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【物語】カナンルールの影【700字程度】



カナンルール
カナンルールの影(ボク)

星の塔の上にカナンルールはいる。
「こんな高いところ落ちてしまったら、ひとたまりもないよ。」
ボクはカナンルールに注意する。
「何を弱気になっているのさ。ほら!遠くでホタル魚の群れが黒い水面を跳ねてる!綺麗だなぁ!」
「こんな場所じゃなくたってホタル魚は見られるよ!ボクは帰りたいよ…。」
「うるさいなぁ、帰りたきゃ1人で帰りなよ。僕の影なら少しは根性を見せろ。」
ボクはカナンルールの影。
だからカナンルールといつも一緒。
こんなやり取りはいつものことだ。
「ほら!来たぞ!僕はこいつが来るのを見たかったんだ。」
夜空の星座にワシ座がある。毎年のホタル魚の産卵の時期に合わせて、ワシ座降臨の日がある。星の煌めきをまとった巨大なワシが星座から実体化し、流星のごとく飛んでくる。巨大なワシは宙を跳ねたホタル魚をすくうように食べる。
僕らの町ではワシ座だけが降臨するけど、他の町ではイルカ座やウサギ座が降臨するらしい。
降臨日は夜市が開かれ、ちょっとしたお祭り騒ぎだ。何せ、今日ほど明るい夜はないのだから。
星の塔は星の煌めきを観察して、今年の豊作不作を占う、カナンルールのおばあちゃんの仕事場だ。
カナンルールはカメラを取り出すと、ピントを調節して、巨大なワシを撮影する。
写真は新聞屋に頼まれた、今日のカナンルールの仕事だ。ちょっとした小遣い稼ぎになる。カナンルールはこの町ではちょっとした有名人でよく頼まれ事をする。カナンルールはそれらを器用にこなし、小遣いを稼いでいる。
本分は、学生だ。
おばあさんとは2人暮らしで、両親を知らない。
「ワシ座が帰っていくよ!夜市に行こうよ!きっと美味しいブドウが売ってるよ」
「しょうがないなー。」
星の塔から降りると、僕らは夜市に向かった。広場では音楽が流れている。
長い夜はまだまだ終わらない。


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