松下幸之助と『経営の技法』#132
6/26 客の後ろ姿に手を合わす心がけ
~親切で、うまくて、早くて、客を大事にする店に、人は寄りつく。~
うどんの値段は同じであっても、客を大事にしてくれる店、真心こもった親切な店には、人は自然に寄りついてゆく。その反対に、客をぞんざいにし、礼儀もなければ作法もない、そんな店には、人の足は自然と遠ざかる。
客が食べ終わって出ていく後ろ姿に、心底、ありがたく手を合わせて拝むような心持ち、そんな心持ちのうどん屋さんは、必ず成功するのである。
こんな心がけに徹したならば、もちろん、うどんの味もよくなってくる。一人ひとりに親切で、一杯一杯に慎重で、湯加減、ダシ加減にも、親身の工夫がはらわれる。
その上、客を待たせない。たとえ親切で、うまくても、しびれが切れるほど待たされたら、今日の時代では、客の行為も続かない。客の後ろ姿に手を合わす心がけには、早く早くという客の気持ちが伝わってくるはずである。
親切で、うまくて、早くて、そして客の後ろ姿に手を合わす――この心がけの大切さは、なにもうどん屋さんだけに限らないであろう。お互いによく考えたい。
(出展:『運命を生かす』~[改訂新版]松下幸之助 成功の金言365~/松下幸之助[著]/PHP研究所[編・刊]/2018年9月)
1.内部統制(下の正三角形)の問題
まず、社長が率いる会社の内部の問題から考えましょう。
感謝の気持ちは、松下幸之助氏がよく触れるポイントです。その中でも、ここでは、感謝の気持ちがあれば、商品の品質やサービスのスピードが上がる、としています。
これは、前日の6/25の金言#131でも指摘したように、「PDCA」「カイゼン」「QC活動」「シックスシグマ」等に通ずるものです。すなわち、一人ひとりの客の好みに合わせるために常に心を配ることが、商品やサービスの改善につながっていくのです。
このように見れば、前日に検討したような、組織の柔軟性やスピードを高めていくことの重要性が、今日の金言にもあてはまることになります。
2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
次に、ガバナンス上の問題を検討しましょう。
投資家である株主と経営者の関係で見た場合、経営者自身にこのような意識を持ってもらうことの重要さは当然のことですが、さらに、この意識を会社従業員に浸透させていく能力も、経営者の重要な素養として注目する必要があります。経営者だけが熱心で従業員が白けているようでは、せっかく上記のような効果が期待できる施策も、全く実施されず、反映されないことになるからです。
企業風土なども、会社経営の重要なツールですので、感謝の気持ちという立派な心構えを確認するだけでなく、経営者としてそれをどうやって従業員に浸透させていくのか、その方針や実施可能性などについても話を聞き、経営者としての資質を見極めることが重要です。
3.おわりに
気持ちも大事ですが、松下幸之助氏の言葉で見落としていけないことは、その気持ちを気持ちだけで終わりにしない点です。
すなわち、気持ちだけで実が伴わない、卑屈な態度ではなく、気持ちを少しでも形にしようと、品質の向上やサービスのスピードアップを工夫し続ける具体的な行動の方にこそ、価値があるのです。気持ちが大事ですが、それだけで「願えばかなう」と言うほど、松下幸之助氏は甘くありません。理想主義者ではありますが、現実主義者であり、合理主義者だからです(と、私は思います)。
どう思いますか?
※ 『経営の技法』の観点から、一日一言、日めくりカレンダーのように松下幸之助氏の言葉を読み解きながら、『法と経営学』を学びます。
冒頭の松下幸之助氏の言葉の引用は、①『運命を生かす』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に了解いただきました。
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