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親切は幸福度を高める

他者に親切をすることで,親切をした人自身の幸福度が上がることを明らかにした論文があったのでメモ(1)。

親切をすると,他者にとっても自分にとっても心身ともにプラスの効果があることが分かっています。過去の親切のプラスの効果を調べた489件の研究を分析した結果では,性別や年齢,人種にかかわらずプラスの効果が得ることができることを示しています(2)。親切は具体的に以下のようなプラスの効果が見込めます。

・他の人のためにお金を使うと幸福度が高まる(3
・親切をすると,心臓の病気のリスクが下がる(4
・親切を数えるだけでも幸福度が高まる(5

このように親切は他者に実質的な利益を与え,ポジティブな感情を引き起こすだけでなく,親切な行為をした本人にとってもプラスの効果が期待できます。では意図的に親切をすることによってもプラスの効果を得ることが出来るのでしょうか?

今回紹介する論文はその答えを教えてくれます。

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2004年にカルフォルニア大学リバーサイド校の心理学者ソニア・リボミスキーらがは親切をすることが幸福感をどう変えるのかについて調べるために実験を行っています。  

実験の対象になったのは大学生150人でした。まず実験参加者をランダムに2つのグループに分け,該当する行動を実験期間の1週間の間に取ってもらいました。2つのグループの違いは以下の通りでした。

<グループ1> 
5つの親切を他人にする

<グループ2> 
親切をしない  

実験参加者が具体的に取った親切な行為は病気の親戚のお見舞い,献血や友達の宿題を手伝うことなどのさまざまでした。  

さて,実験期間である1週間の間,意図的に親切をすることはしていない場合と比較して変化はあるのでしょうか?

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実験の結果,親切を行ったグループ1は親切を意図的に行なったグループと比較して幸福感が高かった。

またそれぞれの性格を考慮をしてみてみると,外向的な人は感謝の意を示す訪問などに関して大きな恩恵を受けていた。一方で,内向的な人は他者と活発に関わる活動をすることで自分自身にプラスの効果を得ていた。

つまり,今回の実験から意図的に他者に親切をすることでも幸福度を高めることが出来ること,また自分自身にプラスの効果をもたらす活動は正確によって違うことが示されました。

また続く実験2では対面,電話やメールを通して他者に対して感謝の思いを伝える行為をした場合であっても幸福度の向上に違いがないことが分かっています。

親切をすることで幸福度が上がる理由としては,他者との関わりが生まれるからだと言われています(6)。

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(1)Lyubomirsky, S., Tkach, C., & Sheldon, K. M. (2004). Pursuing sustained happiness through random acts of kindness and counting one’s blessings: Tests of two sixweek interventions. Unpublished raw data.

(2)Curry, O. S., Rowland, L. A., Van Lissa, C. J., Zlotowitz, S., McAlaney, J., & Whitehouse, H. (2018). Happy to help? A systematic review and metaanalysis of the effects of performing acts of kindness on the wellbeing of the actor. Journal of Experimental Social Psychology, 76, 320-329. 

(3)Dunn, E., et al. (2008). Spending Money on Others Promotes Happiness. Science, 5870, 1687-1688.  

(4)Chancellor, J., Margolis, S., Jacobs Bao, K., & Lyubomirsky, S. (2018). Everyday prosociality in the workplace: The reinforcing benefits of giving, getting, and glimpsing. Emotion (Washington, D.C.), 18(4), 507–517.

(5)Emmons, R. A., & McCullough, M. E. (2003). Counting blessings versus burdens: an experimental investigation of gratitude and subjective wellbeing in daily life. Journal of personality and social psychology, 84(2), 377–389. 

(6)HoltLunstad, J., Smith, T. B., & Layton, J. B. (2010). Social relationships and mortality risk: a metaanalytic review. PLoS medicine, 7(7), e1000316.

■親切は脳に効く/デイビッド・ハミルトン (著), 堀内久美子 (翻訳)

■「親切」は驚くほど体にいい! /デイビッド・ハミルトン (著), 有田秀穂 (監修, 翻訳)

■精神科医が見つけた 3つの幸福 最新科学から最高の人生をつくる方法/樺沢紫苑  (著)

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