【#8 新勧!】「けいおん!」を三幕構成で分析する
▶ 「三幕構成」を詳しく知りたい方は、こちらの記事をどうぞ😁 → シド・フィールドの「三幕構成」をバッチリ説明するぜ!!
分析対象
三幕構成
ポイント①
本話では、
・唯ら4人:部員を勧誘する
・梓:入部先を検討 → 軽音部に入る
・純:入部先を検討 → ジャズ研究部に入る
……の三者にスポットライトが当てられています。
しかし、主人公は憂です。
・1:唯ら4人を応援する
・2:純と共に軽音部を見学する
・3:梓を誘って講堂に行く
……という具合に、憂は進行役(狂言回し)として三者に深く関与します。
ポイント②
<1>
考えてみれば、憂はじつにユニークなポジションにいます。
・1:憂は、唯ら4人(= 勧誘する側)と親しく付き合っている
・2:憂は新入生であり、梓や純(= 勧誘される側)とはクラスメイト
つまり憂は、「勧誘する側」と「される側」の両方の気持ちがわかる唯一のキャラなのです。
<2>
ここでは、「ピンチ2」に注目してみましょう。
軽音部を見学後、憂が問うた「どうだった?」。それに対して、純は気まずそうに俯く。
……このシーン。
憂には、唯らの気持ちがよくわかります。
部員を獲得しようとして、張り切っていたのです。精一杯もてなそうとして、頑張っていたのです。
憂としては、応援したいところです。
だがしかし……憂には、純の気持ちもよくわかる。
率直に言って、唯らは空回りしていました。大体がですね、軽音部だってのに一体なぜメイド服なのか?
純が俯くのも無理ありません。
憂は心優しい少女です。だから唯らを糾弾したり、あるいは純を無理に引きずり込もうとしたりはしません。
「望み薄かなぁ」と嘆息するだけ。
この板ばさみ的状況が面白い!私たち鑑賞者は、思わず吹き出してしまうでしょう。
<補足>
憂のユニークなポジションについては、社会ネットワーク論の言葉を借りて「憂は、『構造的空隙(Structural Holes)』を埋める存在になっている」と表現するのがしっくる来ると思います。
ポイント③
<1>
続いて、梓。
梓がなぜ軽音部に入部したのか、考えてみましょう。
<2>
直接的なきっかけは、軽音部の演奏です。
梓は「第3幕」でライブパフォーマンスを目にして、心打たれた。そして入部を決意します。
<3>
しかし、おそらくはそれだけではありません。
というのも、「第2幕前半」以降、「梓が軽音部に興味を持っているような描写」が断続的に登場するのです。
例えば、教室で憂と純が会話をするシーン。純が「軽音部に見学にいってみようよ」と言った。
その時、少し離れたところで、梓が聞き耳を立てている……。
<4>
梓は、一体なぜ軽音部に興味を抱いたのでしょうか?
だって、軽音部は奇行を繰り返しているのです(着ぐるみを着てビラを配る、ジャージー姿で演奏する etc.)。
そして次話以降で明らかになりますが、梓は真面目な常識人。軽音部のような訳のわからぬ団体に興味を抱くとは考えづらいのですが……一体なぜ?
「梓が軽音部に興味を抱いた理由」は、作中では明言されていません。
というかですね、これ、制作者(監督、脚本家 etc.)はわざと描かなかったのだと思います。
梓は、理由なく軽音部に興味を抱く……つまりは「運命」です。唯らと梓は、出会うべくして出会ったのです(と、制作者は演出しているように見える)。
そもそも、人と人との縁というのは奇妙なものです。ある人とは出会ってすぐに親しくなる。ところが別の人とはすれ違い、二度と再会しない。
「運命」「赤い糸」「相性」「フィーリング」。言葉は何でもいいのですが、私たちは、そういった目に見えぬ力によって対人関係を築いていくのではないでしょうか。
梓は「運命」に導かれて、軽音部に興味を持った。そして憂の後押しを得て、唯らのライブパフォーマンスを目撃することになる……というわけです。
ポイント④
<1>
「軽音部に入部した梓」とは対照的に、「軽音部に入部しなかった純」。
はて、純はなぜ軽音部に入らなかったのでしょうか?
<2>
直接的なきっかけは、軽音部がカッコよくなかったからです。
・1:そもそも純は、「軽音部 = カッコいい」というイメージを持っていた
・2:だから軽音部に興味を持ち、見学に行った
・3:ところが、唯ら軽音部はカッコよくなかった。むしろ「コミカル」というか「お笑い」というか、軽音部というよりもお笑い同好会のようなノリだった
・4:ゆえに入部しなかった
・5:代わりに、純はジャズ研究部に入った。純曰く「ジャズ研にはカッコいい先輩がいて……」
<3>
純の行動原理はシンプルです。
じつにわかりやすい……のですが、ここでは敢えて深読みしてみましょう。
すなわち、「カッコよくない」なんてのは表面的な問題にすぎない。
軽音部の真の問題は、「唯ら4人(+ さわ子先生)の結びつきが強すぎて、彼女らのノリについていけない者が参入できなくなっている」ということでしょう。
純は「メイド服で新入生を迎える」「ジャージー姿で演奏する」といった軽音部のノリについていけず、離れていきました。
では、梓は?彼女は、唯らのノリについていけるのでしょうか?
第9話では、これがテーマになります。
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(担当:三葉)