驚かないでください、あなたや障害者・マイノリティが殺されることを望んでいません (安楽死は誰のもの?)
現在ツイッターで、「#国は安楽死を認めてください」というハッシュタグが流行っている。土曜日、19時からの2時間に集中してこのハッシュタグを使うという作戦で、15週連続トレンド入りを果たした(2022年11月5日現在)。主に精神疾患・難病患者や反出生主義など、生きづらいという理由から自殺を望む人々が、上のハッシュタグで発信している(文末の追記を参照のこと)。彼[女]らの口ぐせは、「死にたい」「消えたい」「楽になりたい」である。
さて、「#国は安楽死を認めてください」の拡散を見ていて、わたしは大きな問題に気付いた。彼らは、安楽死という言葉を安易に使い、世間の反感を買っている。彼[女]らの指す「安楽死」とは、自殺志願者が苦痛なく安全に死なせてもらう権利というほどの意味である。しかし従来の安楽死の概念は、優生思想に基づいて障害者やマイノリティを抹殺するための殺人装置であり、もしくは動物の処分方法なのだから。
ツイッター外では、社会の弱者は自分の「安楽死」の権利を主張しながら、同じような弱者の安楽死(国家による殺人)を求めるとする解釈も出た。このように優生思想は拡大するのだと。
「『弱者男性の安楽死を合法化せよ』明らかな差別的発言がまかり通る日本のヤバさ 『優生思想』がじわじわ広まっている」
https://bit.ly/3SNnfg7
記事中の両名は、社会から疎外された弱者である安楽死希望者は、みな優生思想に辿り着くと言いたいようだ。そうだろうか。自分と他の弱者を一緒くたにして処分したいとする攻撃的な思考もないわけではないが、一部である。これも、「安楽死」が勘違いされるプロセスと言える。
したがって、「#国は安楽死を認めてください」と発信する際には、死なせてほしいのは自分であって、優生思想により障害者やマイノリティに断種手術を施すこと、あるいは殺すことを望むものでない、と書き添える必要がある。「強制的な安楽死」の対象が拡大するという恐怖で社会がびっくりしないよう。「デスハラ」が加速するという懸念さえ囁かれている。これらのことで安楽死反対派を増やさないよう。
近年のメンタル的安楽死志願者は、この事情を無視し、また、尊厳死(生命維持装置を止めること)との区別もせずに、「#国は安楽死を認めてください」を拡散する活動を続けている。わたしはツイッターで、既存の安楽死に代わる新しい用語の創出を提案した。
「安楽死TwitterDemo連絡会」運営者の白石ピースケさんにもこのことを伝えた。彼は、ナチス・ドイツの優生思想による安楽死政策の方を、「安楽殺」等と言い替えることを提示してくれた。しかしわたしは、これを周知徹底するのは無理だと思い、納得のいく結果ではない。ツイッター内を探してみると、安楽死では重いという観点から、「天国への片道切符」「自己選択死」「カナダのMAID=Medical assistance in Dying(死に際の医療的補助)みたいなもの」が見られる。そして、ハッシュタグ変更案には、「#医師による自殺幇助の合法化を」「#自殺幇助罪及び嘱託殺人罪の改定を求めます」が挙がっていた。
・白石ピースケさん(@quatre2005)、
・菅沢真玲(@nzer691021)さん、
・むふむふch(@Yukkuri_MufMuf)さん、
・由結(@_yuyui_mi)さん、
・y u y u i(@mahou_mahou_ha)さん、
・#国は安楽死を認めてください(@anrakushisasete)さん、
発案してくださってありがとうございます(五十音順)。同一人物の複数アカウントを含む。
用語の創出および決定の先に横たわる問題は、それを国民の言葉にする手続きである。そして、新しい「安楽死」の賛同者を獲得する険しさである。反対派は、自己決定によらない殺人が行われることを恐れるし、人の死に手をくだすのは悪と考える。もちろん賛成派の「死にたさ」がわからない。一方で、精神疾患・難病患者も反出生主義も少数派である。彼[女]らは苦痛なき安全な死を渇望し、「死なせてほしい」「殺してほしい」「死ぬ権利を認めて」と訴えるばかり。この並行線が続くので、「安楽死」志願者の自滅思想が社会と共存できる日が来るとは考えにくい。
追記:「#国は安楽死を認めてください」の発信者は、自殺志願者だけでなかった。終末期医療にある老人や患者の慈悲殺を望む勢力が多くいることがわかったのである。投票してくださった述べ76人の
皆さん、ありがとうございます。ツイッター内アンケートによれば、安楽死制度希望者のうち59.4%が慈悲殺派である(回答数32人)。なお、慈悲殺派のうち72.4%が、致死薬の投与による殺人を希望している(回答数29人)。また、自殺志願者を除く回答者のうち、安楽死の対象を「終末期医療で延命治療中の老人・患者」に限った者は13.3%に留まり、86.7%が「障害者・マイノリティなど」と答えた(回答数15人)。