優れたタイトルをタイプ分け → タイトルを付ける際に役立つ図を作る(前編)|「妹」の研究(5)
妹である!
とまれかくあれ妹である!!
本記事は、1975~2018年の44年間に刊行されたラノベの内、「妹」が付くタイトルをピックアップ★徹底分析する特集「『妹』の研究」の……第5回である!
※注:「『妹』が付くタイトル」とは、例えば以下のような作品を指します。
<特集全体の目次>
第1回:「妹」タイトルが2010年に爆発的に増加したのはなぜか?
第5回(本記事):優れたタイトルをタイプ分け → タイトルを付ける際に役立つ図を作る(前編)
第6回:優れたタイトルをタイプ分け → タイトルを付ける際に役立つ図を作る(後編)
第1回からご覧になることをオススメします★
それでは、早速分析を続けよう!
【分析⑨】「妹」が付くタイトルを4つのタイプに類型する★(前編)
三葉「『妹』が付くタイトルの中でも、とりわけ魅力的なものをピックアップして、それを整理。今後タイトルを付ける際に役立つ図を作成していきたいと思います」
清水「承知しました」
三葉「『妹もの』のみならず、広くタイトルを検討する際に役立てば嬉しいな、と」
清水「そうですね」
三葉「さて、ラノベ4万冊中、『妹』が付くタイトルは256作あるのですが、これを上から1つずつ考察していては夜が明けてしまいます。そこで第1段階として、私と清水が『これは!』というものを10個ずつ選定しました」
清水「はい」
三葉「計20作、内5作が重複したので結局15作となりまして……以下がそのリストです」
清水「いやぁ、壮観!いずれも素晴らしいタイトルです」
三葉「ここからは、以上15作の魅力を探りつつ、4つのタイプに整理・図化してまいりましょう」
タイプ①
三葉「まずは、以下の4作を取り上げます」
・「伝説兄妹!」
・「妹、分裂する」
・「妹=絶滅したのです 1」
・「さよなら、いもうと。」
三葉「この4つに共通しているのは……」
清水「ふむ」
三葉「『文字数と情報量が少ないため、じつにシンプルで、どんなストーリーなのか想像しづらい。しかし、どこかインパクトがある』という点です」
清水「……えっ?何ですって?」
三葉「いえ、ですから……『文字数と情報量が少ないため、じつにシンプルで、どんなストーリーなのか想像しづらい。しかし、どこかインパクトがある』……です」
清水「長い……」
三葉「ふむ……では、ざっくばらんに申し上げますと」
清水「ええ」
三葉「どれもこれも、どんなストーリーなのかさっぱりわからないじゃないですか」
清水「あー、確かに」
三葉「例えば『伝説兄妹!』であれば……『伝説』って何ですか、『伝説』って!」
清水「いやぁ……」
三葉「『分裂』にしろ、『絶滅』にしろ、そして『さよなら』にしろ、どれもこれもどんなストーリーなのかさっぱりです!」
清水「確かに」
三葉「そう!どんな話なのかわからない。……が!しかし!なんだかワクワク・ドキドキする!『意味』は不明でも『雰囲気』は伝わってくる……これが共通点であり、これらのタイトルの魅力だと思うのです」
清水「ほぉ」
三葉「そもそも……私たちはなにゆえに小説を読むのか?……楽しい時間を過ごすためです。しからばタイトルにおいて重要なのは、『おっ!ワクワク・ドキドキな時間を過ごせそうだぞ♡』と感じられることでしょう?極論すれば『意味』なんて伝わらなくてもよいんですよ!そして、その『極論』を実践しているという意味で、この4作は素晴らしいと思うのです!」
清水「なるほど。改めて『伝説兄妹!』を見てみると……」
三葉「ええ」
清水「何がどう伝説なのかさっぱりですが……『伝説』という言葉にはワクワク感がありますね」
三葉「そうそう!」
清水「さらに末尾の『!』が気分を盛り上げる」
三葉「じつに楽しそうじゃないですか!」
清水「なるほど」
三葉「あるいは、『さよなら、いもうと』はいかがでしょう?」
清水「改めて考えてみると…ふむ!じつに巧いタイトルだ!」
三葉「ほぉ、どのあたりからそう感じます?」
清水「大前提として、多くの読者は妹が大好きです!……というのも、妹を愛していなければ、『妹』が付くタイトルの本を読もうなんて思いませんからね」
三葉「至極ごもっとも」
清水「それなのに……どんなストーリーで、どんな妹が登場するのかもわからない。つまり、まだ妹と出会ってすらいない。そんな状況下で、初っ端目に飛び込んでくるのが『さよなら』という別れの言葉!……妹好きの読者にとっては、大変ぎょっとするタイトルであり、また、中身が気になって仕方のないタイトルといえるでしょう」
三葉「さて……いかがでしょうか。『分裂』や『絶滅』も含め、『文字数と情報量が少ないため、じつにシンプルで、どんなストーリーなのか想像しづらい。しかし、どこかインパクトがある』タイトルであること、ご理解いただけたかと思います」
清水「ふむ」
三葉「ただし!」
清水「いかがしました?」
三葉「それでは、この4つのタイトルはまったく同じタイプなのかというと……否!少しずつ相違があると思うのです」
清水「ほぉ……」
三葉「まずは以下の図をご覧ください」
三葉「横軸は、タイトルから受ける『印象』について、『コミカル ⇔ シリアス』で分けています」
清水「『伝説』が最もコミカル寄り、と。なるほど」
三葉「一方、縦軸は言葉遣いを『堅い ⇔ 柔らかい』で整理しました」
清水「最も柔らかいのは『さよなら』……確かに」
三葉「手前味噌で恐縮ですが……『妹もの』のタイトルを考える際、この図は役に立つでしょう」
