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わたしの本棚

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2022年1月の記事一覧

わたしの本棚136夜~「哲学の蝿」

わたしの本棚136夜~「哲学の蝿」

 衝撃の本でした。ここまで書くか、といった人間の闇の部分を丁寧に考察し、本を読むことで、哲学書を読むことによって、人間を知ることによって、作者が寛解してきたものを追体験したような感覚が残る自伝的エッセイでした。一昨年、白石一文氏の小説「君がいないと小説は書けない」を読んだときにも赤裸々な自伝的な告白にびっくりしましたが、エッセイの形態をとっている分、この本の自伝部分はより強烈でした。

 ☆哲学の

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わたしの本棚135夜~「楽隊のうさぎ」

わたしの本棚135夜~「楽隊のうさぎ」

 去年、重版で25刷になったというロングセラーです。わたしが持っているのは平成22年の15刷の値段です。中沢けい先生というと、「海を感じる時」の衝撃が大きく、大ベストセラーですが、こちらの「楽隊のうさざ」もまた、吹奏楽部の中学生を描いた成長物語として、不朽の名作です。

☆「楽隊のうさぎ」 中沢けい著 新潮文庫  550円+税

 主人公奥田克久くんは、小学生のころ、いじめられた経験があり、引っ込

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わたしの本棚134夜~「東山道エンジェル紀行」

わたしの本棚134夜~「東山道エンジェル紀行」

不思議な本でした。ショッキングピンクのきれいな装丁、開けると、ピンクの紙とグレーの紙に物語が展開していきます。寺門孝之氏のポスターのような繊細な絵が随所についており、大人の絵本といった感覚です。

☆「東山道エンジェル紀行」 町田康著 寺門孝之絵 左右社 1980円(税込み)

 帯にパンクファンタジー! 小説家と画家の魂が鳴り響く!構想期間20年、幻の傑作がついに完結。「俺は生涯、死ぬまで追放者

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わたしの本棚133夜~「決戦は日曜日」

わたしの本棚133夜~「決戦は日曜日」

1月7日公開の同名映画のノベライズ本です。本の末尾に映画「決戦は日曜日」の脚本(坂下雄一郎)をもとに書き下したもの、と書かれています。

☆「決戦は日曜日」 高嶋哲夫著 幻冬舎文庫 693円(税込み)

~読んでから観るか、観てから読むか~
昔、映画の宣伝コピーにありました。小説の方は、映画に忠実であり、肉付けした感じです。川島有美は川島昌平のひとり娘で、30歳のときの子で、10年前に妻が他界して

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