見出し画像

お金持ちは嘘をつきやすい

社会的に地位が高くなると行動面のデメリットが表れることを示した論文があったのでメモ(1)。

社会的に成功することで経済的な余裕や時間が手に入ります。しかし社会的に地位が高い人には感情面・行動面において以下のような特徴がみられることが分かっています。

・社会的に裕福で,地位が高い人ほど他人に対して注意を払う必要がなくなり,他人の感情を汲み取るのが苦手になる(2
・社会的に成功していて,収入が高い人は収入に対する寄付金額の割合が社会的地位が低い人よりも少ない(3

今回紹介する論文の最初の調査では,実際の交差点付近の車・歩行者の違反行動を取る確率は社会的な地位によって変わるのかを調べています。

調査の結果,社会的地位が高くなればなるほど,交差点付近の違反行動を多くとる傾向があることが分かりました。

続く実験では,嘘をつけるような状況を意図的に作り出し,社会的地位の高い人が不誠実な行動を起こすことが多いのかを検討しました。

画像1

2012年にカルフォルニア大学のパーク・ピフらが社会的な地位が高さと不道徳な行動の関連性を調べるために実験を行いました。

対象となったのはオンラインで応募した195名の男性でした。

実験参加者にはネット上でサイコロを5回転がしてその出た目の合計を他の参加者と競うゲームをしてもらいました。またゲームが始まる前に合計数が大きい人には実験参加の謝礼$50の他に賞金として別に「$50を差し上げます」と知らされていました。

しかし5回転がして出るサイコロの目は実験的に操作されていて事前に決められています。

<サイコロの出る目>
1-1-2-2-4

つまり5回分の合計は実験参加者全員12になるようになっています。サイコロを5回転がした後,自分で出た目の5回分の合計を報告してもらいます。サイコロの数の合計が12を超えているかどうかでその人物の人をだます程度を測定する指標として使いました。

その後信心深さ,政治の思想,欲深さ,不道徳な行動に対する態度などについての質問紙に答えてもらいました。

画像2

実験の結果,実験参加者の約15%(31/195)がサイコロのの合計が12を超えて報告していた。

サイコロの合計数が12を超えていた実験参加者の内訳を見てみると,社会的な地位が高くなればなるどサイコロの合計数をごまかして回答することが多かった。 つまり社会的地位が高くなるほど嘘をつきやすくなる確率が高かくなった。またこの嘘を報告するかいなかは実験参加者の「欲深さ」の高さからある程度予測することが出来た。

社会的に成功することは自分自身に多くの資源があるため,他者からの独立や自由になることを可能にし(4),他者に対して注意を払う必要がなくなる余地が生まれます(5)。

この他人に対する注意を払う不必要さが他者に対する気遣いの低下や共感能力の低下を招き,嘘をつくことで追加の金銭を得るなどの不道徳な行動を引き起こしたと考えられます。

逆に考えれば,他人のことを気にかけることなく自分のことを優先して物事を進めていく考え方は社会的に成功するうえで必要な1つの考え方と言えるかもしれません。

画像3

(1)Paul, K., et al. (2013). Higher social class predicts increased unethical behaviour. Proceedings of National Academy of Sciences, 11, 4089-4091.

(2)Schmalor, A., & Heine, S. J. (2022). Subjective Economic Inequality Decreases Emotional Intelligence, Especially for People of High Social Class. Social psychological and personality science, 13(2), 608–617.

(3)Independent Sector (2002). Giving and Volunteering in the United States (Independent Sector, Washington, DC).

(4)Kraus, M. W., Piff, P. K., Mendoza-Denton, R., Rheinschmidt, M. L., & Keltner, D. (2012). Social class, solipsism, and contextualism: how the rich are different from the poor. Psychological review, 119(3), 546.

(5)Fiske, S. T. (1993). Controlling other people: The impact of power on stereotyping. American Psychologist, 48(6), 621–628.

■悪いヤツほど出世する/ジェフリー・フェファー (著), 村井 章子 (翻訳)

■「権力」を握る人の法則/ジェフリー・フェファー (著), 村井 章子 (翻訳)

■ブラック職場があなたを殺す/ジェフリー・フェファー (著), 村井 章子 (翻訳)

画像4

有料マガジン「Posted Articles」では過去の有料記事をまとめています。 このブログでは投稿日から1カ月が経つと記事を有料にしています。このマガジンを定期購読すると有料になる記事+毎月公開される有料記事を月額¥500で閲覧することが出来ます。

画像5

ここから先は

0字
月に有料記事を5本以上読むのであれば,このマガジンを購読したほうがお得です。

Posted Articles

¥500 / 月

有料マガジン「Posted Articles」では過去の有料記事をまとめています。 このブログでは無料記事と有料記事を2つの種類があります…

Please support me if you like : )