本に住む全員に向けて、やるべきことだと思う。
今になって、そうした話をしても、この3年間で失われたものが戻ってくるわけではない。それに「5類移行」を前にして、他にもやるべきこと、伝えるべきことは多くあるとしても、それでも、若い世代には、「マスクがない卒業式」といったことを方針として打ち出すよりも、こうした言葉を伝える方が重要だと思う。
このままだと、若い世代が、自分たちより歳が上の大人だけではなく、高齢者への怒りにも結びついて、より分断が進んでも、おかしくはない。
感謝と謝罪。
こうした基本的なことを伝えることが、非常時ほど重要ということは、政治家という、人の社会を動かしていく人間ほど、本当は知っているはずなのだから、こうしたことをきちんとおこなえば、それを実行した分だけ、国民の支持も受けると思う。
国のリーダーは、自分の影響力を、正しく使うべきではないだろうか。
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