つやさん【創作物語・詩】

駄文を書きます。

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最近の記事

【創作BL物語】真沙と悠一郎の話【3,400字程度】

木漏れ日が揺れる昼休み。 春の陽気にモンシロチョウが舞う。 四宮悠一郎は中庭にあるベンチで読書をしていた。 「それ、面白い?」 唐突に声をかけられ視線を文字の羅列から外すと、セミロングの女子…いや、男が目の前に立っていた。 名前を思い出せず一瞬戸惑う。 容姿はインパクトがあったから覚えている。同じクラスの奴だ。 「木戸内真沙だよ。同じクラスの。四宮悠一郎だよな?」 「なんか用?」 読書中の人間には普通話しかけるの遠慮しないか? と悠一郎は思うが木戸内は気にもしな

    • 【物語】カナンルールの影【700字程度】

      星の塔の上にカナンルールはいる。 「こんな高いところ落ちてしまったら、ひとたまりもないよ。」 ボクはカナンルールに注意する。 「何を弱気になっているのさ。ほら!遠くでホタル魚の群れが黒い水面を跳ねてる!綺麗だなぁ!」 「こんな場所じゃなくたってホタル魚は見られるよ!ボクは帰りたいよ…。」 「うるさいなぁ、帰りたきゃ1人で帰りなよ。僕の影なら少しは根性を見せろ。」 ボクはカナンルールの影。 だからカナンルールといつも一緒。 こんなやり取りはいつものことだ。 「ほら!来たぞ!僕は

      • 【物語】フルーツ【1,200文字程度】

        友達がくれたキーワードで文章を書く。 友達「フルーツ」 少女達の楽園と呼ばれる庭がある。 これはとある人形作家の邸宅で、その家主である人形作家は生涯、少女の球体関節人形を作り続けた。彼女は永遠の少女性をテーマに人形を作り続け、自身もまた、さながら少女のように、老いても、死の間際でさえ、ゴシックロリータのドレスを纏い生涯の幕を閉じた。 その彼女がこう言ったのは、私が彼女の人形を迎え入れたときのことだ。 「少女とはフルーツの様だと思うわ。」 彼女は自身の作った人形達のことを決し

        • 【物語】犬【1,000文字程度】

          犬が言うからには、カンカン帽が似合うんだそうだ。 「日が照っているだろう?ソバカスが出来るのさ」 その毛むくじゃらの顔の下にソバカスが出来たところで誰が気づくだろう? 私はそう思ったけど、口は災いの元と思い、なにも言わなかった。 どうして、私がカンカン帽をかぶった犬と赤い寂れたベンチで話をしているのか、というのはかれこれ、3時間も前に遡る。 私は赤い寂れたベンチで日光浴をしていた。 要は何もしていなかった。 初夏の日差しが私の思考を白くする。 久しぶりに顔を出したクリニックの

          【物語】ドウダンツツジとボク【400字程度】

          ボクの町にはあちらこちらにドウダンツツジが植えられている。  春、暖かくなってくると、白い鐘のような花をつけるんだ。 控えめな甘い香りが漂う。 ボクはこの香りが大好きなんだ! 深呼吸する。 息を吐いて、目を閉じる。 春風にドウダンツツジが揺れる。 ほら、よく耳を澄ましてみて。 リンリーンと小さな小さな音色が聴こえるでしょう? ドウダンツツジが小さな音楽を奏でているんだ。 通りすがった薄紫色のシジミチョウが音色に合わせて口笛を吹いていたのを見たよ。 春の淡い青空にドウダンツツジ

          【物語】ドウダンツツジとボク【400字程度】

          【物語】アマガエルさんと虎猫さん【900字程度】

          石畳を雨がてらてらと濡らす。 道の両脇を紫陽花が鮮明に彩る。 灰色の空の下では唯一色彩灯るのは紫陽花だけだった。 いつもの石畳の道を占領して寝転がっている猫達の影もない。 そこへアマガエルが一匹、フキの葉を傘にペタペタと歩いていく。 フキの葉の端には逆さまのてるてる坊主がぶら下がっていた。 アマガエルはご機嫌なようすで、鼻歌を歌いながら散歩を楽しんでいるようだった。 黄色いジャケットのポケットからスマホを取り出すと、紫陽花の上をのんびり行く小さなカタツムリをスマホで写す。 満

