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進捗がやる気を促進する

進んでいる感覚が物事のやる気を向上させるという趣旨の論文を読んだのでメモ(1)。

これまでの研究を見てみると,目標に向かってある程度の進捗を感じたときに,目標達成のモチベーションを高める傾向があることが分かっています。具体的な研究の例を挙げると以下のとおりです。

・学習時に途中で中断すると記憶が増強する(ゼイガルニク効果,2
・目標に近ければ近いほど,モチベーションが高くなる(3
・これ以上投資をしても利益が出ないのにも関わらず,今までの投資を惜しんで投資を続ける(サンクコストバイアス,4

このように物事にある程度の進捗が感じられると,目標まで向かう行動が促進され,時には大きな損失を出してしまうこともあります(4)。

2006年に南カリフォルニア大学のジョセフ・ヌネスが物事の進捗度合いとやる気の関係について調べるために実験を行いました。

実験の舞台は都市部の車の洗車場で,対象となったのは実験期間に洗車場の利用客でした。

実験参加者はランダムに2つのグループに分けました。その2つのグループとは,洗車の利用時に渡されるスタンプカードに違いがありました。

<グループ1>
8つのスタンプをためると1回の洗車が無料になる

<グループ2>
10個のスタンプをためる必要があるが,もうすでに2個押されている

そして実験期間である9ヵ月の洗車場の利用頻度を調べました。

実験の結果,8個用のスタンプカードを渡された利用者が無料の洗車まで辿り着いたのが19%でした。しかしすでに2個のスタンプがが押されていた利用者は34%に上りました。

また訪問する間隔の日数についても2個のスタンプがすでに押されていた利用者の方が平均2.9日間少ないという結果になりました。

そして,洗車に関連する商品の購入する間隔も2個のスタンプがすでに押されていた利用者の方が約0.5日少なかったとい結果になりました。

今回の実験では既に2個のスタンプが押されているスタンプカードは全くスタンプが押されていない場合よりも目標に向かって進んでいる感覚を持ち主に起こし,8個のスタンプを貯めるモチベーションを高めたと考えられています。

(1)Nunes, C., et al. (2006). The Endowed Progress Effect: How Artificial Advancement Increases Effort. Journal of Consumer Research,32, 504-512.

(2)Zeigarnik, Bluma (1927), “Über das Behalten von erledigten und unterledigten Handlungen,” Psychologische Forschung, 9 (1), 1-85.

(3)Hull, Clark L. (1932), “The Goal Gradient Hypothesis and Maze Learning,” Psychological Review, 39, 25-43.

(4)Arkes, H. R., & Ayton, P. (1999). The sunk cost and Concorde effects: Are humans less rational than lower animals? Psychological Bulletin, 125(5), 591-600.

■モチベ-ション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか/ダニエル・ピンク (著), 大前 研一 (翻訳)

■When 完璧なタイミングを科学する/ダニエル・ピンク (著), 勝間和代 (翻訳

■ストレッチ 少ないリソースで思わぬ成果を出す方法/
スコット・ソネンシェイン
 (著), Scott Sonenshein (著), 三木俊哉 (翻訳)

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