見よ!あの女児は聖性を帯びている!!|『テン』(2)
テーマ発表!!
前回に引き続き、映画「テン」をベースに新しい物語を妄想します。
※「テン」のストーリーなどについては、前回の記事をご参照ください。
妄想開始!
嘉村 それではまいりましょう!
三葉 はい。
嘉村 「テン」は、中年男が偶然見かけた美女に惚れ込み追いかけ回すものの、やがて「自分は幻想を抱いていただけ。本当に必要なものは別にある」と気づくに至る成長譚ですが、「設定を思いっきり変えても面白くなるのでは?」ということで……さて!どんな物語にしましょうか?
案①
三葉 まずは、「テン」風の物語を作る時に注意すべきポイントを確認しておきましょう。
三葉 ……ですね(より詳しくは前回の記事で)。
嘉村 ふむふむ。
三葉 さて、ここからは「『テン』をリスペクトした物語」のアイデアをアレコレ妄想するのですが……その前にもう1つ、以下をご覧ください。
三葉 ……と整理できるでしょう。
嘉村 なるほど。
三葉 そして以上を踏まえて「案①」ですが………ズバリ!「『テン』 ~『中年男と女児』編」!
嘉村 女児!
三葉 「テン」と比較すると、以下のようになります。
嘉村 ふむふむ。「主人公:中年男性」と「主人公が直面する『人生の危機』:中年の危機」という点は、「テン」と共通なんですね。
※中年の危機:ごく大雑把に言えば、「中年版の思春期」。詳しくは以下のサイト、もしくは第1回の記事をご参照ください。
三葉 その通りです。
嘉村 なるほど。
三葉 ストーリーをご紹介しましょう。主人公は中年男。そうですね……35歳ということにしましょうか。
嘉村 ふむ。
三葉 そして……彼は人生に絶望していた!彼には、少し年下の恋人がいる。仕事の調子も悪くない。学生時代から続く友人だっている。……が!そんなものは関係ないのである!明けても暮れても憂鬱なのである!なぜなら……そう。彼は中年の危機に陥っていたのです。
嘉村 ふむふむ。
三葉 「気がつけばアラフォーだ。嗚呼、35歳!お袋は28歳でオレを産んだというから……何ということだろう!そしてまた、考えたくもないが……男の平均寿命はおよそ80歳。ざっくり言ってオレの寿命は残り半分……は言いすぎな気もするが、まぁ折り返し地点が近づいていることは間違いない!嗚呼、『人生の折り返し地点』!悪魔のような響き!これが悪夢でなくて、何が悪夢だというのか!しかしこれは現実なのだ!オレは、これまでの35年間で何をしてきたのだろうか?考えるだけで恐ろしいが……オレは何もしていない!何もしていないのだ!嗚呼、恐ろしい!!」。
嘉村 ふーむ……。
三葉 とまぁ、そんな鬱状態の主人公ですが、ある時見かけるんですよ……女児を!
嘉村 女児……。
三葉 ええ、女児。
嘉村 女児。
三葉 小学生高学年というところだろうか。ランドセルを背負っている。ツインテール。主人公は思わず息を飲む。……輝いていた。後光が差していた。濁りなき瞳が眩しい。その一方で口元は上品に微笑んでおり、まるで慈母のようだ。
嘉村 ……。
三葉 女児は、そんな主人公の熱い視線に気づくことなく、去る。主人公はしばらくしてからふいに我に返り、慌てて彼女の後を追う。しかし、もう姿は見えない。彼は大人しく帰宅する。……が、それからというもの、寝ても覚めても女児、女児!あの女児のことが頭にこびりついて離れないのです。
嘉村 ……主人公は中年男性でしたよね?
三葉 ええ、35歳ですね。
嘉村 相手は小学生?
三葉 はい。
嘉村 で、一目惚れしたと?
三葉 その通りです。
嘉村 ……変態ですか?
三葉 なるほど、変態かもしれません。しかしね、まぁ聞いてくださいよ。
嘉村 何でしょう。
三葉 「テン」を振り返ってみると……主人公は42歳の中年男性。そして、彼が一目惚れするのは20代半ばの女性です。演じるのは、ボー・デレク。
三葉 抜群のプロポーションに、美しいブロンドへア。「こういう人を『セックス・シンボル』と呼ぶんだろうなぁ」という感じの女性です。若々しさに溢れている!気がつけば中年となり、「いつの間にか若さを失ってしまった」と悲嘆する中年男が惹かれるのもわかるのですが……舞台を日本に移すと、事情は変わってくると思うんですよ。
嘉村 ほぉ。
三葉 ざっくばらんに言って、ボー・デレクは「セックス・シンボル感過剰」。日本の普通の中年男性、要するにくたびれたオッサンが、こんな「セックス・シンボル感全開!」という感じの女性に惹かれるかというと……私は疑問に思うのです。
嘉村 ふーむ。
三葉 「眩しすぎる」と思うんですよね。「肉食獣っぽさが強すぎる」というか。
嘉村 なるほど。
三葉 では、日本のくたびれたオッサンはどんな女性に惹かれるのでしょうか?例えば……そう、女児です!
嘉村 ……。
三葉 自分はいつの間にか「若さ」を失ってしまった。ところが……おお!あの女児には「若さ」が溢れている!
嘉村 ……まぁ、小学生ですからね。
三葉 それだけではない!彼女には「母性」も感じられるではないか!
嘉村 「母性」……?
