『世界最強の麻雀AI Suphxの衝撃』から学んだこと
この本の概要
麻雀AIが初めて天鳳で10段に到達しました。その麻雀AIの名前はSuphx(スーパーフェニックス)。この本はSuphxの牌譜を「お知らせ」さん(天鳳で天鳳位を獲得された方)が解説してくれる麻雀戦術書になっています。
この記事について
この本ではSuphxの打牌をお知らせさんが解説していますが、その際に天鳳でのゲーム性も考慮していただいています。(天鳳では最下位になるとポイントがかなりマイナスになるためレーティング上昇のためにはラス回避が不可欠)。この記事では天鳳のゲーム性に関係なく麻雀の戦術としてタメになった内容をピックアップし、まとめるものになります。
なぜ麻雀AIの牌譜検討なのか
答えは単純。AIにはミスが無く、人間にはミスがあるから。例えばSuphxよりもレーティングが高い人の牌譜検討の方が学びには良いのではないかと思うかもしれないが、それは人間が行なっている以上誤打などのミスが可能性として含まれてしまう。また、麻雀は不確定要素が多いゲーム性なので、同じ人間で同じような状況になったとしても再現性は100%にはならない(麻雀で前回と全く同じ状況というのはほぼ起こり得ないが)
ただしAIであれば、ミスは起こり得ない。しかも、アップデートされない限り、同じような状況であれば前回と全く同じ打牌を選択する。AIの牌譜検討は人間が行なったものと比べて一貫性があるので、天鳳で10段まで登り詰めたリーチ基準や押し引きのバランス、手組み、降り方など学べるポイントが十分にあると思う。(決して人間の行なった牌譜が勉強にならないと言っているわけではないです。)
Suphxの押し引き
・上がれなさそうな時のテンパイ取りについて
「ノーテンからローリスクでテンパイを拾う」「ツモ番のないテンパイから押す」ことにはテンパイ取るために価値が出るのだが、「テンパイまで辿り着くビジョンが見出せない手から押す」ことに価値はない。
捨て牌3段目に入って1シャンテンの打点が2000点くらいの時は、形式テンパイとの比較を行う。一人テンパイだった時は同じくらいの収入が入ってくるので、危険牌を押さずに回れそうなら検討する。そもそも捨て牌3段目ノーテンからのアガリ率は低く、さらに打点も見込めない場合、アガるメリットすれば他家のアガリ阻止と自身の放銃回避くらい。そのメリットと比較して押せるかどうかを判断する。
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『実践でのHow to』
終盤でオリの判断をする時は、一応形式テンパイ取れそうかどうかは考慮していく。検討はするがテンパイまでのビジョンを検討し無スジの牌を押すしかテンパイ取りは出来ないような状況の場合は、完全ベタオリでもいい。その際ダマテンもケアしつつ丁寧にオリること。
仮に形式テンパイを取れたとしても「とった後にオリる構想がある」ことは考慮しておく。
・序盤での赤信号について
例えば、5巡目までに他家が發と中をポンしていて、自身の手牌に白が余ってしまっている場合。打点が見えず、その時点で2シャンテン以下であれば、5巡目であろうと終了案件。そこからはメンツの元になるところでも壊してオリに徹底する。この時、自身の白を他家が重ねる前にと思って先ギリするのはナンセンス。手牌を維持すること、粘ることは「維持した結果上がりやテンパイ料収入に繋がること」で初めて価値が生まれる。
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『実践でのHow to』
局の序盤で2副露の他家がいる場合はオリを検討する。副露の仕方を見て、打点が伴っているか検討し、安そうだからといって、粘るとしても七対子に切り替えて危険牌は切らないみたいな打ち回しをする。(ただし、これは自身の手がノミ手で早くない場合。高打点の1シャンテンとかであれば、もちろん押す)
・対副露に対しての打点読み
他家に副露が入った時は「既にテンパイしているかどうか」以外に待ち候補と打点に関する情報を拾っていく必要がある。「打点があることが確定」「打点があるか分からない」「打点がないと分かる」、拾えた情報で導き出した結論によって押し引きのバランスは大いに変動する。副露相手には、ホンイツ、一通、三色、チャンタ、役牌、ドラの複数枚使い、赤ドラなどを考慮しながら手を進めていく。
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『実践でのHow to』