          【物語】アマガエルさんと虎猫さん【900字程度】

          【百合物語】苺口紅【500字程度】

          女学生が2人、授業の間の休み時間に校舎のベランダで戯れている。 「ねぇ、貴女の唇、リップか口紅塗ってる?」 「うふふ、何も塗ってないよ」 「でも、とっても綺麗な赤色よ」 「うーん、苺を食べたからかしら?」 「苺を食べると唇が綺麗な赤色になるの?」 「さぁ、どうだろうね」 「まぁ、適当なこと言ったのね。本当は口紅を塗っているのでしょう?」 「校則違反って言いたいのでしょう?風紀委員さん」 「私はそんなに口うるさくないわよ」 「嘘か本当か試してみようか?」 「え?」 肩に手を置く

          【百合物語】苺口紅【500字程度】

          【詩】秒針の舌打ち

          心のままに 自由に振る舞えたら良いのに。 「~すべき」とか「~しなければ」 と雁字搦めにして、 息をして生きている。 浅い息をして生きている。 ああ、ほら、もう時間に追われている。 秒針が舌打ちしてる。 それに怯えては、急き立てるように、 準備をして、今日を「ちゃんと」生きなくちゃってぐるぐるジレンマ。 いつからこんな風になったんだろう? 朝の光が苦しい。 行きたくないなぁ 面倒臭いなぁ 辛いなぁ の三拍子。 こうしてる間に時間が追いかけてくる。 逃げなくちゃ、急がなくちゃ

          【物語】駄天使2【500字程度】

          「ここは…?」 私についてきた天使はキョロキョロと見渡す。 「私の家よ。古いけど、立派でしょ?」 玄関前に立ち、カラカラと戸を開けると、私は大きな声をあげる。 「おばあちゃん!ただいま帰りました!」 すると、奥の方から返事が帰ってきた。 「はーい。お帰りなさい。美音。」 声の主は、白髪の小さなおばあちゃん。ニコニコと愛嬌があって、割烹着を着てでてきた。 「おばあちゃん、今日ね、走っていたら、天使と出会ってね、連れてきたんだけど、良かったかな?」 天使は私の後ろに隠れてもじもじ

          【物語】駄天使2【500字程度】

          【詩】微睡みの中に

          間延びした時間が頭に霞をかける 目を閉じるのも億劫 何時間そうしていただろう 霞の中を、小さな魚影達が泳ぐ それを白鷺がつついている ほーい、ほーい と鳥が鳴いているのか 誰かが呼んでいるのか ねぇ 明日は雨らしいよ ふいに少女の高い声がした 草の芽は光に向かってのびる 私はそれをたくましいと思った ねぇ もうお休みよ 少女の声が耳元で聞こえたから 眠らなくちゃ 秒針が静かに廻る

          【物語】僕の観葉植物【700字程度】

          僕の観葉植物が語りかける。 「今夜は満月かしら?それとも星が瞬く新月かしら?」 彼女はよく喋る観葉植物だ。 僕の妄想の産物ではなくて、実際そうだ。 女性の頭部に赤い瞳、薄い唇をもって、こめかみ当たりから小さな新緑の枝が生えている。セミロングの髪のような根を持っていて、盆栽用の鉢に水苔を敷き詰めて管理している。 「うーん。もうすぐ満月ってところかな?」 僕は窓から覗いて白い月を見上げる。 「月が見たいなら、窓際に連れていくけど?」 僕がそういうと、 「いいえ、私は重いもの。」

          【物語】僕の観葉植物【700字程度】

          【物語】駄天使1【900字程度】

          朝焼けに染まる午前4時30分。 その反対側の空はまだ夜の余韻と影が路地の隅々に隠れていた。 白いランニングシューズが軽快にアスファルトを蹴る。 私は日課のコースを走る。 安定した息でテンポ良くスピードを崩さない。 私は夜の余韻と新鮮で澄んだ朝の空気が好きだ。 前だけを見て走っていると、 「ねぇ!」 不意に声をかけられた…気がした。 「ねぇってば!」 否、頭上から声がする。 ハッとして私は足を止める。 真っ白い天使が、そこには居た。 平和の象徴の白い鳩のような真っ白い翼、朝日に

          【物語】駄天使1【900字程度】

          【物語】グレープサイダー【700字程度】

          憂鬱な朝だ。  朝食の席にはパンにピーナツバター  昨日見た悪夢のような色のグレープサイダー  向かいの席には最愛のテディベアが座っている。  もちろん、「2人分」の朝食を並べて、  僕は僕の分を食べ終え、親指についたピーナツバターを舐めとる。  そして、グレープサイダーを飲み干すと、テディベアの席の朝食分を捨てる。  これは、僕にとって儀式だ。  何度と繰り返す「悪夢」を忘れないための儀式。  彼女はこの5階のマンションから飛び降りて死んだ。 「私を忘れないでね」  とい

          【物語】グレープサイダー【700字程度】