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【百合物語】苺口紅【500字程度】

女学生が2人、授業の間の休み時間に校舎のベランダで戯れている。
「ねぇ、貴女の唇、リップか口紅塗ってる?」
「うふふ、何も塗ってないよ」
「でも、とっても綺麗な赤色よ」
「うーん、苺を食べたからかしら?」
「苺を食べると唇が綺麗な赤色になるの?」
「さぁ、どうだろうね」
「まぁ、適当なこと言ったのね。本当は口紅を塗っているのでしょう?」
「校則違反って言いたいのでしょう?風紀委員さん」
「私はそんなに口うるさくないわよ」
「嘘か本当か試してみようか?」
「え?」
肩に手を置くと、くいっと軽く引き寄せてくちづけをした。
沈黙が数秒流れる。
「…どうだった?」
「…どう、って…」
「口紅。つけてないでしょう?」
「…そうね。苺を食べすぎたせいなのね」
「ふふふ、そうね。ちなみに初めての感想は?」
形の良い真っ赤な唇に人差し指を当てて少女は微笑む。
「悪くないわ。でも、苺味ではなかったわね」
「それは残念!」
ふふふと2人は笑い合う。
「でも、キスは甘い苺のような時間だったわ」
「あら、お気に召したようで嬉しいわ」
チャイムが鳴る。
2人の少女は何事もなかったように次の授業の科目の話をしながら、教室に戻っていく。
どうやら次の科目は物理らしい。
~終わり~




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