麻雀のセオリーで、早めに切った牌の複数枚持ちや関連牌はあまり無いというセオリーと複合して、鳴きが入った相手の捨て牌から想定される手牌を逆算して、打点読みを入れていく。ドラについては自分の手牌に無い場合は他家が使っている可能性が相対的に上がるので、鳴いた人はドラ持ちの前提で考える。
・親落ちで自身だけ点数が少ない時
基本的には放銃回避をかなり重視するSuphxでも「南場」で「親落ち」の場合は終盤1シャンテンでも押す判断をすることがある。天鳳のルールの場合は、ラスを引くことがかなりの痛手になるルールとなっており、4着で終わるか3着で終わるかはかなりの差がある。なので着順アップの目が残り少なくなってきた時には無茶をせざるを得ない場合がある
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『実践でのHow to』
終盤の点数状況は他家が凹むことを前提としないで、自力で打開するための算段を立てる。満貫ツモは自身8000点プラスと子からは2000点のマイナスなので、子と10000点差をつけることができる。この満貫ツモ条件を基本として、残りの局数と上がれる回数を計算して算段をつける。
四麻の場合、4通りのツモと12通りの横移動と流局がある。自身の力だけではどうしようもないとき、無理に攻めこまず他家に任せてしまうのも引き出しの一つとして持っとくのはあり。
中盤のスリム化
・変化の見切り
中盤にどのような牌を残すか。毎巡の被リーチ率が上がっていく中盤において、Suphxは5ブロックの形が決まれば、安全度を優先した牌を残す傾向に見受けられる。後々余りそうな牌が誰に対してどの程度安全か、必ず確認すること。
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『実践でのHow to』
3枚切れの字牌を安全牌として持つのは簡単なことだが、1シャンテン時のリーチ宣言牌になりそうな数牌の安全度も確認する。もし他家三人に対して打ちづらい牌が余りそうになった場合は、形を決めて先ギリするなど、打ち方の引き出しを増やしておく。
・パンパン構え
先ギリ安全牌残しばかりをやっていると、打点逃しやアガリ逃しに繋がってしまうため、中盤に危険牌を引っ張るパターンももちろんある。
「入り目次第で打点が上がる牌」を引っ張る場合、「何翻相当なのか」「その翻数の上昇にどれだけの価値があるか」を検討する。
また、まだブロック数が足りておらず「アガル」ことに価値がある局面の場合、先ギリせずに構えることもある。
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『実践でのHow to』
安全牌を残して変化や受け入れを見切るのは、後手を踏んだ際のリスクを軽減するため。
打点上昇見込みの牌を残す時は、上昇するときの条件を常に頭に入れておく。例えば3色の場合、入り目条件があるのか、入れば確定なのかで大分価値が変わってくる。仮に入り目条件の牌を残す場合に、後々手放すことも考慮し、その牌が場況に対してどれだけ安全か危険かは考慮しておくこと。
・速度合わせ
副露は守備力が少なくなってしまうが、「打点がそれなりに見込める手牌から」「特定の他家のアガリを蹴るために」「打点を見切って仕掛けて速度アップすること」をSuphxは行うことがある。
ただし速度合わせと言って遠い手牌から仕掛けるのはNG。相手のアガリを蹴ることに速度合わせの価値があるのであって、愚形からの仕掛けは「速度を合わせられないため」、その場合はオリに回る方がベター。
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『実践でのHow to』
役牌対子であるからと言って安易に仕掛けるのはしない。相手の捨て牌を見て打点や速度を読み、余裕がありそうなら門前でゆっくり仕上げる。役牌対子は生牌でなければ防御にも使いやすいのでオリにも使える。
序盤の方針
・愚形の多い配牌時について
配牌時の手牌でブロック数が足りておらず、ペンチャン、カンチャンターツが多い場合、一色手や対子手を考慮する。自分の配牌が悪い時は相対的に考えて他家に良い手牌が入っている可能性が高い。
序盤の方針で狙う役を決め打たないのと決め打つのでは、浮き牌の質の差が生まれ、それは後の盤面における押しやすさの差に繋がる。
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『実践でのHow to』
配牌が悪い時は安易に手組みを始めず、スリム化と打点を意識して安全牌を残しながらの進行を心がける。そうなると遠くても混一色や七対子に主眼を置くことになる。上がれなくてもいいので原則振り込まないように、上がれた時に高打点が期待できるようにしておく。