清水「ほぉ」
三葉「例えば、あなたが『伝説兄妹!』風のタイトルを付けたいと思うならば、『コミカル』であることと、『硬すぎず、柔らかすぎない言葉遣い』を意識すればよいのです」
清水「なるほど!」
三葉「例をあげましょう」
清水「そうですね。その方がわかりやすい」
三葉「何がよいか……うむ!例えばこんなタイトル!すなわち……『妹、大回転!』」
清水「……『大回転』ですか?」
三葉「ええ、『大回転』。私たちが日常的に使う言葉でありながら、コミカルな響きがあるでしょ?」
清水「(……ふーむ)」
三葉「『伝説兄妹!』の『伝説』に通じるものがあるといえるでしょう」
清水「(んー……)」
三葉「また、『妹、分裂する』や『妹=絶滅したのです 1』に類するタイトルをご希望の場合には、『ややシリアスな雰囲気』と『硬い言葉遣い』がポイントです」
清水「ふむ」
三葉「例えば……そう!『妹は循環する』とか」
清水「……ほぉ」
三葉「『循環』という堅い表現、そしてシリアスな雰囲気……じつに『分裂』や『絶滅』と似ています」
清水「(……わかるような、わからないような……)」
三葉「そして、『さよなら、いもうと』をリスペクトしたい場合には、ぐっと『シリアス』に寄せ、また『柔らかい言葉遣い』を意識することが求められます」
清水「ふむふむ」
三葉「例えば……うん!『いもうとがくるくる』とか」
清水「……『くるくる』は確かに柔らかい表現でしょうが……果たしてシリアスなんでしょうか?」
三葉「アレ、違います?どことなく寂しげに感じません?」
清水「ふーむ……まぁ、いずれにせよ、あなたが妹をぐるんぐるん回したがっていることはよくわかりました」
タイプ②
三葉「続いて、以下の2作を取り上げます」
・「妹さえいればいい。」
・「反抗期の妹を魔王の力で支配してみた。」
三葉「結論から申し上げますと……私はこの2作を、『<妹への愛、もしくは欲望がストレートに語られている>系のタイトル』と呼びたい!」
清水「ほぉ」
三葉「すなわち、以下のように整理できます」
三葉「まず『妹さえいればいい。』ですが……この見事なタイトル!これほどまでにシンプルで、しかし力強く妹への愛を語ったタイトルはちょっと他には見当たらないと思うのです!」
清水「確かに」
三葉「まさに『妹への愛』が溢れたタイトルといえるでしょう。これに対抗できるタイトルを考えてみると……そうだなぁ……『妹がいる。』なんていかがでしょう?」
清水「……ん?」
三葉「『妹がいる。』……そこに妹がいる……そう、いる!この奇跡!『感謝するぜ。お前と出会えたこれまでの 全てに!!!』的な圧倒的感謝!行為(Do)ではない。存在(Be)への感謝!……そんな意味を込めてみました」
※『感謝するぜ。お前と出会えたこれまでの 全てに!!!』:みなさまご存知、『HUNTER×HUNTER』のネテロ会長の名言。
清水「(半分くらい何言っているのかわからないけど……)なるほどね!」
三葉「一方、『反抗期の妹を魔王の力で支配してみた。』は……」
清水「あー、そうそう。気になっていたのですが……魔王の力で支配して、で、何をするんでしょうね?」
三葉「……あなた、わざと言ってます?」
清水「えっ?」
三葉「……つまり、私に卑猥なことを言わせようとしています?」
清水「……ん?」
三葉「……性的なイタズラに決まってるじゃないですか!」
清水「(本当かよ……)」
三葉「さて、話を戻しましょう。『反抗期の妹を魔王の力で支配してみた。』……これは『妹さえいればいい。』と比べると、『妹への欲望』が感じられるタイトルです。ただ、それではエロ真っ盛り、そこには欲望しか存在しないのかというと……否!『妹への愛』も感じられる!」
清水「ふむ、確かに『欲望』のみの性獣のごとき響きはありませんね。『愛』か……どこから感じるのでしょう?」
三葉「おそらくこういうことでしょう」
清水「なるほど。『みた』の2字があるおかげで、『欲望』に寄りすぎず、絶妙なバランスを保っているわけか」
三葉「『欲望』のみになると、ラノベというより官能小説とかエロ小説になってしまいますからね」
清水「なるほど」
三葉「さて、先ほどの図を改めてご覧ください」
三葉「『妹さえいればいい。』は、『妹への愛』特化型。『純愛』タイプと言ってもよいでしょう」
清水「ふむ」
三葉「それに対して、『反抗期の妹を魔王の力で支配してみた。』は、基本的には『妹への欲望』型ながら『妹への愛』成分も併せ持つハイブリット型」
清水「おー、なるほど」
三葉「無論これはどちらが優れているかという話ではありません。『読者にどう感じてもらいたいか?』、『どう感じてもらうべきか?』というクリエイターの方のご判断次第」
清水「ふむ。例えば、『比較的若年層をターゲットにするなら<欲望>は控えめにしないとな。よって『妹さえいればいい。』に近い雰囲気のタイトルにして……』なんて具合ですよね」
三葉「上図を踏まえて、『愛』一直線だったり、あるいは『欲望』まみれだったり、もしくは『愛』と『欲望』の高い次元での両立だったり……タイトルをご検討すると、アレコレ発見があるかと思います。お試しあれ★」
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最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。
(分析:清水、三葉 / 文、イラスト:三葉)