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郷愁 ペーター・カーメンチント
「やがて、花で色どられた、黄色がかった牧草地が、四方八方から、山の上に向かってひろがってゆく。雪の山頂と氷河は、高く清く神々しくそびえ、湖は、青くあたたかくなり、太陽と空ゆく雲を映す。こういういろいろなものは、すでに幼年時代を満たすに足り、場合によっては一生涯をも満たすに足りる。なぜなら、そういうものはみな、人間の口びるにいまだかつてのぼったことのないような神のことばを、声高く、ゆがめずに語るからである。」
セガンティニの雲がためらいがちに憧れながら誇らしげに揺れる。雲を仰ぐ美しい少女を見つめるペーターカーチメント。
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「死は、きびしく見えはしたが、迷った子を家へ連れもどす慎重な父親のように、力強く、またやさしくもあった。死は、私たちの賢いよい兄弟であって、潮時を心得ているのだから、安心してそれを待っていればよいのだ、ということを私はとつぜんまた悟った。」
彼を取り巻いた3つの死。母の死、親友リヒャルトの溺死、身障者のボピーとの終末。彼の魂も時間と永遠の間で不変を求め揺れ与うるより多くを受け取る。
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環境と人格形成の関わりを深く観ることを覚える、聖フランシスと雪山、イタリアでのペーターカーチメントの顔はそれぞれ違う。今観えてるものは本の一部分で全てじゃないこと。
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存在の苦悩を理解し表現してくれるようだった私の郷里の月や海や島。
例えば、その一つであるかのように無言の身体と呼吸で凪ぐ海のような”郷愁”を差し出すのが救いで天職であればいいと願ったことをヘッセに屈託無く打ち明けたいな。早朝の霧に霞む秋に色付いた山を礼拝しながら、そっと偲ぶ。
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