三葉 ほら、「バブみ」「オギャる」なんて言葉もあるでしょ。
※参考:「バブみ」や「オギャる」については、以下の記事をご参照ください。
嘉村 マンガやアニメの見すぎという気もしますが……。
三葉 くたびれたオッサンが求めているのは、「若さ」だけではありませんよね。ありのままの自分を受け入れてくれる「母性」だって欲しているに違いない。
嘉村 まぁ……確かに。
三葉 つまり!「若さ = 処女性」!そして「母性」!処女性と母性という相反するように思える2つの性質を兼ね備えた奇跡の存在といえば……そう!聖母マリアですね!主人公の前に現れたその女児は、マリアに通じる聖性を帯びていたのです!
嘉村 うーむ……。
三葉 彼は我慢できぬ!あの女児をもう一目見たい!かくして、主人公は覚悟を決める。彼はあらゆる手段を駆使して、女児について調べ上げます。彼女は小学6年生。身長は144cmで、誕生日は9月8日。友人からは「みっちゃん」と呼ばれている。
嘉村 どこかで聞いたようなキャラ設定ですね。
三葉 彼は女児のすべてを調べ上げた!……で?それからどうする?
嘉村 ふむ。
三葉 彼は中年男。相手は女児。一体何ができるというのか?彼は、遠くから彼女を見つめるだけの日々を過ごす。
嘉村 それでいいんですよ、それで!それ以上近づいたら逮捕ですからね。
三葉 しかし!
嘉村 しかし……。
三葉 ある日、チャンスが訪れる!……女児が帰宅する。間もなく家の中から悲鳴が聞こえる。いつものように離れたところから彼女の家を見つめていた主人公は悲鳴に気づく。
嘉村 ストーカーだ……。
三葉 彼は逡巡する。しかし……「あの聖なる女児を放っておくことはできぬ!構わぬ!不審者と思われようが、犯罪者として裁かれようが、聖なるあの子のためなら、この身を捨てることも厭わぬ!」。
嘉村 言っていることは一見かっこいいですよね……一見。
三葉 彼は悲壮な覚悟で、女児の家に突入する。すると、何と言うことだろう!彼女の母が倒れているではないか!彼は慌てて救急車を呼ぶ。その甲斐あって、母は間もなく意識を取り戻す。幸い命に別状はないようだが、精密検査のために入院することになる。
嘉村 ふむ。
三葉 聞けば、夫を早くに亡くし、いまは女児と母の2人暮らし。明日になれば田舎の親戚がやってくるというが、はて、それまでの間この幼い子をどうするか……女児は「1人で大丈夫だよ!1人で寝れるよ!」と言うが、母は心配でならぬ「でも、ご飯はどうするの?」。
嘉村 あー。
三葉 主人公は生唾を飲み込み……立候補する「私がごちそうしましょう。一緒に夕飯を食べて、家まで送り届けますよ」。母は「でも」と口ごもる「そんなご迷惑を」。主人公は精一杯爽やかに微笑む……微笑もうとする。若い頃には、「笑顔がかわいい」なんて言われたこともあった。しかしいまや中年男となった彼には、「爽やかに微笑む」方法がわからぬ。それでも一世一代の笑顔を作る。そして、「大丈夫。お任せください」。
嘉村 なるほど。
三葉 そして、彼は女児とレストランへ向かう。高級レストランです。彼は心躍らせていたのですが……何かがおかしい。いざ女児と話してみると、学校の先生が云々、授業が云々、アホな男子が云々。さらに、食事のマナーもなっていない。口の周りをテカテカさせて、「このお肉おいしい!ねぇ、おじちゃんのももらっていい?」と意地汚い。……どうやら彼は幻想を抱いていたようだ。目の前にいるのはただの女児。理性も品性も持たぬただのクソガキ。
嘉村 いや、そりゃ小学生なんてそんなものでしょうよ……。
三葉 ここに至って、彼は冷静になる。そして、ようやく自分の人生に本当に必要なものが何なのか理解する。……目の前の女児と比べると若くはない。女神のような包容力もない。しかし、少なからぬ時間を共に過ごした。同じ時に笑い、同じ時に泣けるパートナー……恋人だ!彼はとっとと食事を切り上げると、女児を小荷物のように脇に抱えて家に送り届け、そして恋人のもとに駆けつけたのでした。……で、おしまいです。
嘉村 ふむふむ。
三葉 いかがでしょう!「YES!ロリータ NO!タッチ」などの秀逸なキャッチコピーで知られる雑誌「COMIC LO」あたりに掲載されると面白いと思うのですが……。
嘉村 それはどうでしょうねぇ……。
案②
嘉村 続いて、「案②」にまいりましょう。
三葉 はい。「案②」は、「『テン』 ~『中年男と女教師』編」です。
嘉村 今度は女教師!
三葉 まずは、「テン」との比較表をご覧ください。
三葉 「案①」が「女児に聖性(処女性+母性)を幻視する物語」であったのに対して……。
嘉村 ええ。
三葉 こちらは、「女教師に母性を幻視する物語」です。
嘉村 ふむふむ。
三葉 ほら、「幼い頃に女教師に憧れた経験を持つ男性」って少なくないじゃないですか。
嘉村 あー、そう聞きますね。
三葉 そんな男性が中年の危機を迎え、人生に疲れ果てた時、ふいに若い女教師と出会う。黒いタイトスカートに、適度に肉のついたふくらはぎ。そして赤色のハイヒール!
嘉村 何やらフェティッシュな雰囲気ですが……。
三葉 主人公は、ふいに幼い日の憧れを思い出す。あれは恋心ではない。もっと神聖で、美しくて……いまは失われてしまった何か。彼は、チラッと見かけただけの女教師の虜になってしまう。そして追い掛け回し……。
嘉村 ふむ。
三葉 とまぁ、そんな物語です。
嘉村 なるほど。
三葉 以上、「『テン』をリスぺクトした物語」のアイデアをご紹介しました!
続きはこちら!!
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(担当:三葉)
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