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かめやす
2024年9月2日 07:39
明るい日差しに取り囲まれて、少し翳りゆく時の、物体に当たる影の形、その床に伸びた影の形。俺は日差しの角度が少し変わったことに気づいていた。茹だるような夏は永遠に続くように思っていたけれど、祭りに終わりがあるように、やはり秋は来る。秋は祈りの季節だ。収穫物に感謝を捧げ、豊作を願う。
2023年12月9日 11:57
地の底を這うような音が聞こえる。それから乾いた音で鐘が鳴る。ふとそれが、滅びの歌のように聴こえる。風が地を這い、唸りをあげて地面を撫でるような。まるで地鳴りのような。僕は全ての神々について思った。それらに仇なす人々が、命と引き換えに怒られるんだと思っていた。でもそれが何故だか少し、嬉しかった。
2023年9月1日 20:28
公園のブランコではしゃぐ夜の子供たち闇の中で翼を広げる夜に飛ぶ天使キスは甘く柔らかく肺の中に血を広げる鉄錆の匂いをさせてふくらはぎの辺りまで甘く痺れて恍惚としてくる
2023年5月15日 13:48
駅前のホールにいた。空間の中にぽつんと置かれたピアノ。その前に一人の人が座り、ピアノを弾いている。鍵盤から放たれる、宗教的な調べ。祈りと光とを合わせ持って、生まれ出る闇を柔らかく拭い去るような。光は天から落ちてくる。速度を緩めて、今また柔らかく翻り、飛翔していく。光の翼になって。波のさざめきを聞いていた。きらめく光は、虹色になって消えた。海は遠かった。
2023年5月2日 23:46
日の暮れ近く夏の過ごし方を思い出す宵闇を月が明るく照らす昼間のうちに見る夢で白昼堂々やって来た遠雷はトタンの屋根を激しく叩いた宵闇 月明かりの中真昼の夢は背後に隠れた二人を明るく照らすのは降り注ぐ一粒一粒の雨それらのすべてが星になり流れて 宇宙の塵になる
2023年2月8日 21:45
手放す時の空は明るい手を離した空は青い夜はただ青くて冷たくて張り詰めていて美しい
2022年11月14日 05:21
悲しみを押し留めなければ自然に涙が溢れる東雲近くあなたの寝息を聞けば孤独は感じない明け初めし夕暮れはあるいは 世界の終わりかも
2022年9月10日 21:45
白檀の匂いを嗅ぐと、その煙の流れに沿うように、廻る法輪を思い描いてしまう。甘やかな匂いの中に、薄っすらと苦痛すら感じるものだ。その気配をいつも、罪深いと思っていた。静けさの中に、蠱惑の誘い。幾度罪を重ねても、止められるものではなかった。
2022年8月6日 18:58
夏の午後の光の中で 永遠に時が止まったようになる。彼女の輪郭は揺らいで 震える睫毛の上に 時が凍っている。彼女の笑顔は柔らかく失われていく。はにかんだ頬の上に。永遠に時が止まり 彼女はひとつの彫刻になった。幾つ時を重ねても 彼女の笑顔は 戻りはしない。自然に溢れる 時の流れを感じている。緩やかな 祈りの上に。
2022年6月6日 15:40
埃っぽい砂地にうずくまり私は終わりの時を待っている天から夢のような日々が降り注ぎ全てが青に紛れ虚空に吸い込まれていくのを横たわり見ている。遠くに聞こえている空から空から降りてくる――神の声が。舞い降りる白い花びらのように。薄青い地平線に目をやっていた砂漠の砂は、白いままだった。
2022年5月23日 15:03
静寂が肺を満たす。静かに寄せては返す波の向こうに、私は昨日の夢を夢見ている。波はまだない。時は止まっている。凪いだ岸辺に、舟が一艘泊まっている。明日は風が吹くだろう。その時にまた、私は岸を離れるだろう。舟を漕ぎ、一人沖へ向かって、名も知らぬ何処かへ旅に出ようとするだろう。すべてのものには名前はまだない。まだ、今のところは。
2022年5月14日 04:37
弛緩しきって降り立つ場所を探す時もうすぐ先に限界はある筋肉の繊維のひとつひとつをひび割れた細胞の欠片を思う金属質の唸るような風切り音に紛れて大停電の夜は続く夜も明けきらぬ 眠りも覚めぬ頃風の中で錐揉みに揉まれて舌の上に広がる極上の味を天罰と受け取って果てに向かって 飛ぶ
2022年5月7日 18:24
海岸沿いに立ち尽くして 果てのない夜の旅砂に埋もれる足の指果てはない けぶる夜の彼方夕闇色の気配を纏って 裾から覗いた踝の硬い骨淡い骨の色を辿って あてのない旅に出る耳の奥に残っていた 夕まぐれの風を切り裂いて身体は前へ飛んでいくもっと遠く 果てのないところへ宵闇を切り裂いた夜の風 引き裂いて肌に纏えばいつまでも胸の奥で 澄んだ音で鳴る風の色ひとつ残らず掴んで 今はただ風に
2022年5月6日 22:47
柔らかかった涙の味は柔らかかった紫陽花に降る雨濡れた葉の上に光るしずく水滴は雨樋を伝って 静かに流れていく向こう見ずな海岸線 振り返っても誰もいなかった空はぼんやりと曇って舌の先が痺れた今日は海に抱かれる夢を見て塩辛い眠りの中明日は素肌の上 名も知らぬ魚と泳いでいる遠くまで 君と……