静寂が肺を満たす。静かに寄せては返す波の向こうに、私は昨日の夢を夢見ている。
波はまだない。時は止まっている。
凪いだ岸辺に、舟が一艘泊まっている。明日は風が吹くだろう。その時にまた、私は岸を離れるだろう。舟を漕ぎ、一人沖へ向かって、名も知らぬ何処かへ旅に出ようとするだろう。
すべてのものには名前はまだない。まだ、今のところは。