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クズの猟犬

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青年誌に載ってるような近未来的ファンタジーを書いてみたくて、漫画のような展開で書いています。
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2022年11月の記事一覧

【短編】クズの猟犬⑩ 最終回

【短編】クズの猟犬⑩ 最終回

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心臓が動いている。俺の胸からはもう感じられない鼓動を感じる。ゆっくりと鼓動のスピードが落ちていく。右手に体温を感じる。
「高木。人間には、心臓と同じように体温がある。お前はもう、体温なんて忘れてるだろうけど、そのあったかさとか奪う権利なんか誰も持ってねーよな?」
高木の目からボロボロ涙がこぼれている。体は心臓を修復しようと動いている。
「…嫌だ。」
「うん?」
「負けるのが嫌

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【短編】クズの猟犬⑨

【短編】クズの猟犬⑨

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高木はどちらかといえば目立ちたがりだった。でも、人気者になりたいというわけではないようだった。学食の窓際の席で大盛りにしたカレーを食べながら、他の席にも聞こえるような声でバカな話をする。そんな奴だった。

永遠に再生できる体はエネルギーがいるんだろうか。そんなことなら大盛りを食べていたのも頷ける。
「ハム、この前死んだと思ったんだけどな。」
胸を撃ち抜いても腕を吹き飛ばして

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【短編】クズの猟犬⑧

【短編】クズの猟犬⑧

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脳からの命令を左肩、左腕、左手に伝わるようにするために、俺は一度、麻酔で眠らされて、8時間に及ぶメンテナンスを受けた。
目が覚めたのは実験室で、大学の学食で吹っ飛んでから初めて目が覚めた日と同じ部屋だった。
「気分はどう?」
あの時もこんな声がした。視界がはっきりしてきて澤田の顔が見えた。
「キミちゃーん。聞こえる?」
「…ん?」
「ちょっと、まだぼーっとするね?」
「……終

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