落書きは創造性を高める
手を動かすことで創造的にされる可能性があることを示した論文があったのでメモ(1)。
手を動かす行動は手遊びから落書きまでの一見意味がない行為を3つに分類できます。それは落書き(doodling),ものいじり(fidding)と手(足)を小刻みに動かすこと(fidging)です。これらの共通点は意識せずに身体的な運動が生じている点であり,明確なゴールが決まっていないことです。
過去の手を動かすことに関するプラスの効果について調べた研究を見てみると,以下のようなメリットが得られます。
・落書きは単調な課題の注意と記憶を向上させる(2)
・ものいじりは集中力を上げる(3)
・手を動かすことで悲しみや不安が減少する(4)
このように手を動かすことで集中力を高める,ネガティブな感情を抑制するなどのプラスの効果が期待できます。
今回紹介する論文は「落書き」が脳の血流量を高め,思考や創造性を刺激することを教えてくれます。
2017年にアメリカ・ドクレセル大学のギリア・カイマルらが落書きをしている時の脳の活動を調べるために実験を行いました。
実験の対象になったのは大人26名でした。
実験参加者には脳の活動を測定するfNIRSを頭につけ,3つのパターンで落書きを書いてもらいました。3つの落書きのパターンは以下の通りです。
<パターン1>
図形が書かれた紙に色をつけていく
<パターン2>
円の中に好きな絵をかく
<パターン3>
自由に絵をかく
そして,落書きを終えた後に自分自身の状態についての質問紙に回答してもらいました。このように描く絵に違いを設け,手の動きの違いによって脳の活動が変化しているのかを比較しました。
実験の結果,どのパターンの落書きをした場合であっても脳の思考や創造性と関連のある前頭前皮質への血流の増加が見られた。3つの落書きのパターンの中でも特に円を描いたときに最も脳の血流量の増加が確認された。
また実験参加者に対して行った質問紙では,自己申告ですが問題決能力と創造性がが高まりを感じたと報告した。
落書きなどの連続的に指を動かす運動は言語やワーキング・メモリが関わる,脳の大きな領域を活性化すること(5),明確がゴールが設定されていないことで,脳の状態がデフォルト・モード(リラックス状態)に切り替わること(6)が創造性に関連があることが分かっています。
人間の感情や知覚は身体の状態によって変わるため,一点に集中するパソコンの作業から離れ,外部のペンやおもちゃとの相互作用がより生産的な,創造的な思考を可能にすると考えられています。
参考までにおすすめの「FIDGET WIDGETS(ハンドスピナーのようなおもちゃ」を載せておきます。
(1)Kaimal, G., Ayaz, H., Herres, J., DieterichHartwell, R., Makwana, B., Kaiser, D. H., & Nasser, J. A. (2017). Functional nearinfrared spectroscopy assessment of reward perception based on visual selfexpression: Coloring, doodling, and free drawing. The Arts in Psychotherapy, 55, 85-92.
(2)Andrade, J. (2010). What does doodling do?. Applied Cognitive Psychology: The Official Journal of the Society for Applied Research in Memory and Cognition, 24(1), 100-106.
(3)Mason, M. F., Norton, M. I., Van Horn, J. D., Wegner, D. M., Grafton, S. T., & Macrae, C. N. (2007). Wandering Minds: The Default Network and Stimulus-Independent Thought. Science, 315(5810), 393–395.
(4)Seo, M. G., Barrett, L. F., & Bartunek, J. M. (2004). The role of affective experience in work motivation. Academy of Management Review, 29(3), 423-439.
(5)Bounds, G. (2010). How handwriting trains the brain. Wall Street Journal, 5.
(6)Schott, G.D. Doodling and the default network of thebrain. The Lancet 378, 9797 (2011), 1133–1134.
■6つの帽子思考法 ――視点を変えると会議も変わる/エドワード デボノ (著), 川本英明 (翻訳)
■イノベーション・シンキング/ポール・スローン (著)
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